発売日: 2002年8月13日
ジャンル: インディーフォーク / フォークロック
Bright Eyesの4枚目のアルバム、Lifted or The Story Is in the Soil, Keep Your Ear to the Groundは、コナー・オバーストのキャリアにおいて重要な転換点となる作品だ。前作Fevers and Mirrorsの内省的でメランコリックなトーンを引き継ぎながらも、サウンドはさらに壮大で多面的になり、歌詞のテーマもより普遍的で詩的な深みを増している。全13曲、約73分にも及ぶこのアルバムは、心の葛藤、希望、孤独、そして再生を探求する長編詩のような構成だ。
レコーディングにはオーケストラ的なアレンジやノイズ、コーラスなどが多用され、Bright EyesならではのDIYスピリットを維持しながらも、よりプロフェッショナルな質感を帯びている。アルバム全体を通じて感じられるのは、人生の不確実性を受け入れ、歩み続ける人間の姿。歌詞とメロディが織りなす感情の波は、リスナーを深く感動させるだろう。
- トラック解説
- 1. The Big Picture
- 2. Method Acting
- 3. False Advertising
- 4. You Will. You? Will. You? Will. You? Will.
- 5. Lover I Don’t Have to Love
- 6. Bowl of Oranges
- 7. Don’t Know When But a Day Is Gonna Come
- 8. Nothing Gets Crossed Out
- 9. Make War
- 10. Waste of Paint
- 11. From a Balance Beam
- 12. Laura Laurent
- 13. Let’s Not Shit Ourselves (To Love and to Be Loved)
- Liftedの革新性: DIYスピリットと壮大な物語
- アルバム総評
- このアルバムが好きな人におすすめの5枚
トラック解説
1. The Big Picture
このアルバムは、雨音と物音に重なるナレーションから始まる。この静かな導入部は、アルバム全体のテーマである「混乱の中にある秩序」を象徴している。徐々に加速するアコースティックギターとオバーストのつぶやくようなボーカルが、聴く者を物語の入り口へ誘う。
2. Method Acting
リズミカルなアコースティックギターが特徴的な楽曲。演技(Method Acting)を人生に例え、「本当の自分」と「社会が求める自分」の狭間で揺れる葛藤を描いている。コーラスとストリングスが重なり合い、徐々に高まるダイナミクスが聴きどころ。
3. False Advertising
この曲は、虚偽や偽りの自己表現をテーマにしている。明るめのメロディが耳に残るが、歌詞は対照的にシニカルだ。「本当に求めているものは、他人には見えない」というメッセージが胸を刺す。
4. You Will. You? Will. You? Will. You? Will.
タイトルの独特な繰り返しが印象的なこの曲は、恋愛における不確実性をテーマにしている。ピアノを基調としたアレンジが切なさを際立たせ、聴く者の胸に静かに沁み込む。
5. Lover I Don’t Have to Love
アルバムの中でも特にダークな曲。快楽的で感情を抑えた恋愛を描き、オバーストのボーカルが痛々しいほどの切迫感を帯びている。「愛する必要のない恋人が欲しい」というフレーズは、現代的な疎外感を象徴している。
6. Bowl of Oranges
明るいメロディが特徴的な一曲。ストリングスと軽快なギターが楽観的な雰囲気を作り出しているが、歌詞には希望と混乱が同居している。「人生はオレンジの器のようだ」という比喩は、日常に潜む美しさを捉えている。
7. Don’t Know When But a Day Is Gonna Come
荘厳なストリングスで始まるこの曲は、アルバムの中でも特にエモーショナルな楽曲。人生の目的や希望を探し求める人間の姿を描いており、終盤にかけて感情の高まりが頂点に達する。
8. Nothing Gets Crossed Out
この曲では、過去を振り返りながら未来に向き合う心情が描かれている。シンプルなギターの伴奏とオバーストの繊細な歌声が心地よく、どこか懐かしさを感じさせる。
9. Make War
恋愛や人間関係の崩壊をテーマにした悲しい楽曲。アコースティックなサウンドが、歌詞の痛みを一層際立たせている。
10. Waste of Paint
オバーストが独白のように歌う長尺の楽曲。自己嫌悪や人生の無意味さへの問いかけが描かれており、彼の歌詞の才能が最も発揮された曲のひとつ。
11. From a Balance Beam
不安定な人生のバランスをテーマにした楽曲。アップテンポなリズムと軽快なギターが、歌詞の持つシリアスさを緩和している。
12. Laura Laurent
美しいメロディと切ない歌詞が特徴的なバラード。失われた愛と、それに伴う痛みが描かれている。
13. Let’s Not Shit Ourselves (To Love and to Be Loved)
アルバムの締めくくりにふさわしい壮大な楽曲。人間の矛盾や社会の不条理を批判的に描きつつ、それでも愛を求め続ける人間の姿が歌われている。オバーストの感情的なボーカルが圧倒的な存在感を放つ。
Liftedの革新性: DIYスピリットと壮大な物語
Bright Eyesの特徴であるDIY精神が、ここではさらに大規模なスケールで展開されている。細部にこだわったアレンジやプロダクションが、アルバム全体の物語性を高め、リスナーに深い没入感を提供している。雨音や雑踏といった環境音が効果的に使われ、楽曲の世界観を広げているのも印象的だ。
アルバム総評
Lifted or The Story Is in the Soil, Keep Your Ear to the Groundは、Bright Eyesのキャリアにおいて欠かせない傑作だ。コナー・オバーストの比類なき歌詞の才能と、豊かなサウンドスケープが見事に融合しており、聴くたびに新たな発見がある。希望と絶望、混乱と秩序が入り混じったこのアルバムは、リスナーに感情的な旅を提供するだろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
The Execution of All Things by Rilo Kiley
Bright Eyesと同時期のインディーシーンを代表する一枚。歌詞の深さと多面的なアレンジが共通点。
Illinois by Sufjan Stevens
壮大な物語性と緻密なアレンジが、Liftedと響き合うアルバム。
The Moon & Antarctica by Modest Mouse
内省的な歌詞と実験的なサウンドを楽しめる作品。
Yankee Hotel Foxtrot by Wilco
ジャンルを超えた革新的なサウンドと感情的な歌詞が魅力。
Chutes Too Narrow by The Shins
軽快なメロディの中に切なさを秘めたインディーロックの名盤。
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