発売日: 1966年7月18日
ジャンル: サイケデリック・ロック, フォーク・ロック
『Fifth Dimension』は、The Byrdsが1966年にリリースした3枚目のスタジオアルバムであり、フォーク・ロックからサイケデリック・ロックへの大胆な進化を示した作品だ。ボブ・ディランの影響が色濃かった前2作から離れ、The Byrdsは自らの音楽的アイデンティティをさらに深く探求し、12弦ギターによるサイケデリックなサウンドと複雑なリズムを取り入れた。ジーン・クラークがバンドを脱退した後、ロジャー・マッギンがバンドのサウンドをリードし、アルバムの実験的な側面が大きく前面に押し出されている。
サイケデリックな要素とフォーク・ロックの美しいメロディが融合したこのアルバムは、ロックシーンにおける新しいムーブメントを先導する作品となった。特に、アヴァンギャルドな楽曲「Eight Miles High」は、サイケデリック・ロックの名曲として今も語り継がれており、The Byrdsの革新性と音楽的冒険心を象徴している。歌詞は現実と夢、精神的な高揚感といったテーマに焦点を当て、時代の空気を色濃く反映している。
それでは、『Fifth Dimension』のトラックを順に見ていこう。
1. 5D (Fifth Dimension)
アルバムのタイトル曲であるこの曲は、ロジャー・マッギンが宇宙や意識の拡大といった抽象的なテーマを探求した楽曲だ。12弦ギターのキラキラしたサウンドとサイケデリックなアレンジが特徴で、当時のロックシーンの最前線を走っていた。歌詞には、物理的な世界を超えた次元を探索しようとする哲学的な視点が描かれている。
2. Wild Mountain Thyme
伝統的なスコットランドのフォークソングをカバーしたこのトラックは、アルバムの中でもフォーク的な要素が色濃く残る一曲だ。The Byrdsの美しいハーモニーとアコースティックギターが曲全体を彩り、アルバム全体のサイケデリックなサウンドの中に、一瞬の静けさと牧歌的な雰囲気をもたらしている。
3. Mr. Spaceman
この曲は、ユーモラスな歌詞で宇宙人との出会いを描いたポップなナンバー。軽快なリズムとシンプルなメロディが特徴で、The Byrdsの遊び心が感じられる。ロジャー・マッギンの12弦ギターがキラキラと輝き、サイケデリックなテーマをポップソングとしてまとめた一曲だ。
4. I See You
「I See You」は、ジャズとロックが融合したような複雑なリズムとサイケデリックなギターが特徴的なトラック。歌詞には、他者とのつながりや内面の発見が描かれており、サイケデリックな旅の一部としてアルバムのテーマに織り込まれている。実験的なサウンドがアルバム全体の革新性を象徴している一曲だ。
5. What’s Happening?!?!
デヴィッド・クロスビーによるこの楽曲は、哲学的な問いかけと共に、サイケデリックな音の波が押し寄せるような構成が特徴だ。ギターリフとクロスビーの感情豊かなボーカルが一体となり、内面的な探求をテーマにした歌詞が心に残る。ジャズ的な要素も加わり、複雑で独特なトラックに仕上がっている。
6. I Come and Stand at Every Door
トルコの詩人ナズム・ヒクメットの詩を基にしたこの曲は、広島の原爆で命を失った子供の視点から語られる反戦歌だ。The Byrdsはフォーク・ロックスタイルでこのメッセージ性の強い楽曲をアレンジしており、シンプルなメロディと静かなアコースティックサウンドが深い感動を呼び起こす。
7. Eight Miles High
アルバムのハイライトであり、サイケデリック・ロックの金字塔とも言えるこのトラックは、サウンドとリズムの両方で革新をもたらした。12弦ギターの斬新なフレーズは、コルトレーンのジャズから影響を受けており、現実を超えた飛翔感を象徴している。歌詞は曖昧さと抽象性を持ちながらも、精神的な高揚感を描いており、この時代の新しい音楽的な可能性を切り開いた。
8. Hey Joe (Where You Gonna Go)
アメリカのフォークソング「Hey Joe」を、The Byrdsがロック的な解釈でカバーしたトラックだ。デヴィッド・クロスビーがリードボーカルを担当し、シンプルながらも重厚なギターサウンドが曲を引き立てている。後に多くのロックバンドにカバーされることとなるこの楽曲の中でも、The Byrds版は独自のサウンドを持っている。
9. Captain Soul
インストゥルメンタルのこの曲は、ソウルやR&Bの影響を感じさせるリズムとベースラインが印象的だ。リラックスしたジャムセッションのような雰囲気で、バンドの演奏力と音楽的な多様性を楽しめる一曲となっている。
10. John Riley
アメリカの伝統的なバラードを基にしたこの曲は、フォーク・ロック的なアプローチでアレンジされている。The Byrdsの美しいハーモニーが際立ち、物語性のある歌詞とともに、感情豊かに展開する。サイケデリックな要素とは対照的に、アルバム全体に落ち着いたフォーク的な瞬間を提供している。
11. 2-4-2 Fox Trot (The Lear Jet Song)
アルバムの最後を飾るこの曲は、航空機にインスパイアされたトラックで、飛行機のエンジン音を取り入れたユニークなサウンドが特徴。軽快なリズムとポップなメロディが組み合わさり、アルバム全体を締めくくるのにふさわしい楽曲だ。The Byrdsの遊び心が感じられる一曲。
アルバム総評
『Fifth Dimension』は、The Byrdsがフォーク・ロックからサイケデリック・ロックへと進化を遂げた革新的なアルバムであり、60年代後半のロックシーンにおける重要な作品の一つだ。特に「Eight Miles High」は、サイケデリック・ロックの代表曲として今もなお高く評価されており、バンドの音楽的な冒険心と創造性を象徴している。アルバム全体に流れるサイケデリックな要素は、ロックの新しい時代を切り開き、The Byrdsの音楽的幅広さと革新性を示している。12弦ギターの煌めきと美しいハーモニーが引き続きバンドの魅力となっており、彼らの音楽的進化を存分に楽しめる一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- 『Revolver』 by The Beatles
サイケデリック・ロックの革新を代表するアルバムで、The Byrdsの音楽的進化に共鳴する実験的なサウンドが詰まっている。 - 『After Bathing at Baxter’s』 by Jefferson Airplane
サイケデリック・ロックの名盤で、The Byrdsの実験的なサウンドを好むリスナーにおすすめ。 - 『Blonde on Blonde』 by Bob Dylan
フォーク・ロックとサイケデリックの要素を持つボブ・ディランの代表作で、The Byrdsのサウンドに通じる自由な表現が魅力。 - 『Are You Experienced』 by The Jimi Hendrix Experience
革新的なギターワークとサイケデリックなサウンドが特徴のデビュー作。The Byrdsの「Eight Miles High」を楽しむリスナーに共感を呼ぶ。 - 『Surrealistic Pillow』 by Jefferson Airplane
サンフランシスコのサイケデリック・シーンを象徴するアルバムで、The Byrdsのサウンドに共通するフォーク・ロックの要素も感じられる。
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