発売日: 2018年4月6日
ジャンル: R&B、ソウル、ラテンポップ、ファンク、ヒップホップ
カリ・ウチスのデビューアルバムIsolationは、ジャンルを超えた音楽的冒険の結晶であり、彼女のアーティストとしての多彩な魅力を存分に発揮した一作だ。ラテンアメリカのルーツを持つ彼女のアイデンティティと、ソウルフルなボーカル、ユニークなサウンドが融合したこのアルバムは、リスナーに洗練された音楽体験を提供する。
カリはこれまでのキャリアで、タイラー・ザ・クリエイターやゴリラズなど、ジャンルを問わないアーティストたちとコラボレーションを重ね、着実にその名を広めてきた。本作では、彼女が培った音楽的要素を一つの作品にまとめ上げ、多様なジャンルを縦横無尽に行き来している。R&B、ラテンポップ、ファンク、ヒップホップ、ボサノバ、ネオソウルといったスタイルが混在する中で、彼女の個性的な歌声とリリカルな感性が一貫したストーリーテリングを形作っている。
トラックごとの解説
1. Body Language (Intro)
アルバムのオープニングを飾るセクシーなインスト曲。ボサノバ風のギターと柔らかいボーカルがリスナーを魅惑的な世界へと誘う。
2. Miami (feat. BIA)
大胆で挑発的な楽曲。ラテンフレーバーとヒップホップが融合し、マイアミの華やかなライフスタイルとその裏側を描く。BIAのラップが曲のダイナミズムを高めている。
3. Just a Stranger (feat. Steve Lacy)
スティーヴ・レイシーとのコラボレーションで生まれた、グルーヴィーなファンクトラック。金銭的な価値観と表面的な関係をテーマにした歌詞がユニーク。
4. Flight 22
ゆったりとしたレトロなR&Bバラード。ジャズの影響を感じさせるコード進行と、カリのドリーミーなボーカルが心に残る。飛行機に乗ってどこか遠くへ行くような自由な気持ちを表現している。
5. Your Teeth in My Neck
ファンキーでリズミカルな楽曲。業界の不条理や、他人に利用されることへの皮肉を歌う。明るいサウンドに対して歌詞が辛辣で、このギャップが魅力的。
6. Tyrant (feat. Jorja Smith)
ジョルジャ・スミスを迎えたラテンポップのアンセム。恋愛における欲望とエゴをテーマに、トロピカルなビートが印象的。
7. Dead to Me
カリの自立した精神が際立つエレクトロニックR&Bトラック。軽快なテンポで、終わった恋愛への未練のなさを歌う。
8. Nuestro Planeta (feat. Reykon)
スペイン語の歌詞が美しいラテンポップトラック。レイコンのレゲトンスタイルが楽曲にアクセントを加え、カリのルーツを感じさせる一曲。
9. In My Dreams
ゴリラズのデーモン・アルバーンがプロデュースを手掛けたポップトラック。明るいメロディが楽しい夢の世界を描く一方で、現実との対比が切ない。
10. Gotta Get Up (Interlude)
短いながらも印象的な曲で、アルバムの流れに変化を与えるインタールード。カリの柔らかい声が際立つ。
11. Tomorrow
ファンクとディスコの影響を受けた楽曲で、前向きなエネルギーに溢れている。未来への楽観的な視点を歌い上げる。
12. Coming Home (Interlude)
シンプルながらも感情的なインタールード。帰郷への思いを歌う。
13. After the Storm (feat. Tyler, the Creator & Bootsy Collins)
タイラー・ザ・クリエイターとブーツィー・コリンズが参加したアルバムのハイライト曲。逆境を乗り越えた先の希望を描き、カリのポジティブなメッセージが伝わる。
14. Feel Like a Fool
ヴィンテージ感のあるソウルナンバー。恋愛の痛みと後悔を歌い、カリの感情がストレートに伝わる。
15. Killer
アルバムの締めくくりにふさわしい感動的なバラード。愛に溺れる危険性を切なく描く。
アルバム総評
Isolationは、カリ・ウチスの多彩な音楽性を示すだけでなく、彼女のアーティストとしての進化を象徴するアルバムだ。ジャンルを超えたサウンドと一貫した個性が融合し、リスナーを彼女の世界に引き込む。特に「After the Storm」や「Just a Stranger」のような楽曲では、彼女の独創性が際立っており、これまでのR&Bやラテンポップの枠を広げている。アルバム全体を通じて、彼女が表現する自己発見、文化的アイデンティティ、そして独立した精神が、現代の音楽シーンに新たな風を吹き込んだ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
“Cuz I Love You” by Lizzo
ジャンルを超えたエネルギッシュな楽曲と、自己肯定感あふれるメッセージが共通する。
“Dirty Computer” by Janelle Monáe
未来的なポップサウンドとパーソナルなテーマが融合したアルバム。カリの実験的な一面に共鳴する。
“El Mal Querer” by Rosalía
ラテン音楽のルーツと現代的なサウンドが交錯する傑作。カリのラテン的な要素に惹かれる人にぴったり。
“To Pimp a Butterfly” by Kendrick Lamar
ジャズやファンクを大胆に取り入れたコンセプトアルバムで、カリのジャンルレスなアプローチに共感できる。
“Blonde” by Frank Ocean
繊細な歌詞とジャンルを超えた音楽性が特徴。カリの内面的な部分に共感するリスナーにおすすめ。
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