発売日: 2010年1月11日
ジャンル: インディー・ロック, アート・ポップ, エレクトロ・ポップ
Vampire Weekendの2作目『Contra』は、デビューアルバムの成功を受け、その音楽的な冒険心をさらに広げた作品である。アフリカンリズムやバロック・ポップの要素を保ちながらも、エレクトロやシンセサウンドの導入により、より洗練されつつも実験的な音楽性を追求している。歌詞のテーマはグローバリズムや消費主義を風刺したもので、エズラ・クーニグの軽妙な語り口が際立つ。バンドとしての進化を見せつけつつ、前作とは異なる角度から彼らの独自性を打ち出した作品だ。
各曲ごとの解説:
- Horchata
オープニングトラックは、中南米の飲み物「オルチャタ」から名付けられており、アルバム全体を象徴するような異文化を取り入れた楽曲。シンセサウンドと木琴が交錯し、温かみとクールさを同時に感じさせる独特の雰囲気が漂う。リラックスしたムードの中にも、巧みなリリックが光る。 - White Sky
高揚感のあるシンセのメロディと、エズラ・クーニグの特徴的な「ファルセット・フック」が耳に残る楽曲。街の喧騒やニューヨークのエネルギーを描写する歌詞が印象的で、ダンスフロアでも映えそうなアップビートな曲だ。 - Holiday
アルバムの中でも最も軽快なトラックの一つ。ビーチリゾートを連想させるギターリフと、キャッチーなメロディが特徴的。歌詞は若者の無邪気さや、日常からの一時的な逃避をテーマにしており、非常に陽気で楽しい一曲である。 - California English
高速でまくしたてるようなヴォーカルが特徴の曲で、オートチューンが使われた斬新なアプローチが印象的だ。歌詞にはアメリカの消費文化や、現代のアイデンティティに関する鋭い視点が散りばめられており、知的かつ風刺的な側面が垣間見える。 - Taxi Cab
ミニマルなピアノとドラムが中心の静かなトラックで、都会的な孤独感や疎外感を描いたリリックが心に残る。バンドの繊細な感情表現が光る一曲で、エレガントなサウンドが全体を包み込む。 - Run
軽やかなビートときらめくようなシンセが特徴的な楽曲。歌詞は、予期しない状況から逃げ出すことをテーマにしており、アルバム全体のテーマである逃避のモチーフと繋がりを持つ。広がりのあるサウンドスケープが印象的だ。 - Cousins
『Contra』の中でも最もエネルギッシュでパンチの効いたトラックで、ギターリフとドラムのスピード感が際立つ。歌詞は社会的な地位や家族の期待についての風刺的な視点を取り入れており、Vampire Weekendらしい知的なユーモアが込められている。 - Giving Up the Gun
エレクトロポップの影響を感じさせる楽曲で、エレクトロなシンセベースが全体をリードする。歌詞には成長や自己変革を象徴するメタファーが含まれており、バンドの成熟した側面が見える。サビのメロディが非常にキャッチーで、記憶に残る一曲だ。 - Diplomat’s Son
6分を超える大作で、ゆったりとしたリズムとサンプリングを駆使した複雑な構成が特徴のトラック。歌詞は国際的な政治やプライベートな裏側を描写しており、物語性の高い内容が興味深い。アルバムの中でも実験的な試みを感じさせる曲だ。 - I Think Ur A Contra
アルバムの締めくくりを飾るこの曲は、スローテンポで、徐々にビルドアップしていく壮大な楽曲。テーマは裏切りや失望で、バンドの中でも最も内省的な歌詞が特徴。終盤の広がりを見せるサウンドが感動的で、アルバム全体を完璧に締めくくる。
アルバム総評:
『Contra』は、Vampire Weekendがデビュー作で確立した音楽的な基盤をさらに押し広げた作品である。アフリカンリズムやインディーポップの要素を保ちながらも、より複雑で実験的なサウンドに挑戦しており、バンドの進化がはっきりと感じられる。リリックには社会的な問題やアイロニーが込められており、知的で風刺的な側面が強調されている。『Contra』は、彼らのサウンドをさらに洗練させた傑作といえるだろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- Oracular Spectacular by MGMT
シンセポップとサイケデリックを融合させた実験的なアルバム。Vampire Weekendのエレクトロなアプローチやキャッチーなメロディが好きなリスナーにぴったり。 - Veckatimest by Grizzly Bear
複雑なアレンジと繊細なメロディが特徴のアルバム。『Contra』の洗練されたサウンドと深みのあるリリックを楽しめたリスナーにおすすめ。 - In the Aeroplane Over the Sea by Neutral Milk Hotel
ローファイなサウンドと叙情的な歌詞が特徴の名盤。Vampire Weekendの風刺的なリリックに共感するリスナーにぴったりだ。 - Person Pitch by Panda Bear
サンプリングを多用したエクスペリメンタルなアルバム。『Diplomat’s Son』のような実験的な曲が好きなリスナーに合うだろう。 - The Age of Adz by Sufjan Stevens
エレクトロニカとオーケストラを融合させた独自のサウンドを展開する作品。Vampire Weekendのシンセサウンドを楽しめるリスナーにおすすめ。
コメント