
1. 歌詞の概要
「Every Other Time」は、LFO(Lyte Funkie Ones)が2001年にリリースしたセカンドアルバム『Life Is Good』からの先行シングルであり、彼らの持つユーモアとメロウな感性のバランスが巧みに表れた一曲である。
この楽曲は、恋愛関係の“ズレ”を描いたポップ・ロック調のミディアムナンバーで、タイトルにある「Every Other Time(いつもじゃないけど時々は)」というフレーズがすべてを象徴している。つまり、“いつもは上手くいかないけど、時々だけうまくいく”という、どうしようもないけど愛おしい恋のあり方だ。
主人公は、ある女性との複雑な関係の中で心を揺らしながらも、彼女への未練と惹かれる気持ちを捨てきれずにいる。関係が破綻しているようで、どこか希望を捨てきれない。まるで繰り返す波のように、愛と困惑が交互に訪れるような情景が、軽快なギターサウンドと共に描かれていく。
2. 歌詞のバックグラウンド
この楽曲は、デビュー作『LFO』(1999年)の成功によってアイドル的な人気を得たLFOが、より成熟した音楽性と内省的なテーマに挑戦した楽曲の一つである。
2001年にリリースされたアルバム『Life Is Good』は、前作よりもポップ・ロック寄りのプロダクションが目立ち、その中でも「Every Other Time」は最も耳に残るポップ・アンセムのひとつとなった。特にメロディと歌詞の“すれ違い感”が絶妙に融合しており、ポップスとしての即効性と、しんみりとした余韻の両方を持ち合わせている。
興味深いのは、この曲が当初のLFOのイメージである“軽薄なサマーポップ”とは一線を画している点である。ここには、恋愛の複雑さや葛藤を真摯に描こうとする姿勢があり、グループとしての成長も感じられる。
3. 歌詞の抜粋と和訳
She stops by wearing nothing but a smile
彼女は微笑みだけを身にまとってやって来たIt’s such a sight to see
まるで夢のような光景だI can’t believe it
信じられないくらいEvery other time
でも、それは「いつも」じゃない、「時々」だけなんだBut I can’t let go
なのに僕は、彼女を手放せない
引用元:Genius Lyrics – LFO / Every Other Time
4. 歌詞の考察
この曲の核心は、“期待と失望の反復”にある。恋愛関係というのは、必ずしも常に安定しているわけではなく、ときには「最高に幸せな瞬間」と「最悪のすれ違い」が交互にやってくる。その“あいまいな揺れ”を、「Every other time」という言葉で巧みに表現している。
「Every time she calls I tell her I’m not home(彼女から電話がかかってきても、僕は家にいないって言うんだ)」というフレーズには、意図的な拒絶のようにも見える心の壁がある。しかしその後に彼女が現れると、「僕はまた彼女に夢中になってしまう」というループに陥っていく。この“逃げたくても逃げられない”関係は、若者特有の未熟さと情熱の両方を映し出しており、多くのリスナーの共感を呼ぶだろう。
また、曲全体の雰囲気はどこか明るく、ポップで耳に残るサウンドが逆に“悲しみのマスキング”として機能しているのも印象的だ。これは「ポップソングであるからこそ語れる悲哀」の好例とも言える。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- “Stacy’s Mom” by Fountains of Wayne
ポップなメロディに恋の葛藤を織り込んだ2000年代の名曲。 - “Why Don’t You & I” by Santana ft. Alex Band
愛してるのにすれ違ってしまう、そんな想いを軽快に歌った一曲。 - “She’s in Love With the Boy” by Trisha Yearwood
反対される恋と、周囲との距離を描いたストーリーソング。 - “You and Me” by Lifehouse
愛のシンプルさと深さをしっとりと歌い上げたラブバラード。 - “Slide” by Goo Goo Dolls
恋愛の自由と選択を問う、90年代ロックの代表曲。
6. 特筆すべき事項:LFOの“再定義”の試み
「Every Other Time」は、LFOがただの“サマーポップ・ワンヒットワンダー”ではないことを証明しようとした試みの象徴とも言える。
彼らはこの曲で、ユーモアや軽快さを保ちながらも、より内省的でリアルな恋愛模様を描き出した。結果的に、商業的な成功は「Summer Girls」ほどには至らなかったが、音楽的にはむしろ洗練されており、グループとしての成熟を感じさせる1曲となっている。
2000年代初頭のポップ・ロックとR&Bの境界線上にあったこの楽曲は、今日聴き直しても古びることのない魅力を放っている。軽やかなメロディの裏に潜む“切実な想い”は、いつの時代も変わらない恋の形のひとつなのかもしれない。
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