1. 歌詞の概要
「I Want You to Want Me(アイ・ウォント・ユー・トゥ・ウォント・ミー)」は、もともとアメリカのロックバンド、Cheap Trick(チープ・トリック)が1977年に発表した名曲であり、Letters to Cleo(レターズ・トゥ・クレオ)は1999年、映画『10 Things I Hate About You(邦題:恋のからさわぎ)』のサウンドトラックのためにこの曲をカバーした。
原曲が持つパワーポップの軽快さを受け継ぎつつ、女性ヴォーカルによる再解釈を加えることで、恋愛における“渇望”や“自己開示”のニュアンスがより繊細かつダイレクトに表現されている。
歌詞の内容はきわめてシンプルで、「私はあなたに求めてほしい、必要としてほしい、愛してほしい」と繰り返し訴える、ストレートな恋の感情そのものだ。
それは切実さと恥ずかしさが同居する衝動であり、言葉を重ねるたびに、恋をしていることの“やるせなさ”や“いじらしさ”が浮かび上がってくる。
2. 歌詞のバックグラウンド
オリジナルの「I Want You to Want Me」は、Cheap Trickが1977年に発表したアルバム『In Color』に収録されていたが、翌年にリリースされたライブ・アルバム『At Budokan』に収録されたバージョンが爆発的ヒットとなり、バンドの代表曲となった。
その陽気でキャッチーなパワーポップ・サウンドと、甘酸っぱい歌詞が多くのファンの心をつかみ、今なお多くのアーティストにカバーされ続けている。
Letters to Cleoによるカバーは、1999年に公開された映画『10 Things I Hate About You』の劇中およびサウンドトラックに収録され、ティーンムービーの象徴として新たな命を得た。
ボーカルのKay Hanley(ケイ・ハンリー)の声が、オリジナルにあった“男の子の願望”を“女の子の正直な気持ち”へと変化させ、90年代の空気にフィットする瑞々しさとリアリティを与えている。

3. 歌詞の抜粋と和訳
以下に、「I Want You to Want Me」の印象的なフレーズを抜粋し、日本語訳を併記する。
“I want you to want me / I need you to need me”
「あなたに私を求めてほしい / あなたに私を必要としてほしい」
“I’d love you to love me”
「あなたに、私を愛してほしい」
“I’m begging you to beg me”
「お願い、私を求めてお願いって言って」
“Didn’t I, didn’t I, didn’t I see you crying?”
「あなたが泣いているの、私、見たんじゃなかった?」
歌詞全文はこちらで確認可能:
Cheap Trick – I Want You to Want Me Lyrics | Genius
※Letters to Cleo版は歌詞のアレンジは最小限で、オリジナルに忠実です。
4. 歌詞の考察
「I Want You to Want Me」は、言ってしまえば“愛されたいという願望”を何の飾りもなく、繰り返し表現した歌である。
その繰り返しがしつこく感じられる一方で、だからこそ恋をしている時の“余裕のなさ”や“心のむき出し”がありありと伝わってくる。
Letters to Cleoのカバーによって、この曲のニュアンスは大きく変わった。
オリジナルがややコミカルで、ポップすぎるがゆえに“弱さ”を覆い隠していたのに対し、Kay Hanleyの歌声は、感情を正面からさらけ出している。
彼女の声には、恋愛における脆さや自信のなさ、でもそれでもまっすぐにぶつかっていこうとする強さがある。
これは、「恋愛において自分をよく見せようとする」ことの裏側で、本当は“どうか求めてほしい”と願っている人間の正直な叫びであり、その純度の高さが、映画『10 Things I Hate About You』のストーリーとも絶妙にマッチしていた。
同作では、抑えきれない感情が少女たちを突き動かし、自分らしく生きようとする姿が描かれており、このカバーはその精神を象徴するような1曲となっている。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Kiss Me by Sixpence None the Richer
少女的な恋心の透明感と、儚い期待が共鳴するラブソング。 - You Get What You Give by New Radicals
若者たちの不安と希望が入り混じる、90年代的アンセム。 - Torn by Natalie Imbruglia
恋愛の不確かさと自我の崩壊をリアルに描いた90年代の名曲。 - Stay (I Missed You) by Lisa Loeb
“言えない気持ち”を内に秘めたまま、相手に心を残す名バラード。 - I Want It That Way by Backstreet Boys
甘く切ない“説明できない愛情”をポップに包んだ、時代の象徴的ヒット。
6. “求めることは、弱さじゃない”
「I Want You to Want Me」は、恋に落ちた人が最も言えないけれど、心の奥で叫んでいる願いそのものだ。
Letters to Cleoのカバーは、その願いに“女の子のまっすぐな声”を与えたことで、恋愛という感情の根源的な部分――“愛されたい”“必要とされたい”“心に触れてほしい”という欲求の美しさを、正直に引き出している。
この曲は、愛を求めることの切実さを恥じることなく、堂々と肯定するラブソングである。
そして、90年代の少女たちにとっての“本音のバラード”として、今もなお心のどこかで鳴り響いている。
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