1. 歌詞の概要
「I Always Knew」は、The Vaccinesが2012年に発表した2ndアルバム『Come of Age』に収録された楽曲で、彼らの作品群の中でも特にメロディアスでノスタルジックな香りを漂わせるラブソングである。タイトルの「I Always Knew(ずっと分かっていた)」という言葉は、恋の始まりから終わり、あるいはその揺れ動きの中で芽生えていた“確信”や“予感”を指しており、甘さと切なさが同居した非常に感情豊かな楽曲に仕上がっている。
歌詞は一見シンプルだが、語り手の中で熟成された感情――相手に対する想いの変化、気づかないふりをしてきた感情の輪郭が、時間とともに鮮明になっていく様子が丁寧に描かれている。これは若さゆえの不安や葛藤、恋愛における優しさと臆病さを、誰もが抱えたことのある記憶として再現する“成長のバラード”でもある。
2. 歌詞のバックグラウンド
The Vaccinesは、デビュー作『What Did You Expect from The Vaccines?』(2011年)でのエネルギッシュなガレージロック路線から、次作『Come of Age』でよりメロディ重視の楽曲や内省的な歌詞にシフトした。その中でも「I Always Knew」は、最も感情的で“心に語りかける”タイプの楽曲として、ファンやメディアから高い評価を受けた。
この曲はアルバムリリース前からライブで演奏されており、すでにファンの間では“隠れた名曲”として親しまれていた。ジャスティン・ヤングの抑えたボーカルと、ドリーミーで柔らかなギターのアルペジオが絶妙に溶け合い、The Vaccinesにとって新しい表現スタイルを確立した一曲と言える。
サウンド的には、1980年代後半のオルタナティブ・ロックや、Elvis Costello、The SmithsといったUKロックの影響が色濃く、リバーブの効いたギターとドラムが心地よい空間を作り出している。ロックの勢いとポップの柔らかさを両立させたこの曲は、バンドの“成熟”を象徴する重要な一歩であった。
3. 歌詞の抜粋と和訳
以下に、「I Always Knew」の印象的なフレーズと和訳を紹介する。
I always knew I would like this
こうなるって、なんとなく分かってたI always knew it would be like this
こんな風に感じるって、初めから分かってたんだBut I still let you ruin my day
それでも、君に僕の一日を台無しにされるのを許してしまったI always knew
ずっと前から、分かってたのにAnd I can’t stop now
でももう止められないI’m not the one who made you want to stay
君が“ここにいたい”と思ったのは、僕のせいじゃないかもしれないけどBut I’m the one who makes you walk away
でも、君が去っていく原因は僕なんだ
引用元:Genius Lyrics – The Vaccines “I Always Knew”
4. 歌詞の考察
「I Always Knew」は、恋愛における“自己認識”と“手放すこと”の難しさを描いた繊細な歌である。主人公は、相手との関係がうまくいかないことをどこかで分かっていたが、気づかないふりをして感情に身を任せてしまった。そしてその結果、思っていた通りに傷つくことになる。その「分かっていたのに、止められなかった」という後悔と諦念の感情が、この曲には満ちている。
サビの「I always knew」というリフレインは、まるで自分自身への言い聞かせのようでもあり、過去の選択を肯定したい気持ちと、未来への不安が交錯する内面的なモノローグとして響く。また、「君が去る原因は僕だ」という自己反省もあり、そこには自己憐憫ではなく、“成熟しつつある若者の覚悟”がにじんでいる。
恋愛の終わりを大げさに悲しむのではなく、静かに受け入れていく過程を、ギターの優しい音色とともに描いていくこの曲は、The Vaccinesにとってエモーショナルな表現の新境地とも言える。衝動やエネルギーだけではなく、余韻や後悔も音楽にできることを証明した作品である。
※歌詞引用元:Genius Lyrics – The Vaccines “I Always Knew”
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- There Is a Light That Never Goes Out by The Smiths
愛と孤独のはざまを描いた80年代UKロックの名曲。静かな感情の爆発が共通する。 - Undercover Martyn by Two Door Cinema Club
ダンサブルながらも、心の葛藤を繊細に描いたインディー・ロック。軽快さの裏に切なさがある。 - First Day of My Life by Bright Eyes
恋の始まりにある“予感”と“脆さ”を静かに綴ったアコースティック・バラード。 - The Night We Met by Lord Huron
過去の恋への執着と“もしも”を問うメランコリックな一曲。時間と後悔のテーマが通底する。
6. “若さ”の終わりとともに響く、感情の輪郭
「I Always Knew」は、The Vaccinesというバンドが“初期衝動”だけではなく、“感情の深度”をも表現できるアーティストへと成長したことを象徴する楽曲である。この曲において描かれているのは、ただの恋愛の終わりではない。“若さ”や“無知”という名のバリアが少しずつ剥がれていく瞬間であり、そこで初めて自分の感情に正面から向き合うプロセスそのものである。
「分かっていたのに、やめられなかった」というフレーズは、恋愛だけでなく人生の様々な場面で誰しもが抱える“後悔のリアル”を描写しており、その感情がストレートなロックバラードとして昇華されている。
今までにThe Vaccinesの速くて激しい曲を聴いてきたリスナーが、この曲で初めて“立ち止まること”を覚えるような、そんな余韻を持つこの作品は、ただの失恋ソングではなく、ひとつの“成長の記録”として心に残り続けるだろう。
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