
1. 歌詞の概要
「One Nation Under a Groove」は、1978年にリリースされたFunkadelicのアルバム『One Nation Under a Groove』の表題曲であり、彼らのキャリアを象徴するアンセムである。この曲は、ファンクミュージックを通して人々を一つにするという思想的宣言であり、Funkadelicが掲げる“フリーク・ユートピア(変人の理想郷)”の核心を体現している。
歌詞はシンプルで繰り返しが多いが、それによって音楽が生む集団的高揚感と祝祭性が強調される。特にサビの「One nation under a groove / Getting down just for the funk of it」というラインは、Funkadelicの政治的かつ遊び心あふれる精神をそのまま言語化したものであり、グルーヴ(ノリ)こそが自由を手に入れる手段であるという哲学が込められている。
2. 歌詞のバックグラウンド
Funkadelicは1960年代末にジョージ・クリントンが率いて結成された集団で、P-Funk(Parliament-Funkadelic)と総称されるサイケデリックかつファンクな音楽世界を構築した。この「One Nation Under a Groove」は、それまでのサイケ的要素やロック的攻撃性に加え、よりダンスフロアに寄ったファンクの祝祭性とメッセージ性が融合した画期的な楽曲である。
1978年当時、アメリカは依然として黒人差別・階級格差・ポストベトナムの余波に揺れていた。その中で、ジョージ・クリントンは音楽を通して人種も社会階層も超えることを目指し、「One Nation Under a Groove」というタイトルで**“グルーヴによる擬似国家”の創造**を試みた。
これは、実際の政治的国家ではなく、“音楽と共鳴する人々の連帯”という、新しい精神的コミュニティの形成宣言でもある。現実のアメリカ合衆国のスローガン「One Nation Under God」に対するカウンターとも読める。
3. 歌詞の抜粋と和訳
引用元:Genius Lyrics – Funkadelic “One Nation Under a Groove”
So wide, you can’t get around it
So low, you can’t get under it
So high, you can’t get over it
これだけ広ければ、回り込むことはできない
これだけ低ければ、くぐることはできない
これだけ高ければ、飛び越えることもできない
This is a chance, this is a chance
To dance your way out of your constrictions
これはチャンスだ、チャンスなんだ
抑圧からダンスで抜け出すんだ
この冒頭の詩的なラインは、グルーヴが逃れられない全方位的な力であることを示している。そして「ダンスによる解放」は、Funkadelicの思想における中心概念である。彼らにとって音楽は娯楽ではなく、“変革の手段”なのだ。
One nation under a groove
Gettin’ down just for the funk of it
グルーヴのもとにひとつになった国
ただただファンクのために踊るんだ
We’re gonna have a funkadelic good time
最高にファンカデリックな時間を過ごそうぜ
このサビ部分は極めてシンプルでありながら、集合的な陶酔状態=ユートピアを言語化している。ここでは国家や宗教、制度ではなく、“グルーヴ”こそが人々を一つにまとめる根源的な力として機能している。
4. 歌詞の考察
「One Nation Under a Groove」は、単なるダンスミュージックではない。それは抑圧された人々に贈られた自由のマニフェストであり、政治・宗教・人種を超えて「踊る」という行為そのものを解放運動と位置づける、ポスト公民権運動時代のブラックミュージックの新しい地平である。
“Dance your way out of your constrictions”というラインは、踊ることで自らを制限しているもの(固定観念、社会的役割、抑圧)から解き放て、という極めてラディカルなメッセージである。Funkadelicにとって、音楽は政治よりも強力な変革装置であり、ダンスは“生き方そのもの”なのだ。
また、この曲が提唱する“nation”=国家は、国境や法制度ではなく、共有されたリズムと価値観によって成り立つ仮想共同体である。それは1970年代という時代において、既存の枠組みに満足しない者たちへの逃げ場、いやむしろ“再定義された居場所”を提供していた。
さらに、タイトル自体がアメリカの愛国的標語「One Nation Under God」に対するポリティカルでサイケデリックなパロディになっており、信仰の対象を“神”から“グルーヴ”へと置き換えることで、ファンクの宗教性=音楽と魂の一致を際立たせている。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- “Give Up the Funk (Tear the Roof Off the Sucker)” by Parliament
Funkadelicと対をなすParliamentの代表曲で、祝祭的グルーヴと政治的メッセージが融合。 - “Move On Up” by Curtis Mayfield
ソウルファンクの王道。前向きなメッセージと躍動感が共鳴する名曲。 - “Flash Light” by Parliament
シンセベースとコズミックなサウンドが光る、ファンク宇宙の拡張版。 - “Dance to the Music” by Sly & The Family Stone
ジャンルを超えて全員で踊ることを掲げた、1960年代後半のファンク革命ソング。
6. グルーヴで築くユートピア──“音楽による擬似国家”の創造
「One Nation Under a Groove」は、Funkadelicが築いた音楽を軸とした理想社会の建国宣言である。現実の国家が分断や抑圧をもたらすなら、我々は音楽の中で新しい“国”を作ればいい──そんな逆転の発想とユーモア、そして深い精神性がこの曲には詰まっている。
それは決して逃避ではなく、音楽という手段で社会を読み替え、変革しようというアフロフューチャリズム的ヴィジョンの一端である。そしてその中心にあるのが、「踊ること」「感じること」「グルーヴに身を委ねること」なのだ。
「One Nation Under a Groove」は、音楽が国境も思想も超えて人を結びつけることを証明した、ファンクのマニフェストである。
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