発売日: 2018年8月31日
ジャンル: ポストパンク、パンクロック
IDLESのセカンドアルバム「Joy as an Act of Resistance」は、怒りや痛みを「喜び」へと転換することで、逆境に立ち向かおうというテーマが貫かれている。この作品は、パンクロックの持つ破壊的なエネルギーを保持しながらも、その中にユーモアや自己受容、共感を取り入れた新しいアプローチで、リスナーに深い共感と力を与えている。フロントマンのジョー・タルボットの怒りと愛が込められたボーカルは、荒々しい演奏と相まって、聞く者に強烈なインパクトを与える。IDLESは、社会への批判や個人的な苦悩を包み隠さずに歌い上げ、自己表現とコミュニティの力強さを改めて感じさせる。
「Joy as an Act of Resistance」は、自己の脆弱性を隠すのではなく、オープンにさらけ出すことで得られる強さと開放感を示している。パンクの原点である怒りや反抗心を基盤に、パワフルでありながらもポジティブなメッセージが強調されており、IDLESが音楽を通じての社会的な声となっていることが感じられる。攻撃的で荒々しいサウンドの中にも温かさが込められており、IDLESがポストパンクシーンにおいて異彩を放つ理由が、このアルバムを通して明確に伝わってくる。
トラックごとの解説
1. Colossus
アルバムのオープニングを飾る「Colossus」は、重厚なベースとタルボットの不気味なボーカルが印象的なトラック。曲が進むにつれてエネルギーが増していき、最終的には爆発するようなクライマックスに達する。
2. Never Fight A Man With A Perm
この曲は、暴力やマッチョイズムを皮肉る内容で、強烈なギターリフと軽快なビートがリズミカルに展開される。タルボットの辛辣なユーモアが際立ち、IDLESの風刺的な側面がよく表れている。
3. I’m Scum
「I’m Scum」は、自分を卑下するようなタイトルとは裏腹に、ポジティブなメッセージが込められた一曲。アウトサイダーであることを誇りに思う気持ちが、激しい演奏と共に力強く表現されている。
4. Danny Nedelko
「Danny Nedelko」は、移民に対する誇りと愛を歌ったトラックで、友人の名前をタイトルにした個人的で温かみのある楽曲。キャッチーなメロディとシンプルな歌詞がリスナーに力を与える。
5. Love Song
「Love Song」は、タルボットのユーモアと皮肉が交じり合った愛の曲で、シンプルながらも力強いギターリフが際立っている。タイトルの通りラブソングでありながら、IDLESならではの視点で描かれている。
6. June
「June」は、悲しみと喪失をテーマにしたトラックで、タルボットが自身の経験を赤裸々に歌い上げる。静かなビートと重厚なボーカルが、深い感動と心の痛みを伝える。
7. Samaritans
「Samaritans」は、男性らしさや社会的なプレッシャーに対する批判が込められた楽曲。タルボットの叫ぶようなボーカルが、自己受容と解放への強いメッセージを放つ。
8. Television
「Television」は、外見への執着に対するメッセージが込められたポップなナンバー。シンプルなリフとキャッチーなメロディが耳に残り、リスナーを勇気づける。
9. Great
移民や政治をテーマにした「Great」は、シニカルでエネルギッシュなトラック。皮肉を効かせた歌詞が現代社会を風刺し、IDLESの批判精神が感じられる。
10. Gram Rock
「Gram Rock」は、短いながらも強烈なインパクトを持つトラックで、テンポの速いビートとシャープなギターが印象的。タルボットの辛辣なユーモアが詰まった楽曲だ。
11. Cry To Me
ソウルフルで切ない「Cry To Me」は、友情や愛をテーマにしたカバー曲。オリジナルに敬意を表しつつ、IDLESのエネルギーが加えられている。
12. Rottweiler
アルバムを締めくくる「Rottweiler」は、力強い演奏とタルボットの熱いボーカルが炸裂する、圧巻のエンディングトラック。繰り返されるリフが徐々に盛り上がり、アルバム全体のエネルギーを総括するかのように爆発的なクライマックスを迎える。
アルバム総評
「Joy as an Act of Resistance」は、IDLESがパンクロックの枠を超え、自己表現と社会的なメッセージを巧みに融合させた作品である。ジョー・タルボットの辛辣かつユーモラスなリリックと、バンドの荒々しくも温かみのある演奏が、聴く者に強烈なメッセージと希望を届ける。移民問題や男性性、自己受容といったテーマを通して、IDLESはリスナーに「強くあること」と「優しくあること」の大切さを語りかけ、怒りや悲しみを喜びへと変える力を見せつけている。このアルバムは、聴くたびに勇気と希望が湧き上がり、IDLESがポストパンクシーンにおいてユニークで重要な存在であることを証明する作品だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Brutalism by IDLES
IDLESのデビューアルバムで、怒りとエネルギーが爆発する作品。「Joy as an Act of Resistance」と共通するテーマとパワフルなサウンドが魅力。
Songs for the Deaf by Queens of the Stone Age
攻撃的なサウンドとダークなユーモアが特徴で、IDLESのファンにとっても共感できる作品。強烈なエネルギーが魅力の一枚。
All That Divides by Black Peaks
エクスペリメンタルなポストハードコアで、社会的なテーマを扱ったアルバム。IDLESのエモーショナルな一面と響き合う。
Street Worms by Viagra Boys
風刺的な歌詞とポストパンクのエネルギーが詰まった一枚。IDLESのユーモアと社会批判の要素が好きな人におすすめ。
Grey Area by Little Simz
UKラップとポストパンクの融合が楽しめる作品で、社会的なメッセージが色濃く反映されている。IDLESのリスナーにとっても新しい発見がある。
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