発売日: 2022年9月30日
ジャンル: インディーロック、オルタナティブロック、ポリティカルロック
スコットランド発のインディーロックバンドThe Snutsが2作目のアルバムBurn The Empireで見せたのは、さらなる進化と大胆なメッセージ性だ。前作W.L.ではノスタルジックで感情的なテーマが多かったが、本作では政治的・社会的なテーマに焦点を当て、現代の不満や希望を反映した力強い作品となっている。タイトルが示す通り、「帝国を焼き尽くす」という激しい反抗の精神がアルバム全体を貫いており、The Snutsがただのインディーロックバンドではないことを証明している。
本作はエネルギッシュなロックアンセムから、繊細で内省的なバラードまで幅広いスタイルを網羅しており、バンドの音楽的な多様性が際立つ。プロデューサーにはDetonateやCoffee and Cigarettesを手掛けたNathaniel Kohnを迎え、荒削りながらも洗練されたサウンドが特徴的だ。以下、全11曲について詳しくレビューする。
トラックごとの解説
1. Burn The Empire
アルバムのタイトル曲であり、最初の一撃として強烈なインパクトを与えるナンバー。重厚なギターリフとジャック・コクレーンの怒りに満ちたボーカルが特徴で、歌詞では腐敗した政治や社会制度への激しい抗議が描かれている。
2. Zuckerpunch
ダンサブルでキャッチーなトラックだが、その軽快さとは裏腹に、歌詞ではSNSやデジタル時代の虚無感を描いている。タイトルの「Zucker」はSNS大手を暗示しており、現代社会への皮肉が込められている。
3. 13
アルバムの中でも特にメロディアスな曲で、青春や過去の記憶に思いを馳せる内容。アコースティックギターと控えめなアレンジが、歌詞の持つノスタルジーを引き立てている。
4. Cosmic Electronica
異なるリズムパターンやシンセサウンドを取り入れた実験的なトラック。スペーシーな雰囲気とダークな歌詞が特徴的で、バンドの新しい一面を感じられる。
5. Knuckles
ライブ向きのエネルギッシュなナンバー。リフの繰り返しが中毒性を持ち、ジャックのシャウトが聴き手を鼓舞する。歌詞では、社会のプレッシャーや抑圧を打ち破る決意が語られる。
6. Pigeons In New York
皮肉に満ちたタイトルと歌詞が特徴の楽曲。スコットランドからニューヨークに舞台を移しながらも、普遍的な人間の孤独や現代社会の矛盾を鋭く描いている。
7. Blah Blah Blah
シンプルでストレートなロックチューン。現代社会の無意味な会話や空虚な交流を揶揄するような歌詞が印象的で、痛快な聴き心地を提供する。
8. Yesterday
感傷的な雰囲気を持つバラードで、前作W.L.の世界観を思い起こさせる一曲。アコースティックサウンドを主体とし、過去を振り返るような歌詞が胸に迫る。
9. End Of The Road
中盤の静かな楽曲に対して、ここで再びエネルギッシュなギターリフが炸裂。困難を乗り越える意志や自己解放をテーマにした歌詞が印象的で、アルバムの中でも特に高揚感のある一曲だ。
10. 10/10
ポップな要素が際立つ楽曲で、軽快なテンポと明るいメロディが特徴的。アルバム全体のテーマから少し外れた、リラックスした一曲だ。
11. Hallelujah Moment
アルバムの締めくくりにふさわしい壮大なトラック。徐々に盛り上がるアレンジが感情を高ぶらせ、最後には希望と決意を感じさせるフィナーレとなっている。
社会への怒りと希望を込めたメッセージ
Burn The Empireは、単なる音楽作品を超え、現代社会へのメッセージ性を持つアルバムだ。特にタイトル曲をはじめ、腐敗した権力や現代社会の不平等への怒りがストレートに表現されており、The Snutsの音楽がエンターテインメント以上の意味を持っていることを示している。
音楽的には、デビュー作よりも成熟したアプローチが見られる。インディーロックの枠にとどまらず、アフロビートやシンセサウンド、エレクトロニカ的な要素も取り入れたことで、バンドとしての成長が感じられる。
アルバム総評
Burn The Empireは、The Snutsが音楽的にもメッセージ的にも新たな高みに達した作品だ。社会問題に果敢に切り込む歌詞、エネルギッシュなパフォーマンス、そして多彩なサウンドが融合し、前作以上に刺激的なアルバムに仕上がっている。一方で、青春や感情を描いた内省的な楽曲も健在で、リスナーに幅広い感情を呼び起こすだろう。
特に、現代社会に対するフラストレーションを抱える若い世代にとって、このアルバムは共感とインスピレーションを与える存在となるはずだ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Tranquility Base Hotel & Casino by Arctic Monkeys
実験的なサウンドと社会批判的なテーマが共通点。The Snutsの新しい方向性に共感するなら必聴。
For the First Time by Black Country, New Road
ポストパンクとジャズを融合した実験的な作品で、The Snutsの実験精神に響くものがある。
Ants From Up There by Black Country, New Road
壮大なスケール感と感情的な楽曲が魅力。The Snutsのドラマティックな要素が好きなリスナーにおすすめ。
A Hero’s Death by Fontaines D.C.
現代社会の空虚さを鋭く描く歌詞と、エネルギッシュなパフォーマンスが魅力のアルバム。
The Balance by Catfish and the Bottlemen
キャッチーなメロディと力強いロックサウンドが特徴で、The Snutsのファンにぴったりの一枚。
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