発売日: 1991年6月18日
ジャンル: ハードロック
1991年にリリースされたFor Unlawful Carnal Knowledgeは、Van Halenにとって9枚目のスタジオアルバムであり、サミー・ヘイガーをボーカルに迎えた3枚目の作品だ。タイトルは一見挑発的に見えるが、実は「F.U.C.K.」という頭字語に由来するウィットの効いた表現だ。アルバムはTed Templemanに代わり、Andy Johnsとエディ・ヴァン・ヘイレン自身がプロデュースに深く関わっている。
このアルバムは、商業的成功を収めただけでなく、第34回グラミー賞で「最優秀ハードロック・パフォーマンス賞」を受賞するなど、高い評価を受けた。サウンド面では、エディがシンセサイザーを抑え、ギターに回帰する形で、力強いロックサウンドを追求した点が特筆される。全体的に、よりヘビーで生々しいサウンドが特徴的であり、社会問題や個人的なテーマに切り込んだ歌詞も含まれる。タイトル通りの「肉体的」かつ「知的」なエネルギーが感じられるアルバムだ。
トラック解説
1. Poundcake
ドリル音を使ったギターイントロが非常に印象的なアルバムオープナー。エディのギターワークはここでも健在で、力強いリフとソロが曲を引き締めている。歌詞は、ロックの典型とも言えるセクシュアルなテーマを扱いながらも、遊び心たっぷりのアプローチが感じられる。
2. Judgment Day
重厚なリフが全編を支配するアグレッシブな楽曲。アレックス・ヴァン・ヘイレンのパワフルなドラミングとサミーの力強いボーカルが融合し、エネルギーが爆発する。歌詞には、逆境に立ち向かう姿勢と不屈の精神が描かれており、アルバムの中でも特にヘビーなトラックだ。
3. Spanked
ファンキーなギターリフが特徴的な一曲。タイトルの通り、歌詞は大胆でユーモラスなテーマを扱っている。エディのスライドギターの技巧が楽曲に個性を与え、ブルージーな要素が際立つ。
4. Runaround
アルバム中でも特にキャッチーでポップなロックナンバー。エディのギターとサミーのヴォーカルが軽快なリズムの上で絶妙に絡み合う。「Why you keep giving me the runaround」という歌詞は、複雑な関係を描きながらも、リスナーを楽しませる明るい曲調が印象的だ。
5. Pleasure Dome
プログレッシブなアプローチが感じられる一曲。複雑なリズム構成と緊張感のあるギターリフが楽曲を支配しており、アルバムの中で最も実験的な作品と言える。歌詞は自己探求や精神的な旅をテーマにしており、深みのある内容が印象に残る。
6. In ’n’ Out
重厚なギターリフとファンキーなリズムセクションが特徴的。タイトルから想像できるように、軽妙な言葉遊びと、物質主義に対する批判的な視点が歌詞に込められている。エディのギターソロはここでも絶品。
7. Man on a Mission
シンプルでストレートなハードロックナンバー。サミーの情熱的なボーカルと、アレックスのタイトなドラミングが曲を力強く前進させる。歌詞には、自分の目標に向かって突き進む決意が込められている。
8. The Dream Is Over
アルバムの中で最も社会的なテーマを扱った一曲。歌詞には、理想が崩れ去る現実への痛烈な批判が込められている。エディのギターは鋭く、楽曲全体に張り詰めた緊張感を与えている。
9. Right Now
本作の中でも特に有名な楽曲で、バンドの新たな方向性を象徴するナンバー。ピアノリフを中心に展開される構成は、エディの作曲能力の高さを示している。「Right now, it’s your tomorrow」というメッセージは、聴く者に行動を促す力強い内容だ。この曲は1992年のMTVミュージックビデオアワードでも高く評価された。
10. 316
エディの息子ウォルフガング・ヴァン・ヘイレンに捧げられた、短く感動的なインストゥルメンタル。アコースティックギターの優しい旋律が、アルバムの中でひとときの静寂を提供する。
11. Top of the World
アルバムを締めくくる陽気でポジティブな楽曲。エディのリフは「Jump」を彷彿とさせる明るさがあり、アルバム全体の締めとしてふさわしい。歌詞は達成感と喜びに満ちており、リスナーを高揚させる。
アルバム総評
For Unlawful Carnal Knowledgeは、Van Halenが従来のロックサウンドを維持しながらも、新たな挑戦を試みたアルバムである。エディのギターが全面的に活躍し、アレックスのドラミングやマイケル・アンソニーのベースラインも全体の厚みを増している。歌詞のテーマは個人的なものから社会的なものまで幅広く、音楽的にも多彩なアプローチが感じられる。「Right Now」や「Poundcake」などのハイライト曲を含む本作は、バンドの進化を感じさせる一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Metallica – The Black Album
同時期にリリースされ、重厚でメロディアスなサウンドが特徴。For Unlawful Carnal Knowledgeのファンにも刺さるはず。
Extreme – Pornograffitti
ファンキーなギターワークと強いメロディラインが、Van Halenのファンに響く作品。
Bon Jovi – Keep the Faith
ポップとハードロックを融合した作品で、歌詞にも社会的なテーマが取り入れられている。
Aerosmith – Pump
キャッチーなメロディと重厚なサウンドが特徴で、Van Halenのファンにもおすすめ。
Def Leppard – Adrenalize
80年代後半から90年代初頭のロックを象徴する作品で、ポップな要素とハードなリフが共通点を持つ。
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