
1. 歌詞の概要
「Creepin’ Up the Backstairs」は、The Fratellisが2006年に発表したデビュー・アルバム『Costello Music』に収録されている楽曲であり、シングルとしてもリリースされた初期代表曲のひとつである。歌詞は、そのタイトル通り「裏階段をこっそり上がる」というイメージを軸に、夜の秘密めいた出来事を描いている。恋人の家に忍び込むようなスリル、背徳感、そしてユーモラスな遊び心が入り混じった内容であり、ストレートなラブソングではなく、どこか悪戯っぽい物語性を持っている。歌詞は断片的でスラングも多いが、その分イメージの広がりを聴き手に委ねており、軽快なサウンドと共に「夜の冒険」を描き出している。
2. 歌詞のバックグラウンド
The Fratellisは2005年にグラスゴーで結成され、翌年『Costello Music』を発表し一躍注目を浴びた。「Creepin’ Up the Backstairs」は、彼らが最初に世に送り出したシングルであり、バンドの知名度を高めるきっかけとなった曲である。
サウンドは荒削りながらキャッチーで、当時のUKインディ・ロック/ガレージリバイバルの潮流に乗りながらも、The Fratellis特有のユーモアとシアトリカルな色合いを備えていた。この曲はアメリカではiTunes Music Store限定で配信され、物理的なCDシングルとしてリリースされなかったためチャート入りはしなかったが、インディ・シーンではカルト的な人気を誇った。
この「裏階段を忍び上がる」という設定は、バンドが得意とする「小粋で享楽的な若者文化」を象徴しており、のちの「Chelsea Dagger」や「Baby Fratelli」と同じく、ライブで盛り上がるアンセム的楽曲として定着している。
3. 歌詞の抜粋と和訳
英語歌詞(抜粋)
“Creepin’ up the backstairs
Mother’s nightmare
When I get my share”
日本語訳
「裏階段をこっそり忍び上がる
母親にとっては悪夢のようなことさ
でも僕は自分の取り分を手に入れるんだ」
このフレーズからは、禁断の行為に対するスリルと若さ特有の無鉄砲さが表れている。
(歌詞引用元: Genius)
4. 歌詞の考察
「Creepin’ Up the Backstairs」は、単なる恋愛の歌というよりも「夜の冒険譚」として解釈するのがふさわしい。恋人に会うために家族に隠れて忍び込む――そんな古典的なシチュエーションを、ユーモアと不良っぽさを交えて描いている。
重要なのは、この曲が恐怖や緊張ではなく「遊び心」と「若さの衝動」を前面に出している点である。母親に見つかるかもしれないというスリルはむしろ楽しさに変換され、恋愛の秘密めいた側面がユーモラスに表現されている。こうした軽妙な語り口は、The Fratellisが「シリアスさ」よりも「楽しさ」や「大衆性」を重んじるバンドであることを示している。
サウンド面でも、疾走感のあるリズムとシンプルでクセになるリフが、物語のスリルを音楽的に補強している。聴き手はまるで自分が裏階段を駆け上がるかのような臨場感を味わうことができる。
(歌詞引用元: Genius)
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Henrietta by The Fratellis
 同じく初期を代表するナンバーで、ストーリーテリング的歌詞が特徴。
- Chelsea Dagger by The Fratellis
 彼ら最大のヒット曲で、シンガロング性とユーモアを兼ね備える。
- Baby Fratelli by The Fratellis
 享楽的な女性像を描いたロックンロール。
- I Bet You Look Good on the Dancefloor by Arctic Monkeys
 同時代のUKインディを象徴する疾走感あるアンセム。
- Take Me Out by Franz Ferdinand
 スコットランド出身の先輩格で、ダンサブルなインディ・ロック。
6. 現在における評価と影響
「Creepin’ Up the Backstairs」はチャート上の大きな成功を収めたわけではないが、The Fratellisにとってはキャリアの出発点となった重要な曲である。デビュー当初から彼らの音楽性――ポップカルチャーへのオマージュ、ストーリーテリング、シンガロング性――がしっかりと打ち出されており、ライブでは今も盛り上がる鉄板ナンバーのひとつである。
今日では、The Fratellisのカタログを語るうえで欠かせない初期代表曲として位置づけられており、UKインディ・ロックの2000年代中盤の空気感を凝縮した作品として再評価され続けている。

 
  

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