Hold On Tight by Electric Light Orchestra(1981)楽曲解説

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1. 歌詞の概要

Hold On Tight」は、Electric Light Orchestra(ELO)が1981年にリリースしたアルバム『Time』の冒頭を飾るシングル曲であり、“夢を信じ続けることの力強さ”を、高速なロックンロールビートに乗せて力強く歌い上げた、モチベーショナルなアンセムである。

タイトルの「Hold On Tight(しっかりつかまっていろ)」は比喩的に使われており、人生の荒波の中でも夢や信念にしがみついていけ、というメッセージが込められている。歌詞はきわめてストレートかつ繰り返しが多く、そのぶん、**聴く者に“背中を押すような説得力”と“鼓舞する力”**を与える構成となっている。

またこの楽曲の特徴的な点は、途中でフランス語の歌詞が挿入されることで、夢の普遍性=国や言語を超えて人は希望を求めて生きているというメッセージを、シンプルな言葉以上に音楽的に表現しているところにある。

2. 歌詞のバックグラウンド

この楽曲が収録された『Time』は、ELOの音楽的なターニングポイントとして知られるアルバムであり、70年代のオーケストラ・ポップ路線から、80年代的なエレクトロ・ポップへと舵を切った作品である。SF的なタイムトラベルの物語性を帯びたコンセプトアルバムである一方、「Hold On Tight」はその中でも異色ともいえる、オールドスクールなロックンロールの精神を宿した楽曲である。

ジェフ・リン(Jeff Lynne)はこの曲について、「ELOにしては珍しくとてもシンプルな構造をもった楽曲だけど、それこそが伝えたかった力の根源なんだ」と語っている。確かにこの曲では、複雑なストリングスや多層的なハーモニーといったELOの定番は控えめで、むしろギター、ドラム、ピアノの直線的な力強さが前面に出ている。

また、ELOにとってこの曲はアメリカで非常に高く評価され、ビルボードHot 100でトップ10にランクインしたほか、当時としては破格の制作費がかけられたミュージックビデオも話題を呼び、バンドのイメージ刷新にも大きく貢献した楽曲となった。

3. 歌詞の抜粋と和訳

“Hold on tight to your dream”
夢にしっかりとつかまっていろ

“When you see your ship go sailing / When you feel your heart is breaking”
自分の船が出航していくのを見たとき 心が壊れそうなときにも

“Hold on tight to your dream”
夢を、絶対に手放すな

“When you get so down that you can’t get up / And you want so much but you’re all out of luck”
落ち込んで立ち上がれないとき 何かを強く望んでも、運が味方しないときにも

“Don’t let go, don’t let go”
手放すな、決して

“Accroche-toi à ton rêve”(仏語)
夢をつかんでいろ(※英語と同義のフランス語)

歌詞引用元:Genius – Electric Light Orchestra “Hold On Tight”

4. 歌詞の考察

「Hold On Tight」は、ELOの作品の中でも最もメッセージが明確かつポジティブな内容で構成されており、落ち込んだ心や迷いの中にある人へ向けた“応援歌”としての性格を強く持っている。繰り返される「Hold on tight to your dream」というフレーズは、もはや説教やアドバイスではなく、祈りや呪文のように機能する言葉になっている。

とくに注目すべきは、“夢”を美化せず、むしろ「運に見放されても」「希望が見えなくなっても」というリアリスティックな場面設定をしたうえで、それでも夢を手放すなと語っている点である。これは、ELOがただのファンタジーではなく、現実の困難を直視しながら希望を語るバンドであることの証明とも言える。

また、フランス語の挿入もただの演出ではなく、「夢を持ち続けろ」というメッセージがどの国でも通じる普遍的なものであることを示す象徴的な工夫であり、楽曲に国境や文化の壁を超える広がりを与えている。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • Dream On by Aerosmith
     夢を追い続けることの苦しみと誇りを、パワフルに描いたロックバラードの名曲。

  • Don’t Stop Believin’ by Journey
     希望を手放すなというメッセージを、アンセムとして昇華した80sロックの代表作。

  • Eye of the Tiger by Survivor
     逆境を戦い抜く力をくれる、モチベーション系ロックの代名詞。

  • You Get What You Give by New Radicals
     混沌の中でも自分を信じて突き進むという信条を、現代的にアップデートしたポップロック。

6. “夢を離さずにいれば、必ず未来は動き出す”

「Hold On Tight」は、シンフォニック・ロックやプログレの文脈から生まれたELOが、“希望とリアリズムの間”を貫く音楽を生み出せることを証明した一曲である。技巧よりも感情、理屈よりも信念。ジェフ・リンはこの曲で、誰にでも訪れる“あきらめそうになる瞬間”に寄り添い、その先にある可能性を信じ続けることの大切さを訴えた。

特別な才能がなくても、資金や時間がなくても、夢を離さずに握りしめていれば、やがて何かが変わるかもしれない。そのことを伝えるこの楽曲は、まさに**“現実に疲れた心を、再び前に進めるための音楽”**であり、今もなお多くの人に希望の光を与え続けている。


「Hold On Tight」は、夢のために闘い続けるすべての人へのエールである。音楽という名のロケットに乗って、もう一度、自分の夢へと飛び立とう。

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