
1. 歌詞の概要
「Fuck Apologies.」は、JoJo(ジョジョ)が2016年にリリースしたアルバム『Mad Love.』からの先行シングルであり、Wiz Khalifa(ウィズ・カリファ)をフィーチャーした一曲である。この楽曲は、**「もう謝らない」「自分を偽らない」**という強い意志を掲げた、痛烈かつ解放的な自己肯定のアンセムである。
恋愛関係において、女性が常に「悪者」として謝り役を担ってきたような状況に対して、JoJoはこの曲で明確にノーを突きつける。たとえ恋人に対して気まずさがあっても、感情にブレがあっても、**「私が感じたことに謝る必要なんてない」**という、冷静でかつ感情的な主張が核にある。
その態度は、単なる強がりや開き直りではなく、「謝罪がいつも関係性の修復ではなく、服従として求められてきたこと」への反発と、自分らしさを取り戻すための決意表明に他ならない。
2. 歌詞のバックグラウンド
この楽曲が収録されたアルバム『Mad Love.』は、JoJoにとって約10年ぶりの本格的なスタジオ・アルバムであり、音楽業界との契約問題や長年の沈黙を経ての“復活”という文脈が強く反映されている。
「Fuck Apologies.」というタイトル自体、「自分を抑え続けた過去のJoJo」からの脱却宣言でもあり、彼女のアイデンティティの再構築を象徴する作品である。
また、プロデュースを担当したのはOak Felder(Demi LovatoやAlessia Caraなどを手がける)で、モダンなR&Bとポップを融合した洗練されたトラックが、JoJoの成熟したボーカルと完璧に噛み合っている。
Wiz Khalifaのラップパートも、“軽妙な逃避”ではなく、“感情の棚卸し”として機能しており、全体に漂う「自分に正直でいることの困難と解放」が、より深く感じ取れる構成となっている。
3. 歌詞の抜粋と和訳
この曲は、感情の揺れや失望を経たあとで、もう誰の許しも必要としないという強烈な自己認識を打ち出している。
I’m not perfect, I got baggage / I’m not gonna lie, I’ve been damaged
私は完璧じゃない、いろんな傷を抱えてる / 嘘じゃない、ちゃんと傷ついてきたの
ここでは、弱さを認めつつ、それを恥じることなく**“そのままの私”を肯定する語り口**が際立つ。
And I don’t need to say I’m sorry / For being me
「私らしくいたこと」に、謝る必要なんてないわ
このラインが曲全体の核心。“謝罪”の強制に対する明確な拒絶がここにある。
Fuck apologies / I would say I’m sorry if I really meant it
「ごめんね」なんて言わないよ / 本当にそう思ってたら別だけどね
ここでは“謝ること”の意味を疑い、「言葉だけの謝罪」にどれほど空虚な意味しかないかを暴いている。
Don’t act like you never lied to me / And played those games
あなたも嘘をついたことがあるでしょ / 駆け引きだってしたくせに
相手の非も指摘しながら、「私ばかりが間違ってたわけじゃない」とバランスを取り戻す瞬間がある。
歌詞の全文はこちら:
JoJo – Fuck Apologies. Lyrics | Genius
4. 歌詞の考察
「Fuck Apologies.」は、単なる恋愛ソングを超えて、“謝罪”という行為がしばしば女性に一方的に求められてきた文化的構造への反撃として機能している。
恋愛関係における衝突や気持ちのすれ違いにおいて、JoJoは「それでも私が悪かったことにされる」パターンに強い違和感を覚えている。
そしてこの曲で彼女は、その違和感に言葉を与えた。
この“謝らない”という姿勢は、攻撃ではなく、「自分自身の感情や存在を、他人にとって不都合であっても否定しない」ための自己防衛である。
そのため、「Fuck Apologies.」というタイトルの過激さとは裏腹に、実際のJoJoの歌声やメロディには、迷い、後悔、戸惑い、そして希望が丁寧に織り込まれている。
この曲の感情的クライマックスは、怒りというよりは「もういい」と静かに距離を置くような諦念にも近い。
だがその中には、「だからこそ私は自由だし、自分を見失わない」という芯の強さが感じられる。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Sorry Not Sorry by Demi Lovato
傷ついた過去を乗り越え、自信を取り戻した女性が“謝らない”ことを高らかに宣言する復讐系アンセム。 - IDGAF by Dua Lipa
相手の未練を一蹴し、「もう興味ない」と突き放すクールな失恋ソング。 - So What by P!nk
失恋や別れのあとに、“でも私は私。何も終わらない”という前向きな怒りを歌ったパワーポップ。 - Truth Hurts by Lizzo
恋愛の失敗を笑い飛ばしながら、自己肯定を高らかに歌い上げる強烈な自立ソング。 - Look What You Made Me Do by Taylor Swift
復讐心と自己演出を大胆に組み合わせた、自分を取り戻すためのダーク・ポップ。
6. “ごめんって言わない、それが私の愛し方”
「Fuck Apologies.」は、JoJoが10代の頃から歌い続けてきた“恋と自立のテーマ”に、新たな成熟と怒り、そして再生の色を加えた一曲である。
人はときに、自分の感情や存在そのものを否定されるような恋愛を経験する。
「もっと優しくして」「もっと控えめでいて」「そんなに感情的にならないで」と言われ続ける。
でもJoJoは、そうした恋の中で自分を見失うことに「もう終わりにしよう」と言う。
自分の声を取り戻すことは、ときに謝らないことから始まる。
「ごめんね」と言わなくても、愛は終わらない。
むしろ、“本当に自分を大切にすること”が、新しい愛のはじまりなのかもしれない。
「Fuck Apologies.」は、そんな愛のかたちを教えてくれる、大人のJoJoの本音が刻まれた強く美しい1曲である。
コメント