発売日: 1988年11月21日
ジャンル: シューゲイザー、オルタナティブ・ロック、ノイズポップ
『Isn’t Anything』は、My Bloody Valentineが1988年にリリースしたファーストアルバムであり、シューゲイザーというジャンルを確立させた記念碑的な作品だ。彼らの特徴である、歪んだギターサウンド、エフェクトを多用したノイズ、そして幽玄的なボーカルが、このアルバムで初めて全面的に展開されている。Kevin Shieldsの独創的なギターワークとBilinda Butcherのドリーミーなボーカルが交錯し、サウンド全体が揺らぐような独特の音響効果が生まれる。『Isn’t Anything』は、後にリリースされる名作『Loveless』への布石となる重要な作品であり、オルタナティブ・ロックの新たな領域を切り開いた。
各曲ごとの解説:
- Soft as Snow (But Warm Inside)
アルバムの冒頭を飾るこの曲は、ざらついたギターリフと浮遊感のあるボーカルが混ざり合い、初期のMy Bloody Valentineのサウンドがいかに革新的であったかを示す。歪んだギターと繊細なボーカルが対照的で、夢幻的な雰囲気が漂う。 - Lose My Breath
ミニマルなアコースティックギターに、Bilinda Butcherの儚げなボーカルが乗る楽曲。シンプルな構成ながらも、空間的な広がりを感じさせ、ノスタルジックでメランコリックな雰囲気が漂う。 - Cupid Come
よりロック寄りの曲で、シールドのギターがノイジーに炸裂する一方、ボーカルは控えめでドリーミー。サイケデリックな要素が強く、リズムも重厚で、バンドのダイナミックな面が表れている。 - (When You Wake) You’re Still in a Dream
アップテンポでエネルギッシュな楽曲。激しいドラムとギターサウンドが駆け抜ける中、ぼんやりとしたボーカルが揺らぎ、シュールな夢の中にいるかのような印象を与える。 - No More Sorry
幻想的でミステリアスなトラック。Bilinda Butcherの幽玄的なボーカルが、曲全体に静かな緊張感をもたらしている。テーマは暗く、サウンドも不安感が漂うが、その美しさが際立っている。 - All I Need
シンプルなリフとドリーミーなボーカルが織り成す楽曲。歌詞はロマンチックで、ノイズの背後で静かに響くメロディが美しい。エフェクトがかかったギターサウンドが、曲全体に幻想的な空気感を与えている。 - Feed Me with Your Kiss
アルバムの中で最も激しいトラック。荒々しいギターリフと強烈なドラムが前面に出ており、バンドの攻撃的な一面を感じさせる。シューゲイザーの典型的な「ノイズの壁」を体感できる楽曲だ。 - Sueisfine
ノイジーでありながらも、どこかポップな要素を感じさせる楽曲。リズミカルなドラムと揺らぐようなギターサウンドが、歪んだ美しさを生み出している。バンドのダイナミズムがよく表れた曲だ。 - Several Girls Galore
リズムが強調されたダンサブルな楽曲。ギターのフィードバックが印象的で、ボーカルと楽器が渾然一体となって独特のサウンドスケープを作り出している。夢と現実が交錯するような、サイケデリックなムードが漂う。 - You Never Should
ノイジーなギターリフが支配するエネルギッシュなトラック。攻撃的なサウンドが特徴で、My Bloody Valentineのシューゲイザーサウンドの中でも特に力強い一面が感じられる楽曲。 - Nothing Much to Lose
ダイナミックなギターとドラムのパワフルなサウンドが魅力の一曲。バンドのグルーヴが強く感じられる曲で、ポストパンク的な要素も感じられる。歪んだサウンドの中にもキャッチーなメロディが隠れている。 - I Can See It (But I Can’t Feel It)
アルバムのラストを飾る、穏やかでドリーミーな楽曲。ノイズの中に漂うようなメロディと、ぼんやりとしたボーカルが、終わりにふさわしい静かな余韻を残す。アルバム全体を締めくくる美しいフィナーレ。
アルバム総評:
『Isn’t Anything』は、My Bloody Valentineがシューゲイザーというジャンルを確立させた傑作であり、ノイズとメロディ、夢幻的な雰囲気が巧妙に融合したアルバムだ。Kevin Shieldsの革新的なギターワークと、Bilinda Butcherの幽玄的なボーカルが絶妙なバランスで絡み合い、リスナーを別世界へと誘う。このアルバムは、バンドが後にリリースする『Loveless』の前兆とも言えるが、それ自体が独立した芸術作品として強い影響力を持っている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- Loveless by My Bloody Valentine
『Isn’t Anything』の続編とも言えるアルバムで、さらに洗練されたシューゲイザーサウンドが展開されている。ノイズとメロディの美しい融合が極まった名作。 - Nowhere by Ride
90年代初期のシューゲイザーの代表作で、浮遊感のあるギターとドリーミーなボーカルが特徴。My Bloody Valentineファンにとって必聴のアルバム。 - Souvlaki by Slowdive
ドリーミーでアンビエントなサウンドが魅力のシューゲイザーアルバム。静かで美しいメロディと、ノイズの中に埋もれた感情が共鳴する。 - Psychocandy by The Jesus and Mary Chain
ノイズポップとシューゲイザーの先駆けとも言える作品。攻撃的なギターサウンドとキャッチーなメロディの対比が、『Isn’t Anything』に通じる部分がある。 - Heaven or Las Vegas by Cocteau Twins
エフェクトを多用したギターサウンドと、浮遊感のあるボーカルが特徴のドリームポップの名作。夢のようなサウンドスケープが、My Bloody Valentineファンにも響くだろう。
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