
発売日: 1985年4月15日
ジャンル: スラッシュメタル
Overkillの原点——ニュージャージーから生まれたスラッシュメタルの爆発
1985年にリリースされたFeel the Fireは、Overkillのデビューアルバムであり、ニュージャージー発のスラッシュメタルバンドとしての存在感を確立した重要な作品である。本作は、当時のスラッシュメタルの黎明期に登場し、MetallicaやExodus、Anthraxといった西海岸/東海岸のスラッシュメタルシーンに対抗する、Overkill独自のスピードとエネルギーを提示したアルバムとなっている。
特に、ボビー・”ブリッツ”・エルズワースの甲高いシャウトと、ボビー・ガスタフソンの鋭いギターリフが特徴で、クラシックなヘヴィメタルの要素を残しながらも、アグレッシブなスラッシュサウンドへと進化させた作品として評価される。
本作には、Overkillの初期代表曲である「Rotten to the Core」や「Feel the Fire」などが収録されており、現在もライブでプレイされる名曲が揃っている。荒削りながらも、純粋なスラッシュメタルのパワーが詰まったデビュー作であり、今なお多くのファンに支持され続けている。
全曲レビュー
1. Raise the Dead
不気味なイントロから一気にスピードアップするオープニングトラック。クラシックなヘヴィメタルの影響が強く、Judas PriestやIron Maidenを彷彿とさせるギターのツインリードが印象的。Overkillの持つダークな雰囲気とスラッシュメタルのスピードが融合した楽曲。
2. Rotten to the Core
Overkillの代表曲の一つであり、「Rotten to the Core!」というシャウトがライブではおなじみの名フレーズ。スラッシュメタルの疾走感と、リフのキャッチーさが絶妙に組み合わさった楽曲で、バンドのアイデンティティを確立したナンバー。
3. There’s No Tomorrow
6分以上にわたる楽曲で、Overkillの持つドラマティックな要素が感じられる。イントロのクリーンギターから始まり、徐々にテンポアップしていく展開は、Metallicaの「Fade to Black」やMegadethの「My Last Words」に通じるエピックな構成。
4. Second Son
クラシックなヘヴィメタルとスラッシュメタルの中間のような楽曲。リフのリズムがユニークで、Overkillの持つ独自のグルーヴが現れ始めている。
5. Hammerhead
スピード感溢れるスラッシュメタルのナンバー。とにかく疾走感が強く、ギターの刻みが非常に鋭い。ヴォーカルのハイトーンも相まって、アルバムの中でも特にエネルギッシュな曲。
6. Feel the Fire
アルバムタイトル曲であり、最もダークでエピックな楽曲。スローテンポのイントロから徐々に展開し、スラッシュメタルならではの疾走感へとつながる。歌詞の内容も炎や地獄をテーマにしており、Overkillの初期のダークなイメージを決定づけた楽曲。
7. Blood and Iron
ヘヴィなリフが印象的なナンバー。リズムの変化が多く、Overkillのテクニカルな側面も垣間見える。ギターソロの切れ味も抜群で、アルバムの中でもハードな楽曲の一つ。
8. Kill at Command
スラッシュメタルらしい速さと攻撃性を全面に押し出した楽曲。短いながらも、Overkillのスピードと破壊力が詰まったトラックであり、アグレッシブなギターリフが炸裂する。
9. Overkill
バンド名を冠した楽曲であり、Motörheadの「Overkill」にインスパイアされた曲。ギターリフの切れ味が鋭く、スピードとパワーのバランスが絶妙なナンバー。Overkillのライブでは欠かせない楽曲の一つ。
総評
Feel the Fireは、Overkillがスラッシュメタルのシーンに登場したことを強烈に印象付けたデビューアルバムであり、後の作品に続くバンドのスタイルを確立した重要な作品である。荒削りながらも、スラッシュメタル特有のスピードと攻撃性、そしてクラシックメタルのメロディアスな要素が絶妙に融合している。
特に「Rotten to the Core」や「Feel the Fire」などの楽曲は、現在もライブで演奏されるOverkillの代表曲となっており、本作がいかに重要な作品であるかを物語っている。また、ボビー・”ブリッツ”・エルズワースの独特なヴォーカルスタイルや、ボビー・ガスタフソンのギターリフのキレの良さが際立ち、Overkillの持つ個性がしっかりと表現されている。
1985年というスラッシュメタル黎明期において、MetallicaやSlayer、Megadethといったバンドと並び、Overkillがシーンの一翼を担う存在であることを証明したアルバムであり、今なおスラッシュメタルのクラシックとして語り継がれるべき作品である。
おすすめアルバム
- Overkill – Taking Over (1987)
- Feel the Fireの延長線上にある作品で、よりヘヴィで洗練されたサウンドを展開。
- Metallica – Kill ‘Em All (1983)
- スラッシュメタルの原点とも言える作品。荒々しいスピードとエネルギーが共通点。
- Exodus – Bonded by Blood (1985)
- 同年にリリースされた西海岸スラッシュの名盤。Overkillとは異なるアプローチだが、破壊力は同等。
- Anthrax – Spreading the Disease (1985)
- ニューヨーク発のスラッシュメタル。Overkillと同じ東海岸スラッシュの系譜にある作品。
- Testament – The Legacy (1987)
- 80年代後半のスラッシュメタルの名盤。Overkillよりもメロディックなアプローチが特徴。
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