
発売日: 2022年4月8日
ジャンル: インディー・フォーク、オルタナティブ・ポップ、シンガーソングライター
フォークを超えたエモーショナルな進化、映画のような世界観を持つ傑作
Lizzy McAlpineの2ndアルバムFive Seconds Flatは、彼女のソングライターとしての深化を見せる作品であり、前作Give Me a Minute(2020年)のフォーク中心のサウンドから大きく進化し、オルタナティブ・ポップやインディー・ロックの要素を取り入れた意欲作となっている。
本作では、アルバム全体に「失恋と喪失」をテーマとしたストーリーが流れており、楽曲ごとに異なる感情の断片が巧みに表現されている。Lizzyの透明感のあるボーカルと緻密なプロダクション、詩的な歌詞が組み合わさり、まるで短編映画のような雰囲気を持つ作品に仕上がっている。また、「ceilings」や「all my ghosts」など、リスナーの心に深く響く楽曲が多く、アルバム全体を通して強いストーリーテリング性が感じられる。
全曲レビュー
- doomsday
- 劇的なストリングスとエモーショナルなボーカルが印象的なオープニング。
- 失恋を死になぞらえたメタファーが巧みに使われており、アルバム全体のトーンを決定づける一曲。
- an ego thing
- ジャズとオルタナティブ・ポップの要素を持つミッドテンポの楽曲。
- 感情の抑揚が見事に表現され、Lizzyのソングライティングの進化を感じさせる。
- erase me (feat. Jacob Collier)
- ジェイコブ・コリアーとのコラボによる実験的なサウンド。
- 切ないメロディと複雑なコーラスワークが、楽曲に独特の深みを加えている。
- called you again
- 軽快なアコースティック・ポップにのせて、未練を歌うリアルな歌詞が印象的。
- 疎遠になった相手との再会を願う気持ちが、等身大の言葉で綴られている。
- all my ghosts
- アルバムのハイライトのひとつ。ノスタルジックなメロディとダイナミックなアレンジが特徴的。
- 過去の恋愛の影を抱えながらも、前に進もうとする感情を描いている。
- reckless driving (feat. Ben Kessler)
- デュエット形式のバラードで、恋愛の衝動性と危うさを表現。
- 静かなイントロから、終盤に向けて感情が爆発する展開が見事。
- ceilings
- Lizzyの代表曲のひとつとなった、幻想的な美しさを持つ楽曲。
- シンプルなギターと淡々としたボーカルが、映画のワンシーンのような情景を描き出す。
- what a shame
- ビートの効いたオルタナティブ・ポップ。
- 皮肉交じりの歌詞と、軽快なメロディの対比がユニークな楽曲。
- firearm
- ミニマルなアレンジとエモーショナルな歌詞が際立つ一曲。
- 静かに進行するが、後半に向けてドラマティックな展開を見せる。
- hate to be lame (feat. FINNEAS)
- FINNEASとのデュエットで、緻密なプロダクションが光る楽曲。
- 過去の決断に対する後悔と、自己嫌悪を描いたリアルな歌詞が特徴的。
- nobody likes a secret
- アコースティックなサウンドが主体の、シンプルながらも奥深い楽曲。
- 隠された真実がもたらす痛みを、穏やかなメロディで表現。
- chemtrails
- 夢幻的なシンセと淡々としたボーカルが、独特の雰囲気を生み出している。
- リリカルな世界観が際立つトラック。
- orange show speedway
- アルバムを締めくくる楽曲で、軽やかなリズムと希望に満ちたメロディが印象的。
- 失恋の傷を乗り越え、新たなスタートを切る感覚を感じさせる。
総評
Five Seconds Flatは、Lizzy McAlpineがフォークシンガーとしての枠を超え、オルタナティブ・ポップやインディーロックの要素を取り入れた意欲作である。
本作の最大の特徴は、その映画的なストーリーテリングとジャンルの多様性にある。単なるアコースティック・アルバムではなく、シンセやビート、ストリングスを効果的に使い、楽曲ごとに異なる感情や情景を描き出している。特に「ceilings」や「all my ghosts」のような楽曲は、リスナーが自身の経験と重ね合わせやすく、強い共感を呼ぶ。
また、「hate to be lame (feat. FINNEAS)」や「erase me (feat. Jacob Collier)」といった楽曲では、プロデュース面でも実験的な試みがなされており、Lizzyの音楽的な幅の広さが感じられる。
前作Give Me a Minuteのシンプルなフォークサウンドを好んだリスナーにとっては、本作のオルタナティブ寄りのプロダクションに驚くかもしれないが、その変化こそがLizzyの進化の証であり、より広いリスナー層に響く作品となっている。
おすすめアルバム
- Phoebe Bridgers – Punisher (2020)
- 夢幻的なサウンドと詩的な歌詞が魅力的で、Lizzyの新しいスタイルと共鳴する作品。
- Clairo – Sling (2021)
- フォークとオルタナティブの要素が融合したアルバム。シンプルながらも深みのある楽曲が特徴。
- FINNEAS – Optimist (2021)
- 「hate to be lame」に参加したFINNEASのアルバムで、リリカルで洗練されたポップサウンドが魅力。
- Gracie Abrams – Good Riddance (2023)
- 静かで感情的なポップサウンドが特徴で、Lizzyの作風に近い。
- Noah Kahan – Stick Season (2022)
- インディー・フォークとポップのバランスが絶妙な作品で、Lizzyのファンには特におすすめ。
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- インディー・フォークとポップのバランスが絶妙な作品で、Lizzyのファンには特におすすめ。
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