発売日: 1997年9月16日
ジャンル: R&B、ソウル、ヒップホップ、ポップ
Butterflyは、マライア・キャリーの音楽性とパーソナルな成長を象徴する、キャリアを大きく変えたアルバムである。自身のプライベートの変化、特にトミー・モトーラとの離婚を経て、彼女はこの作品で新たなスタイルと自由を探求し、R&Bやヒップホップの影響を前面に出している。デビュー以来のポップ中心のサウンドから進化し、彼女はよりソウルフルでエモーショナルな音楽へと移行した。アルバム全体が愛、自由、自己再発見といったテーマで貫かれており、彼女の歌詞も以前よりも感情豊かで深みのあるものとなっている。
プロデューサーにはウォルター・アファナシエフ、ショーン・“パフィ”・コムズ、そしてジャーメイン・デュプリなどが参加し、R&Bとヒップホップの要素が濃厚なサウンドが展開されている。アルバムには「Honey」や「Butterfly」、「My All」などのヒット曲が収録されており、彼女のボーカル力と繊細な感情表現が際立つ。特に「Honey」は、彼女がヒップホップに大胆に踏み込んだことで当時のファンを驚かせ、ポップ界におけるR&Bとヒップホップの融合の先駆けともなった。Butterflyは、マライア・キャリーがアーティストとして、そして一人の女性として自らのアイデンティティを確立した作品である。
トラックごとの解説
1. Honey
アルバムのリードシングルで、マライアがヒップホップとR&Bに本格的に挑戦した画期的なトラック。軽快でセクシーなビートが印象的で、彼女の新たなスタイルと自由な表現が垣間見える一曲。パフ・ダディのプロデュースにより、1990年代後半のR&Bシーンに大きな影響を与えた。
2. Butterfly
アルバムのタイトル曲で、自己解放と成長をテーマにした感動的なバラード。ストリングスとピアノが美しく重なり合い、彼女の柔らかなボーカルが感情豊かに響く。失恋や自己発見のプロセスが描かれ、聴く者に深い感動を与える名曲。
3. My All
ラテン音楽の影響を取り入れたバラードで、マライアの切ないボーカルが印象的。愛する人への強い思いを込めた歌詞と、心に残るメロディが相まって、アルバムのハイライトの一つとなっている。ビルボード・ホット100でも1位を獲得した。
4. The Roof (Back in Time)
ヒップホップとR&Bが融合したエッジの効いたトラックで、1990年代のニューヨークの情景を描写している。モブ・ディープの「Shook Ones (Part II)」をサンプリングし、マライアの過去への郷愁と恋愛の思い出が詩的に表現されている。
5. Fourth of July
ドリーミーでロマンティックなバラードで、過去の恋愛の喜びを歌っている。マライアの優しいボーカルと美しいメロディが、夏の夜の情景を思い起こさせ、ノスタルジックな雰囲気に包まれる一曲。
6. Breakdown (feat. Bone Thugs-n-Harmony)
ラップとR&Bの要素を取り入れた異色のコラボレーションで、失恋の苦しみを繊細に描写している。Bone Thugs-n-Harmonyとの共演が絶妙で、マライアのソウルフルなボーカルが心に染み渡る。
7. Babydoll
スローテンポでセクシーなR&Bトラックで、彼女のソフトで官能的なボーカルが引き立つ。ミッシー・エリオットが共作したこの楽曲は、深夜のムードにぴったりの、リスナーを引き込むような魅力がある。
8. Close My Eyes
自己探求と成長の過程を歌った内省的なバラードで、マライアのプライベートな経験が込められている。シンプルな伴奏に乗せた感情的なボーカルが、リスナーに深い余韻を残す。
9. Whenever You Call
ウォルター・アファナシエフとの共作によるドラマティックなバラードで、愛する人への深い思いを歌っている。高音から低音まで豊かなボーカルが響き渡り、彼女のボーカル技術が堪能できる一曲。
10. Fly Away (Butterfly Reprise)
「Butterfly」をハウス調にアレンジしたリミックスで、ポジティブなエネルギーに満ちたダンサブルなトラック。ダイアン・ウォーレンとの共作で、自由な雰囲気がアルバムに新しい息吹をもたらしている。
11. The Beautiful Ones (feat. Dru Hill)
プリンスの名曲「The Beautiful Ones」のカバーで、Dru Hillとの共演によるエモーショナルなデュエットが聴きどころ。オリジナルとは異なるアプローチで、感情の深さが伝わる。
12. Outside
アルバムを締めくくる感動的なバラードで、孤独や自己発見がテーマ。複雑な感情が歌詞に込められており、彼女の内面的な成長が感じられる。特にLGBTQ+コミュニティや異なる背景を持つリスナーに共鳴を与えた楽曲。
アルバム総評
Butterflyは、マライア・キャリーが自身の音楽スタイルとアイデンティティを再定義したアルバムであり、R&B、ヒップホップ、ポップが見事に融合した作品である。タイトル曲「Butterfly」や「My All」といった感情豊かなバラードから、「Honey」や「The Roof」のようなヒップホップ調のトラックまで、彼女の多彩な音楽性が詰まっている。アルバム全体を通して、自由と自己発見というテーマが貫かれており、マライアにとって重要な転機となった。Butterflyは、彼女のキャリアの中でも特に評価の高い一枚であり、ポップとR&Bの融合の先駆けとして後世に影響を与えた作品である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
My Life by Mary J. Blige
感情豊かなR&Bアルバムで、自己発見と成長のテーマが共通する。Butterflyのように深い感情表現が詰まっている。
Velvet Rope by Janet Jackson
自己解放と愛がテーマのエモーショナルな作品で、R&Bとポップの融合が楽しめる。マライアの変革を気に入ったリスナーにおすすめ。
Share My World by Mary J. Blige
ソウルフルでメロディアスなR&Bアルバム。マライアの感情的な表現に共鳴するファンに最適な一枚。
Faith by Faith Evans
90年代R&Bの名作で、ソウルフルなバラードが充実している。マライアのスムーズなR&Bサウンドが好きなリスナーに。
CrazySexyCool by TLC
R&Bとヒップホップが見事に融合した一枚で、90年代のR&Bファンにはたまらない作品。Butterflyのムードを楽しめる。
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