アルバムレビュー：Highway 61 Revisited by Bob Dylan

アルバムレビュー

2024.10.26

発売日: 1965年8月30日
ジャンル: フォークロック、ブルースロック

『Highway 61 Revisited』は、ボブ・ディランがエレクトリックギターを導入し、フォークからロックへの転換点となった重要なアルバムである。60年代半ばの音楽シーンに衝撃を与え、ディランを新たな時代の象徴的なアーティストへと押し上げた。このアルバムは、鋭い社会批判、詩的で象徴的な歌詞、そしてブルースやロックンロールのエネルギーが融合している。「Like a Rolling Stone」や「Ballad of a Thin Man」などの名曲が収録され、ディランの斬新なサウンドと挑発的な歌詞が時代のムードを完璧に捉えた一枚だ。特にタイトルにもなっている「Highway 61」は、アメリカ南部のブルースのルーツを象徴する道であり、アルバム全体のテーマにも繋がっている。

各曲ごとの解説:

Like a Rolling Stone
　アルバムを開けるこの曲は、ディランのキャリアの中でも最も象徴的な一曲であり、ロック史における最高傑作の一つとされる。6分を超える大作でありながら、独特の歌詞とキャッチーなオルガンのリフが耳に残る。社会的地位や虚栄に対する皮肉を込めた歌詞は、時代を超えて多くのリスナーに共感を呼ぶ。ディランのエレクトリック時代を象徴する代表曲だ。
Tombstone Blues
　ブルースの影響が色濃いロックナンバーで、速いテンポと攻撃的なギターリフが印象的。歌詞には社会批判や歴史的な人物が散りばめられ、ディラン独自の風刺が感じられる。音楽的にもメッセージ的にもエネルギッシュな一曲。
It Takes a Lot to Laugh, It Takes a Train to Cry
　ゆったりとしたブルース調のナンバーで、アルバムの中では落ち着いた雰囲気を持つ。鉄道をモチーフにした詩的な歌詞が印象的で、ディランの深いブルースへの理解が感じられる。シンプルなアレンジながらも、感情豊かなボーカルが引き立つ一曲。
From a Buick 6
　ブルースロックの典型的なサウンドを持つこの曲は、歪んだギターリフと軽快なビートが特徴。自由で奔放な歌詞は、ロードムービーのような雰囲気を漂わせており、アメリカ南部の情景が浮かび上がる。アルバム全体に流れるエネルギッシュなムードを象徴するトラックだ。
Ballad of a Thin Man
　ミステリアスな雰囲気を持つこの曲は、アウトサイダーや社会の変化についてのメタファーが込められている。ピアノを中心としたサウンドとディランの挑発的なボーカルが、聴く者に強い印象を与える。歌詞の中に登場する「Mr. Jones」は、社会に取り残された人物を象徴しており、時代の変化に対する不安や混乱を描いている。
Queen Jane Approximately
　フォークとロックの融合が感じられるこの曲は、優しくメロディアスなナンバーで、ディランのより内省的な側面が表れている。物語的な歌詞は、孤独や疎外感を抱える人物について描かれており、メロディの美しさが印象的。
Highway 61 Revisited
　アルバムタイトルにもなっているこの曲は、アメリカの南北を結ぶ「ハイウェイ61」をテーマにしており、ブルースとアメリカ文化へのオマージュが込められている。シンプルながら力強いギターリフが特徴で、ディランのストーリーテリングの才能が光る。ユーモアと風刺を交えた歌詞が、彼の鋭い観察力を示している。
Just Like Tom Thumb’s Blues
　この曲は、ディランの詩的で夢幻的な歌詞が際立つナンバー。メキシコの町での放浪をテーマにしており、都会の喧騒や混乱の中で感じる孤独感が描かれている。ゆったりとしたリズムと、幻想的なギターサウンドが曲のムードを高めている。
Desolation Row
　アルバムを締めくくる11分を超える大作で、ディランの詩的なイメージが溢れた歌詞が展開される。アコースティックギターのシンプルな伴奏に乗せて、架空の街「Desolation Row」での風変わりな出来事が歌われている。カオスな世界観を描きながらも、どこか哀愁を感じさせる美しいメロディが印象的で、ディランの詩的世界の真髄が凝縮された楽曲だ。

アルバム総評:

『Highway 61 Revisited』は、ボブ・ディランがフォークロックの世界を確立し、ロックの枠を広げた歴史的なアルバムだ。エレクトリックギターとブルースを基盤としながら、詩的で鋭い歌詞がディランの社会批評や内省を見事に表現している。「Like a Rolling Stone」や「Ballad of a Thin Man」といった曲は、60年代の反文化のムードを完璧に捉え、ディランの時代を象徴する存在としての地位を確立した。このアルバムは、ロックミュージックが単なる娯楽ではなく、芸術的かつメッセージ性を持った表現の場であることを証明した一枚であり、今なお多くのリスナーに影響を与え続けている。

このアルバムが好きな人におすすめの5枚:

Bringing It All Back Home by Bob Dylan
『Highway 61 Revisited』の前作で、ディランが初めてエレクトリックギターを導入したアルバム。フォークとロックの融合が進み、「Subterranean Homesick Blues」などが収録されている。
Blonde on Blonde by Bob Dylan
『Highway 61 Revisited』の次作で、さらにサウンドの幅を広げたダブルアルバム。より深い詩的世界と豊かなサウンドが特徴で、ディランの革新性が際立つ。
Let It Bleed by The Rolling Stones
ブルースロックを基盤にしつつ、社会的メッセージや個人的なテーマを探求した作品。ディランの影響を強く受けたアルバムで、60年代後半のロックの象徴的な作品。
The Velvet Underground & Nico by The Velvet Underground
詩的で前衛的な要素を取り入れたアルバムで、ディランの影響を受けたリリックが特徴。ロックの可能性を広げた一枚で、音楽的挑戦が楽しめる。
After the Gold Rush by Neil Young
フォークロックと社会的メッセージが融合した名盤で、ディランのフォーク的要素に共鳴する。詩的で感情豊かなリリックが、ディランのファンにも響く作品。