From the Beginning by Emerson, Lake & Palmer(1972)楽曲解説

1. 歌詞の概要

『From the Beginning』は、Emerson, Lake & Palmer(ELP)のアルバム『Trilogy』(1972年)に収録された楽曲で、バンドの作品の中でも特にメロディアスで感傷的なバラードとして知られています。歌詞は、過去の経験や失われた愛、そして人生における“始まり”と“終わり”についての深い思索を描いています。

曲の中で語られるのは、失恋や誤解の結果として生じた痛みですが、その中でも「始まり」への回帰、あるいは「再生」の希望を感じさせるメッセージが込められています。エモーショナルでありながらも、過剰に暗くなることなく、むしろ静かな美しさと穏やかな希望を持った歌詞が特徴です。

2. 歌詞のバックグラウンド

『From the Beginning』の歌詞は、バンドのギタリスト兼ヴォーカリストであるグレッグ・レイク(Greg Lake)によって書かれました。レイクは、バンドのプログレッシブ・ロック的な複雑さと対照的に、シンプルで感傷的な表現を得意とし、この曲もその彼の特長が色濃く反映された作品です。

歌詞は、過去の出来事や誤解から生じた傷、そしてそれを乗り越えて始める新たな一歩に焦点を当てています。この曲は、音楽的には、ELPが持つクラシック音楽的な要素と、ロックの情熱的な感情表現が融合した一曲であり、プログレッシブ・ロックの中で特にメロディアスでポップな側面を持つ作品です。

3. 歌詞の抜粋と和訳

引用元: Genius

I believe in the morning sun
I believe I’m the chosen one

私は朝日を信じる
私は選ばれし者だと信じている

I believe in the love you gave
I believe in the life I’ve made

私はあなたがくれた愛を信じる
私は自分が作り上げた人生を信じる

I believe that the world is round
I believe in the sky and the sea

私は世界が丸いことを信じる
空と海を信じる

From the beginning
最初からずっとそう信じてきたんだ

この歌詞は、最も単純でありながら、深い思索を感じさせる言葉が並べられています。信じること、愛すること、そしてその中で見つけた人生の意味や真実を、非常に直感的に表現しています。信じることへの確信と、その信念を支えるものとして自然界や愛が象徴的に描かれており、歌詞に込められた哲学的なメッセージは普遍的で、深く心に響きます。

4. 歌詞の考察

『From the Beginning』の歌詞は、ある種の「帰結」を描きつつも、そこに至る過程における痛みや成長を通じて、人生を受け入れる姿勢を示していると言えます。歌詞中で語られる「信じること」は、単なる希望の表明にとどまらず、過去の傷や困難を乗り越えて、未来に向かって一歩を踏み出す決意を意味しています。

特に「I believe in the love you gave(あなたがくれた愛を信じる)」というフレーズには、失われたものや過去の傷を乗り越えて、前に進むための力を「愛」に求める力強さが感じられます。この歌詞は、失恋や人生の挫折に直面した際に必要な“再生”を描いているとも言えるでしょう。

また、「From the beginning(最初から)」というフレーズが繰り返されることで、過去から現在、そして未来へと続く時間の流れと、人間の成長や変化を象徴的に表しています。この曲が持つ“始まり”というテーマは、何度もやり直すことができる希望のメッセージとして、聴き手に力を与えるのです。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • The Fool on the Hill by The Beatles
    過去と未来、信じる力をテーマにした、穏やかな哲学的な歌詞が印象的な曲。

  • Nights in White Satin by The Moody Blues
    人生や愛、時間の流れをテーマにした美しいバラードで、深い感情が込められた歌詞。

  • The End by The Doors
    終わりと始まり、そして人生の深層を見つめる詩的なロックバラード。

  • A Whiter Shade of Pale by Procol Harum
    美しくメランコリックなバラードで、人生の儚さを描いた歌詞が印象的。

  • Wild World by Cat Stevens
    人生の選択とその結果、そして愛と自由をテーマにした心に響く曲。

6. シンプルな中に込められた深い哲学——「始まり」と「信じる力」

『From the Beginning』は、ELPのディスコグラフィーの中でも最もシンプルでありながら深い哲学的なテーマを持つ楽曲です。その歌詞は、一見すると非常にシンプルで直感的なものに見えるが、実際には人生の試練や成長を支える力としての「信じる力」を強調しています。

歌詞の中で描かれる「信じること」は、過去の痛みを乗り越え、未来を信じて進むための力です。それは過去の過ちや失敗を受け入れた上で、前を向いて歩き出すための強さを象徴しています。過剰なドラマや誇張はなく、むしろ静かで深い確信をもって人生に対する肯定的なアプローチを提示している点が、この曲の魅力です。

『From the Beginning』は、音楽としてもシンプルで美しく、ELPのプログレッシブ・ロックの中でも一際異なる存在感を放つ楽曲です。そのメロディと歌詞が織り成す調和が、聴く者に温かい感動をもたらします。人生の始まりや再生をテーマにしたこの歌は、時を超えて多くのリスナーの心に響き続けています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました