Funkadelic Hit It and Quit It(1971)楽曲解説

1. 歌詞の概要

「Hit It and Quit It」は、1971年にリリースされたFunkadelicの金字塔的アルバム『Maggot Brain』の収録曲であり、リズム、霊性、性的エネルギーが交錯する“儀式的ファンク”の代表例である。タイトルの「Hit It and Quit It」は直訳すれば「やってすぐ去れ」となるが、これは音楽的・性的両方の意味を持つ多義的なフレーズであり、本作ではその両義性がファンクという形で統合されている。

表面的には、ソウルやファンクの持つ「ノリ」を促すパーティーソングのように聞こえるが、その裏には自己肯定、自由意志、快楽の瞬発性に対する深い思想的な含意が込められている。まさに、一夜限りの行為を肯定することで、“束縛なき存在の自由”を讃えるFunkadelicらしい挑発的な楽曲である。

2. 歌詞のバックグラウンド

「Hit It and Quit It」は、Funkadelicの3作目となるアルバム『Maggot Brain』に収録された楽曲で、ボーカルを担当するのはFuzzy Haskins(ファジー・ハスキンス)。彼はもともとParliaments時代のメンバーであり、本作では伝統的ソウルのテクスチャーとファンクの前衛性を融合させたような熱唱を披露している。

この曲が生まれた1971年という時代は、ブラック・アメリカンの若者たちが政治的アイデンティティだけでなく、性的な解放、精神的自由、そして音楽の進化を模索していた時代である。Funkadelicはそのすべてを音楽に融合し、「Hit It and Quit It」はその最たる例として機能している。

また、アルバム『Maggot Brain』自体が非常に深いテーマ(死、霊性、文明の腐敗)を扱っている中で、この曲はある意味解放とカタルシスの役割を担っており、強烈なグルーヴとコール&レスポンスによって、聴き手を“儀式の場”へと誘う。

3. 歌詞の抜粋と和訳

引用元:Genius Lyrics – Funkadelic “Hit It and Quit It”

Hit it and quit it (hit it!)
I said hit it and quit it (hit it!)

やって、すぐやめろ(さあやれ!)
やるだけやって、あとは去れ(やれって言ってる!)

You gotta do it
Don’t mess around and quit it

やるしかないんだ
ウジウジせずに終わらせろよ

この冒頭の繰り返しは、典型的なコール&レスポンス形式で進行し、まるでライブで聴衆に対して煽るような儀式の言葉のように響く。「Hit it」というのは演奏の始まりの合図でもあり、ここでは音楽と身体的な行為が重ね合わされている。

You gotta groove on
Gotta keep on dancin’

グルーヴに乗れよ
踊り続けなきゃダメだ

ここでは、“Hit it”という動詞に続く行動として、“dancin’(踊る)”が提起されることで、肉体的快楽と音楽的トランス状態が結びつけられている。踊ることは快楽であり、解放であり、儀式でもある。

Some people are made of lies
Some people are made of steel

嘘でできた人間もいれば
鋼でできた人間もいる

You gotta be who you are
You gotta be real

大事なのは、お前が何者かってこと
本物であれ、偽るな

このセクションでは、突然哲学的なトーンに切り替わり、“真実の自己”を貫くことの重要性が説かれている。表面の陽気さの裏に、“誰もが本物であるべきだ”というFunkadelicの倫理観が強く刻まれている。

4. 歌詞の考察

「Hit It and Quit It」は、Funkadelic流の**“音楽的カタルシス”としての性愛賛歌**であると同時に、存在の一回性や即興性を受け入れるためのマニフェストでもある。

ここで重要なのは、「Hit It」=“行為を起こす”ことと、「Quit It」=“それに執着しない”ことのセットである。これはFunkadelicの思想における行動の自由と放棄の哲学を象徴しており、「やるべきときにやる」「執着せずに次に進む」という、ある種の即興主義的人生観を描いている。

また、ファジー・ハスキンスのボーカルと、バーニー・ウォーレルによる浮遊感あるオルガン、エディ・ヘイゼルのギターによって、この曲は肉体的かつ霊的な領域を同時に揺さぶる構成になっている。これはまさに、Funkadelicが提唱する“教会と宇宙船が融合したような音楽空間”である。

つまりこの曲は、「快楽に忠実であれ」「だが、それに縛られるな」という快楽と悟りの両立を描いており、そのバランス感覚こそが、彼らの音楽を“俗”と“聖”の境界を飛び越えるものにしている。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • “Super Stupid” by Funkadelic
    『Maggot Brain』収録のハードロック寄りトラック。攻撃的かつ中毒性の高いナンバー。

  • “Loose Booty” by Sly & The Family Stone
    リズムとコール&レスポンスによって“儀式化されたダンス”を実現している同系統の楽曲。

  • “Think (About It)” by Lyn Collins
    ジェームス・ブラウン・ファミリーによる、リズムと反復を軸にした“即行動”を促すファンク。

  • “Standing on the Verge of Getting It On” by Funkadelic
    性的エネルギーと精神的高揚が共鳴する、Funkadelic流“交感と爆発”のマスターピース。

6. 即興的生を肯定するファンクの祈り──Hit It, Quit It, Repeat

「Hit It and Quit It」は、Funkadelicの楽曲群の中でも特に身体性と霊性の境界を曖昧にする曲であり、単なる性愛や遊びの歌ではない。それは、**「今という瞬間に生きることの純粋な肯定」**であり、そこには深い仏教的、ジャズ的、ブラックスピリチュアルな哲学が横たわっている。

やって、やめろ。踊って、去れ。愛して、離れろ。
そのすべてが、“流れゆく宇宙の中で一瞬だけ本物になる”ための儀式なのだ。

「Hit It and Quit It」は、即興、解放、真実の自己を讃える、“一夜のファンク的啓示”である。

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