
発売日: 2015年10月23日
ジャンル: ドリームポップ、フォークポップ、アンビエントポップ
幻想的で深遠な世界観——Vanessa Carltonの音楽的進化を示す5thアルバム
Vanessa Carlton の5thアルバム Liberman は、彼女の音楽キャリアの中でも最も夢幻的で瞑想的な作品となった。ポップロック寄りだった初期の作風から大きく変化し、ドリームポップやアンビエントの要素を取り入れた、静謐で幻想的なサウンドを展開 している。
アルバムタイトルの Liberman は、Carlton の祖父の姓に由来し、彼が描いた絵画の色彩や雰囲気にインスパイアされて制作された。この背景が反映され、アルバム全体はまるで一枚の絵画のように、美しく統一されたサウンドスケープを持っている。
プロデューサーには Dustin O’Halloran(映画『ライオン 〜25年目のただいま〜』の音楽を手がけた作曲家) を迎え、繊細なピアノとアンビエントなシンセ、フォークギターが織りなす、心地よくも神秘的なサウンド を生み出している。
全曲レビュー
1. Take It Easy
アルバムの幕開けにふさわしい、ゆったりとしたテンポのドリームポップナンバー。繊細なピアノと幻想的なシンセが調和し、リスナーを異世界へと誘うような音作りが印象的。
2. Willows
アコースティックギターと囁くようなボーカルが特徴の楽曲。タイトルの「Willows(柳)」は、過去と未来をつなぐ存在として象徴的に用いられている。
3. House of Seven Swords
少しアップテンポで、人生の選択や運命をテーマにした哲学的な楽曲。ギターとピアノの絡み合いが美しく、浮遊感のあるメロディが心地よい。
4. Operator
本作の中では比較的リズムのある楽曲で、都会的で洗練された雰囲気を持つ。愛と依存をテーマにした歌詞が印象的。
5. Blue Pool
ピアノとシンセが幻想的な雰囲気を作り出す、アルバムの中でも最もドリーミーな楽曲。タイトルの「Blue Pool」は、Carlton にとって心を落ち着かせる場所を象徴している。
6. Nothing Where Something Used to Be
シンプルなピアノバラードで、過去の関係が空白になってしまった喪失感 を歌っている。静かに語るようなボーカルが印象的。
7. Matter of Time
ミニマルなアレンジが特徴的な曲で、時間の流れや人生の儚さを描く。オーガニックな楽器の響きが美しい。
8. Unlock the Lock
神秘的な雰囲気を持つ楽曲で、自己発見と変化を象徴するテーマを持つ。ボーカルのエコーとシンセの浮遊感が独特の世界観を作り出している。
9. River
フォーク色の強いナンバーで、ギターとピアノが調和するシンプルなアレンジ。タイトルの「River」は人生の流れを象徴しており、自然と共鳴するような楽曲。
10. Ascension
アルバムを締めくくる、瞑想的でアンビエントな楽曲。精神的な成長と解放をテーマにした美しいフィナーレ となっている。
総評
Liberman は、Vanessa Carlton のキャリアの中でも最も静かで、深い内省を促す作品 であり、シンガーソングライターとしての成熟と芸術的な進化を示すアルバム となった。
これまでのピアノポップやフォークポップから、ドリームポップやアンビエントの要素を取り入れた新境地 へと踏み込んでおり、過去の作品と比べるとより内向的で幻想的な世界観 を持つ。アルバム全体の統一感が強く、曲ごとの派手な変化は少ないものの、一つのアート作品として聴く価値のあるアルバム となっている。
おすすめのリスナー:
- Rabbits on the Run の幻想的な雰囲気を気に入った人
- ドリームポップやアンビエントミュージックを好む人
- 内省的で深みのある音楽を求める人
おすすめアルバム
1. Mazzy Star – So Tonight That I Might See (1993)
ドリームポップの代表的なアルバムで、Liberman の幻想的なサウンドと共通点が多い。
2. Agnes Obel – Philharmonics (2010)
クラシックとフォークを融合させた静謐なサウンドが、本作の雰囲気に近い。
3. Dustin O’Halloran – Lumiere (2011)
本作のプロデューサーによるインストゥルメンタル作品で、映画のような美しいサウンドスケープが特徴的。
4. Fiona Apple – The Idler Wheel… (2012)
実験的で深みのあるシンガーソングライター作品で、Carlton の音楽的進化と共鳴する部分がある。
5. Tori Amos – Night of Hunters (2011)
クラシックの影響を受けたピアノ主体の作品で、物語性のある歌詞が特徴的。
Liberman は、Vanessa Carlton がポップの枠を超え、より芸術的で瞑想的な音楽へと進化したことを示すアルバム であり、静かに耳を傾けることで、その美しさと深みがじわじわと染み込んでくる作品。初期のピアノポップとは異なるが、成熟したリスナーにとっては、新たな発見と癒しをもたらす一枚 となるだろう。
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