Funkadelic Can You Get to That(1971)楽曲解説

1. 歌詞の概要

「Can You Get to That」は、1971年にリリースされたFunkadelicの3rdアルバム『Maggot Brain』に収録された楽曲であり、ゴスペル、フォーク、ファンク、ソウルの要素が独自に融合した異色のスピリチュアル・ナンバーである。全体のメッセージは、**愛、信頼、因果応報(カルマ)**といった普遍的なテーマを中心に展開されており、遊び心のあるリリックとは裏腹に、きわめて深い人間哲学が織り込まれている。

サウンド面では、ハーモニーを多用したコール&レスポンス、アコースティックギターのストローク、メロディアスなベースラインが特徴で、Funkadelicの他の楽曲に比べて親しみやすく、ポップな印象を残す。しかしその中には、人間の信頼関係や自己責任、精神性といった重層的なメッセージが巧みに組み込まれている。

2. 歌詞のバックグラウンド

「Can You Get to That」は、Funkadelicの前身となるヴォーカルグループ「The Parliaments」が1960年代に培ってきたドゥーワップやゴスペル的な感性をベースにしており、それを当時のサイケデリック・ファンクの文脈で再構築したような楽曲である。

当時のアメリカはベトナム戦争、公民権運動後の混乱、ニクソン政権下の保守回帰など、多くの社会的不安を抱えていた。そうした背景の中で、ジョージ・クリントン率いるFunkadelicは、政治的メッセージや霊的探求をロック/ファンクの形式で提示し続けていたが、「Can You Get to That」はその中でもより身近な“人間関係”のテーマにフォーカスした楽曲である。

また、この楽曲はアルバム『Maggot Brain』の冒頭に配置された表題曲(壮絶なギターインスト)と、極めてコントラストをなす明るさを持っており、深いテーマを軽快なメロディで“説法”のように伝える構成になっている点も注目に値する。

3. 歌詞の抜粋と和訳

引用元:Genius Lyrics – Funkadelic “Can You Get to That”

I once had a life, or rather, life had me
かつては自分の人生があった、いや、人生に“持たれていた”のかもしれない

I was one among many, or at least I seemed to be
たくさんの人の中のひとりで、そう“見えて”いたんだろう

この冒頭のラインでは、アイデンティティと自己認識の揺らぎが静かに語られている。「人生に所有されていた(life had me)」という逆転の言い回しは、社会に流される現代人の状況を風刺的に示唆している。

But I read an old quotation in a book just yesterday
Said “Gonna reap just what you sow, the debts you make you have to pay”

昨日読んだ本にこんな言葉があった
“蒔いた種は自分で刈り取る、借りたものは自分で返すんだ”

この部分は、**カルマ(因果応報)**の教えを直接的に引用しており、人生の責任と選択についてリスナーに問いかける。ファンクでありながら、ここにはほとんど仏教的とも言える教訓が宿っている。

Can you get to that?
君にそれが理解できるか?/そこまで辿り着けるか?

という繰り返しのフレーズは、単なるフックではなく、精神的な問いかけでもある。「そこに辿り着けるか?」というのは、物理的な距離ではなく、内面の成熟や気づきの段階を示している。

4. 歌詞の考察

「Can You Get to That」は、軽快なリズムとコーラスワークの奥に、“生き方”そのものを問う哲学的メッセージが織り込まれた、Funkadelicの中でも最も“民衆的”かつ“スピリチュアル”な作品のひとつである。

冒頭の「I once had a life」という言葉に始まり、「蒔いた種は刈り取らなければならない」という古い引用を経て、「君はそれが理解できるか?」と問いかける構造は、まるでブラック・アメリカンの牧師による説教のようであり、ジョージ・クリントンの思想的バックボーンであるブラック・チャーチの精神とも深くつながっている。

また、“Can you get to that?”という問いは、社会的なものにも拡張できる。たとえば、アメリカの人種差別の歴史、富の不平等、国家が背負った“借金”といった問題にも通じる構造になっており、個人の道徳と社会的責任が重なる名曲でもある。

このようにしてFunkadelicは、単に踊らせるための音楽ではなく、**人々の魂に問いかけ、行動を促す“精神のグルーヴ”**を作り出していた。その最良の例がこの「Can You Get to That」である。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • “Inner City Blues (Make Me Wanna Holler)” by Marvin Gaye
    社会的メッセージをソウルに載せて歌い上げた名作。精神性と都市の現実が交錯する。

  • Move On Up” by Curtis Mayfield
    自己肯定と前向きな姿勢をソウルフルに訴える、ポジティブなアンセム。

  • “Let’s Make Every Moment Count” by The Parliaments
    Funkadelic以前のドゥーワップ時代のジョージ・クリントンによる、より純粋な愛と哲学のうた。

  • “Yes We Can Can” by The Pointer Sisters
    シンプルな繰り返しの中に希望と連帯を込めた、時代を超えるソウル・スタンダード。

6. “蒔いた種は自分で刈り取れ”──軽やかに、だが真剣に生きるためのファンク

「Can You Get to That」は、Funkadelicの楽曲群の中でもひときわキャッチーで親しみやすい作品だが、その中に込められたメッセージは非常に奥深い。「人生は選択の積み重ねであり、その責任を取る覚悟があるか?」という問いは、今を生きる我々にとっても決して他人事ではない。

ジョージ・クリントンは、説教臭くならないように巧妙にユーモアとメロディを仕込んでいる。だからこそ、聴いていて楽しいのに、ふとした瞬間に深く考えさせられる──それがFunkadelicの美学であり、「Can You Get to That」が今なお聴き継がれる理由である。

「Can You Get to That」は、人生の真理をファンクのリズムで説いた、軽快にして重厚な“魂のポップソング”である。

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