1. 歌詞の概要
「Gimme Danger」は、Iggy and The Stoogesが1973年にリリースしたアルバム『Raw Power』の収録曲で、混沌と破滅の美学を描いたダークで妖艶な楽曲です。
アルバム『Raw Power』の中では異色とも言えるスローで陰鬱なナンバーでありながら、曲全体に漂う不穏なムードとIggy Popの挑発的なボーカルが際立つ、パンク史に残る名曲です。
歌詞では、「危険（Danger）」を求める主人公が、破滅への欲望を抱えながら、自らその道へと進んでいく様子が描かれています。Iggy Popが持つ退廃的な美学と暴力的な衝動が色濃く反映されており、単なる破壊衝動ではなく、そこに宿る詩的な魅力を感じさせる作品となっています。
2. 歌詞のバックグラウンド
「Gimme Danger」は、The Stoogesのキャリアの中でも、単なるパンク的な暴力性だけでなく、より深みのあるダークで陰鬱な側面を見せた楽曲です。
この楽曲は、ギタリストのJames Williamsonによるアコースティックギターのイントロが印象的で、ハードなリフと混ざり合うことで、まるで退廃的なブルースのような空気感を作り出しているのが特徴です。
Iggy Popは、この曲を「ストゥージズのバラード」と呼んでおり、それは決して甘いラブソングという意味ではなく、破滅と暴力の中にある美しさを讃えた歌という意味を持っています。
3. 歌詞の抜粋と和訳
Iggy Popのパート
Gimme danger, little stranger
And I’ll feel with you at ease危険をくれ、見知らぬ君よ
そうすれば、俺は安心できるGimme danger, little stranger
And I’ll give you a disease危険をくれ、見知らぬ君よ
そうすれば、俺は病を与えようThere’s nothing left alive
But a pair of glassy eyes生きているものは何もない
ただ光を失った瞳がそこにあるだけSo gimme danger, little stranger
And I’ll feel your diseaseだから危険をくれ、見知らぬ君よ
そうすれば、俺は君の病を感じるだろう
この歌詞では、「Gimme Danger（危険をくれ）」というフレーズが繰り返され、退廃的な美学と破滅願望が強く表現されています。
また、「I’ll give you a disease（俺は病を与えよう）」というラインは、人間の本質的な自己破壊衝動や、社会に対する病理的な反応を暗示しており、The Stoogesらしい反抗的なテーマを持っています。
特に、「There’s nothing left alive but a pair of glassy eyes（生きているものは何もない、ただ光を失った瞳がそこにあるだけ）」というラインは、社会の虚無や、人間が持つ感情の喪失を象徴しているようにも感じられるポイントです。
※歌詞の全文はこちらで確認できます。
4. 歌詞の考察
「Gimme Danger」は、単なる暴力的なパンクソングではなく、より内面的な破滅と美を追求した楽曲と言えます。
この曲では、「危険（Danger）」が単なる暴力や破壊ではなく、退廃的な美学や自己崩壊への欲望を象徴しているのが特徴です。
また、Iggy Popは歌詞の中で「病（disease）」という言葉を使い、自らが持つ狂気や社会に対する異物感を表現しています。
この病は、単なるウイルス的なものではなく、**「社会に適応できない自分自身の病理」「世の中に対する違和感や不満」**といったテーマにもつながると解釈できます。
サウンド面でも、アコースティックギターのイントロから始まり、徐々に歪んだエレクトリックギターへと移行する流れは、まるでゆっくりと崩壊していく精神状態を描いているかのようです。
結果として、「Gimme Danger」は、単なるロックンロールの反抗の歌ではなく、社会の混乱と個人の内面の破滅が交差する芸術的な楽曲となっています。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- “Raw Power” by Iggy and The Stooges
アルバムのタイトルトラックで、破壊的なエネルギーが炸裂する楽曲。 - “Sister Midnight” by Iggy Pop
David Bowieとのコラボで作られた、退廃的でダークなロックソング。 - “Venus in Furs” by The Velvet Underground
マゾヒズムや退廃美をテーマにした、独特の空気感を持つ楽曲。 - “Search and Destroy” by Iggy and The Stooges
攻撃的なエネルギーに満ちた、パンクの原点とも言える名曲。 - “Death Valley ’69” by Sonic Youth
1980年代オルタナティブロックシーンの中で、「Gimme Danger」と同じダークな雰囲気を持つ楽曲。
6. 「Gimme Danger」の影響と後世への影響
「Gimme Danger」は、パンクロックやオルタナティブロックの世界において、「ダークな美学」「破滅的なロマンティシズム」を象徴する楽曲となりました。
- グランジやオルタナティブロックへの影響
The Stoogesの音楽は、NirvanaやSonic Youth、Nine Inch Nailsなどのバンドに大きな影響を与えました。 -
Iggy Popのキャリアの象徴的な楽曲
「Gimme Danger」は、後のIggy Popのソロ作品にも通じる要素を持っており、彼の芸術性を象徴する楽曲として語り継がれています。 -
映画やメディアでの使用
2016年にはジム・ジャームッシュ監督によるThe Stoogesのドキュメンタリー映画『Gimme Danger』が公開され、この楽曲の重要性が再評価されました。
まとめ
「Gimme Danger」は、パンクロックの暴力性と退廃的な美学を融合させた、The Stoogesの最も芸術的な楽曲のひとつです。
Iggy Popの独特のボーカルとJames Williamsonのギターが生み出すダークな雰囲気は、今なお多くのリスナーを魅了し続けています。
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