発売日: 2019年9月20日
ジャンル: アンビエント、シンセウェーブ、ニューエイジ
DSVII（Digital Shades Vol. II）は、フランスのアーティストM83によるアンビエントアルバムで、彼のプロジェクト「Digital Shades」の第2作目としてリリースされた。本作は、1980年代のレトロなビデオゲームやサイファイ映画、ニューエイジミュージックへの愛が込められた作品であり、アンソニー・ゴンザレスが1970年代末から1980年代のアナログサウンドを蘇らせるためにシンセサイザーを駆使して制作したアルバムである。DSVIIは、これまでのアルバムのようなポップサウンドからは一線を画し、シネマティックでノスタルジックな音楽体験が楽しめるインストゥルメンタル作品となっている。
アルバム全体は、ゴンザレスが南フランスの田舎でインスピレーションを得て制作され、ビデオゲームのサウンドトラックやSF映画の影響が色濃く表れている。「Lunar Son」や「A Bit of Sweetness」といった楽曲は、未来と過去が交錯するようなサウンドで、聴く者を幻想的な旅へと誘う。シンセサイザーの柔らかい音色とシンプルなメロディが心地よく、まるでノスタルジックなゲームの世界に入り込んだかのような感覚が味わえる。DSVIIは、M83が培ってきたシンセサウンドの深みとアンビエントミュージックへの探求心が結実した作品であり、彼のアーティスティックな一面が存分に表れている。
トラックごとの解説
1. Hell Riders
アルバムの幕開けを飾るトラックで、神秘的なシンセサウンドが印象的。冒険への期待感が高まり、アルバム全体のテーマであるレトロなサウンドに引き込まれる。
2. A Bit of Sweetness
シンセウェーブの柔らかいメロディが漂うトラックで、タイトル通りの甘美な響きが特徴。シンプルながらも心に残るメロディがノスタルジックな感情を引き起こす。
3. Goodbye Captain Lee
壮大でエモーショナルなサウンドスケープが広がる一曲。SF映画のような雰囲気が漂い、別れや旅立ちを感じさせる。
4. Colonies
ゆったりとしたテンポで広がりのあるサウンドが特徴的。まるで異星に降り立ったかのような、異世界的なムードが漂っている。
5. Meet the Friends
優しいメロディが心地よいトラックで、出会いや友情をテーマにしたような穏やかで温かい雰囲気が感じられる。ビデオゲームのカットシーンのようなシンプルな構成。
6. Feelings
感情的でメランコリックな楽曲で、静かなシンセが美しいハーモニーを奏でる。夢と現実の狭間を彷徨うような雰囲気が魅力。
7. A Word of Wisdom
短いインストゥルメンタルで、アンビエントな音の断片が重なり合う。謎めいたトーンが特徴で、次の冒険への予感を抱かせる。
8. Lune de fiel
フランス語で「蜂蜜の月」を意味するタイトルが付けられたトラックで、幻想的でロマンチックなサウンドが特徴。深い夜の美しさが描かれている。
9. Jeux d’enfants
子供の遊びを思わせる可愛らしいメロディが印象的なトラック。無邪気でピュアな響きが、懐かしい記憶を呼び起こす。
10. A Taste of the Dusk
夕暮れの静けさと温かさが感じられる曲で、ゆったりとしたシンセのメロディが心地よい。日が沈む時間帯のノスタルジーが表現されている。
11. Lunar Son
宇宙的な広がりを感じさせるトラックで、壮大なシンセサウンドが特徴的。月の孤独と美しさが詩情豊かに表現されている。
12. Oh Yes You’re There, Everyday
温かく優しい響きが特徴のトラックで、繰り返されるメロディが日常の安らぎを表現している。平穏で癒しのある音楽が心を包む。
13. Mirage
静かでアンビエントなサウンドが印象的な楽曲で、タイトル通り蜃気楼のような淡い幻想を感じさせる。幻想的で儚い一曲。
14. Taifun Glory
壮大で力強いサウンドが特徴のトラックで、自然の力や神秘性がテーマのように感じられる。ダイナミックな展開が魅力。
15. Temple of Sorrow
アルバムの最後を締めくくる神秘的な楽曲で、シンセの響きが深い余韻を残す。静けさと厳かさが漂い、アルバム全体の締めくくりにふさわしいフィナーレ。
アルバム総評
DSVIIは、M83が1980年代のアンビエントやニューエイジ、ビデオゲームのサウンドからインスパイアを受け、ノスタルジックでシネマティックな音楽世界を構築した作品である。アンソニー・ゴンザレスは、本作でシンセサイザーを駆使して温かくも幻想的なサウンドスケープを作り上げ、聴く者を時間と空間を超えた冒険へと誘う。レトロでありながらも新鮮で、彼の音楽的ルーツへの回帰が感じられる本作は、リスナーに安らぎと幻想を与える。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Music for Airports by Brian Eno
アンビエントミュージックのパイオニアで、静けさと癒しのサウンドが特徴。DSVIIの穏やかなアンビエントサウンドが好きな人におすすめ。
Selected Ambient Works 85-92 by Aphex Twin
ミニマルなアンビエントとエレクトロニカの融合で、幻想的なサウンドが特徴。M83のレトロでノスタルジックなサウンドが好きな人にぴったり。
Stranger Things, Vol. 1 (Soundtrack) by Kyle Dixon & Michael Stein
80年代のシンセサウンドに影響を受けた作品で、SFとノスタルジーが融合。DSVIIと共通するレトロなシンセサウンドが楽しめる。
Oxigène by Jean-Michel Jarre
シンセサイザーの可能性を追求した名作で、スペーシーなサウンドが印象的。M83のアンビエントで宇宙的なトーンが好きな人におすすめ。
Ghosts of the Great Highway by Sun Kil Moon
感情的で叙情的な音楽が特徴のフォーク/アンビエント作品で、メランコリックなサウンドが心に響く。ノスタルジーを感じたい人にぴったり。
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