
発売日: 1974年10月
ジャンル: カントリーロック、ウェストコースト・ロック、フォークロック
概要
『Cantamos』は、Poco が1974年に発表した8作目のスタジオアルバムである。
同年に発表された前作『Seven』と並び、“ポール・コットン × ティモシー・B・シュミット”体制の充実が最も明確に現れた作品として評価されている。
タイトルの“Cantamos”はスペイン語で「私たちは歌う」を意味し、アルバム自体もその名の通り、バンドのハーモニーと合奏の一体感を最前面に押し出した内容である。
当時のウェストコーストシーンは、Eagles、America、CSN&Yらの成功によって、カントリー/フォーク要素を洗練したロックへと昇華する流れが強まっていた。
Poco はその潮流の源流にいたバンドであり、『Cantamos』ではその“静かに成熟した美しさ”が一つの完成形を迎えている。
派手な実験や大きなコンセプトがあるわけではなく、あくまで楽曲の質とバンドの息遣いで勝負するスタイル。
しかし、その穏やかで確かな説得力こそが、この作品を“知る人ぞ知る名盤”へと押し上げている。
牧歌的な温度感と都会的な洗練が絶妙に調和しており、クロスオーバーする音楽性がのちのAORにも通じていく。
全曲レビュー
1曲目:Sagebrush Serenade
のびやかなカントリーロックで幕を開ける、清涼感あふれるオープナー。
アコースティック主体のアレンジに乗るハーモニーは、Poco の“空の広さ”を象徴している。
軽やかだが音楽的には緻密で、アルバム全体のトーンを美しく整える一曲。
2曲目:Susannah
ティモシー・B・シュミットがリードをとる爽やかなナンバー。
優しさと切なさが同居する声質が曲のストーリーと深く噛み合い、アルバム序盤のハイライトとなっている。
メロディの滑らかさとコーラスの柔らかさが非常に心地よい。
3曲目:High and Dry
ポール・コットンらしい骨太なギターが前面に出るロック寄りの曲。
カントリーの要素を保ちつつ、やや荒野を感じる“広がるロックサウンド”が魅力である。
バンドのダイナミズムがよく表れたトラック。
4曲目:Western Waterloo
軽快なテンポと親しみやすいメロディが特徴。
ウエスタン調のフィドル風味とロックの推進力が混ざり合い、Poco のハイブリッドな音楽性を象徴する。
ライブ映えしそうな明るい楽曲である。
5曲目:One Horse Blue
落ち着いたフォークタッチの佳曲。
牧場や風景を思わせる郷愁感が印象的で、ティモシー・B・シュミットの優美な表現力が際立つ。
『Cantamos』の内省的な側面を担う曲でもある。
6曲目:Bitter Blue
ややブルージーで、アコースティックとエレクトリックの混ざり具合が絶妙。
ポール・コットンの渋いボーカルが歌詞のほろ苦さを際立たせ、アルバムのバランスを引き締める。
7曲目:Another Time Around
穏やかなメロディラインに乗せて、“やり直し”や“もう一度のチャンス”といったテーマを柔らかく描く曲。
ハーモニーの緻密さが心にしみる、アルバムの隠れた名曲である。
8曲目:Whatever Happened to Your Smile
ミドルテンポで温かい雰囲気を持つ、Poco らしい優しいロックナンバー。
タイトルに込められた哀愁がメロディにも反映され、穏やかだが深い感情の流れを感じる曲だ。
9曲目:All the Ways
柔らかなギターアルペジオと美しいコーラスで包み込むラストナンバー。
静かに終わるのではなく、余韻を残しながら光が差すようなエンディングで、アルバム全体を温かく締めくくる。
総評
『Cantamos』は、Poco が70年代中盤に到達した“洗練と温かさのバランス”を最もよく示したアルバムである。
ロックの軽快さ、カントリーの土の香り、フォークの静けさ——そのすべてが自然に溶け合い、肩の力が抜けた美しい音楽として成立している。
とりわけ、
- コーラスワークの完成度
- アコースティック主体の透明感
- 都会的な軽やかさとカントリーの素朴さの調和
が本作の魅力であり、Poco の音楽の“真価”を味わうのに最適な作品でもある。
大ヒット作ではないが、“一番好きなPocoのアルバム”として挙げるファンも多く、隠れた名盤として根強い支持を獲得している。
70年代ウェストコーストの豊かな空気をそのまま瓶詰めにしたような、時間を超えて愛される一枚だ。
おすすめアルバム(5枚)
- Seven / Poco
同年の作品で、音楽的ムードの連続性が最も強い。 - A Good Feelin’ to Know / Poco
初期のPocoらしいハーモニー美とロック感が炸裂する名作。 - On the Border / Eagles
都会的なウェストコーストの洗練と比較すると面白い。 - America / America
フォークロック的な透明感とメロディの美しさが響き合う。 - Judee Sill / Judee Sill
同時代の繊細なフォークロックの精神性を理解できる一枚。



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