Gun Shy by Widowspeak(2013)楽曲解説

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1. 歌詞の概要

「Gun Shy」は、アメリカのドリームポップ・デュオ、Widowspeakウィドウスピーク)が2013年に発表した2ndアルバム『Almanac』に収録された楽曲である。タイトルの「Gun Shy(ガン・シャイ)」は、「銃声に驚きやすい」「臆病な」「神経質な」といった意味を持ち、感情的に打たれることを恐れる人間の脆さと防衛反応を象徴している

この曲で描かれるのは、過去の痛みによって感情的に鈍くなり、他人との距離を取らざるを得なくなった語り手の内面である。誰かを近づけること、心を開くこと、それがもたらす可能性と恐れ。そんな心理状態を、繊細な言葉と囁くようなボーカルで描き出している。

「Gun Shy」は単なる恋愛の歌ではない。関係性の中で自己を守ろうとすること、傷ついた経験が心の反応を変えてしまうことへの静かな理解と、ほんのかすかな希望が込められている楽曲である。

2. 歌詞のバックグラウンド

Widowspeakは、Molly Hamiltonの透明感あるヴォーカルと、Robert Earl Thomasによる湿度を含んだギターサウンドで知られ、Mazzy StarやHope Sandovalを思わせるようなドリーミーで陰りのあるサウンドスケープを特徴とするバンドである。

「Gun Shy」は、彼らが2013年にリリースした2作目のアルバム『Almanac』に収録されており、デビュー作の荒削りでフォーク的なテイストから一歩進み、より洗練されたサウンドと明確な感情の輪郭が表現された作品群の中でも、とりわけ内省的な位置づけを担う一曲となっている。

このアルバム全体が自然現象や四季、時間の流れといったテーマを内包しており、「Gun Shy」もまた、心の気象のように、感情の変化や予兆を静かに捉えた楽曲と言える。

3. 歌詞の抜粋と和訳

以下に、「Gun Shy」の印象的なフレーズを抜粋し、日本語訳を併記する。

I don’t flinch when you come around
あなたが近づいても、私は動じない

But I get gun shy
でも、私は“ガン・シャイ”になる

I don’t cry when you call me out
あなたが私を呼んでも、私は泣かない

But I get gun shy
だけど私は、やっぱり怖がってしまう

Something inside me says no
心のどこかが、「ダメだ」と囁くの

出典:Genius – Widowspeak “Gun Shy”

4. 歌詞の考察

「Gun Shy」の歌詞は極めてミニマルでありながら、感情の複雑な層を優しく解きほぐすような繊細さを持っている。タイトルにある「gun shy」という言葉は本来、犬などが銃声に怯える様子を表すが、ここでは過去の経験により、“感情の発砲音”に過敏になってしまった人間の心のありようを示している。

「I don’t flinch when you come around / But I get gun shy」というラインは、外から見れば平静を保っているように見えるが、内面では反射的な恐れが芽生えているという二重性を描いている。「泣かない」「動じない」と繰り返すたびに、その“強がり”の背後にある痛みが際立っていく構造だ。

そして、「Something inside me says no」という一行は、理性や意志ではなく、“心の奥の警報装置”のようなものが働いてしまう感覚を象徴しており、それはトラウマや繊細さからくる感情の拒否反応と読める。

この曲は、他人に近づきたい、愛したいという願いがありながら、それを実行できない葛藤を抱える人の、とても静かな叫びだ。それを表に出すことなく、囁くようなトーンで淡々と語るからこそ、より深くリスナーの内面に染み込む

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • Into Dust by Mazzy Star
    壊れやすい感情を穏やかに描いた、Widowspeakと共鳴する世界観を持つ名曲。

  • Terrible Love by The National
    愛の中にある恐れと不安を、男性的な視点から描いたエモーショナル・バラード。
  • Come Down by Sylvan Esso
    感情が引き裂かれるような瞬間を、静かに受け止めるように歌うミニマル・ポップ。

  • No Below by Speedy Ortiz
    傷ついた過去とそれでも前を向く意思を重ねる、静かなインディー・ロック。

  • Don’t Swallow the Cap by The National
    心の奥底の不安定さとそれを包み隠す言葉のバリアをテーマにした名作。

6. “恐れと愛のはざまで”——Gun Shyが伝える心の震え

「Gun Shy」は、Widowspeakの楽曲群の中でも特に**“静かな感情の震源”としての力を持った一曲**である。ドリームポップというジャンルにありがちな“美しさ”を表面的に追うのではなく、その美しさが生まれる“感情の耐えがたさ”や“近づきたいのに近づけない心理の壁”を、真摯に見つめている

愛されたいのに、怖い。近づきたいのに、また傷つくのではないかと怯えてしまう。そんな矛盾を抱えるすべての人にとって、この曲はまるで心の奥の痛みに手を添えるような存在となるだろう。

心は防衛本能によって時に「no」と叫ぶ。でも、その「no」すらも誰かに理解されたいと願っている。「Gun Shy」はその痛みを否定せず、むしろ“そう感じてしまうこと”の中に優しさと美しさがあることを、囁くように教えてくれる楽曲である。あなたがどれだけ臆病でも、音楽は寄り添ってくれる。それがこの曲の持つ静かで深い力だ。

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