
発売日: 2012年3月26日
ジャンル: オルタナティヴ・ロック、ポップ・ロック
成熟と変革——The All-American Rejectsの新たなステージ
2012年にリリースされたKids in the Streetは、The All-American Rejectsがポップ・パンクの枠を超え、よりアート志向の強いオルタナティヴ・ロックへと進化した作品である。本作では、彼らの持つキャッチーなメロディは健在ながら、よりシリアスで成熟したテーマや、洗練されたプロダクションが際立つ。
前作When the World Comes Down(2008年)で試みたシンフォニックなアレンジやドラマティックな構成をさらに推し進め、本作ではより内省的なリリックや、80年代のシンセウェーブ、グラムロックの影響を取り入れた斬新なアプローチが目立つ。
プロデューサーには、Panic! At The DiscoやFoo Fightersの作品を手掛けたグレッグ・ウェルズを迎え、彼の手によってバンドのサウンドがより立体的かつシネマティックに仕上げられている。
シングル「Beekeeper’s Daughter」「Kids in the Street」「Heartbeat Slowing Down」などを収録し、過去の作品とは一線を画す大人のオルタナティヴ・ロックアルバムとして評価された。
全曲レビュー
1. Someday’s Gone
アルバムの幕開けを飾る、ダークでエモーショナルな楽曲。リッターの荒々しいボーカルと、歪んだギターが絡み合い、バンドの新たな音楽的挑戦を感じさせるオープニングとなっている。
2. Beekeeper’s Daughter
リードシングルとしてリリースされた楽曲で、ファンキーなリズムとキャッチーなメロディが融合したダンサブルなナンバー。リッターの自虐的な歌詞とユーモアが光る。
3. Fast & Slow
シンセを多用した、浮遊感のあるサウンドが特徴的な楽曲。80年代のシンセウェーブやニューウェーブの影響を感じさせる。
4. Heartbeat Slowing Down
エモーショナルなバラードで、アルバムのハイライトのひとつ。ストリングスとドラマティックなメロディが際立ち、失恋の痛みを描いた歌詞が胸に響く。リッターの繊細な歌声が際立つ楽曲。
5. Walk Over Me
疾走感のあるロックナンバー。ポップ・パンクの要素を残しつつも、サウンドの奥行きが増し、よりモダンなアプローチが見られる。
6. Out the Door
アコースティックとエレクトロの要素を融合させた楽曲。静と動のコントラストが美しく、バンドの新たな一面を感じさせる。
7. Kids in the Street
アルバムタイトル曲であり、作品の核となる楽曲。青春の記憶、過ぎ去った時代へのノスタルジーがテーマとなっており、歌詞とメロディの美しさが際立つ。
8. Bleed Into Your Mind
ミドルテンポのオルタナティヴ・ロックナンバー。幻想的なギターのアルペジオとシンセが印象的で、バンドの成長を感じさせるサウンド。
9. Gonzo
実験的なアプローチが光る楽曲。ミステリアスな雰囲気を持ち、バンドの新たな音楽的試みを象徴する。
10. Affection
ロマンティックなムードのある楽曲で、メロディの美しさが際立つ。リッターのヴォーカルの表現力が光る一曲。
11. I for You
アルバムのラストを飾る、静かで内省的な楽曲。シンプルなアコースティックギターと、リッターの感情的な歌声が印象的なバラード。
総評
Kids in the Streetは、The All-American Rejectsがポップ・パンクから脱却し、より成熟したオルタナティヴ・ロックへと進化したアルバムである。
前作When the World Comes Downと比較しても、さらにシリアスでアート志向の強い楽曲が多く、シンセやストリングスを活用した壮大なアレンジが特徴的。特に「Kids in the Street」「Heartbeat Slowing Down」「Beekeeper’s Daughter」などの楽曲は、バンドの新たな音楽性を示す象徴的なナンバーとなった。
ポップ・パンクのキャッチーさは残しつつも、オルタナティヴ・ロックとしての成熟を感じさせる作品であり、過去の作品と一線を画す、バンドの新境地を切り開いたアルバムと言える。
本作は、エモやポップ・パンクだけでなく、オルタナティヴ・ロックやシンセウェーブ、インディーロックのファンにも響く作品となっている。
おすすめアルバム
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The All-American Rejects – When the World Comes Down(2008)
本作の前作で、シンフォニックなアレンジとダイナミックなサウンドが特徴。 -
Panic! At The Disco – Vices & Virtues(2011)
シアトリカルなポップ・ロックと実験的なアプローチが、本作の方向性と通じる。 -
The Killers – Day & Age(2008)
80年代のシンセウェーブを取り入れたオルタナティヴ・ロックの名盤。 -
Paramore – Paramore(2013)
ポップ・パンクからオルタナティヴ・ロックへと進化したサウンドが共通する。 -
Foster the People – Torches(2011)
エレクトロとオルタナティヴ・ロックを融合させた作品で、本作の実験的なアプローチと共鳴する。
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