発売日: 2012年5月22日
ジャンル: フォーク・ロック、アメリカーナ、カントリーロック
ジョン・メイヤーの5作目のアルバムBorn and Raisedは、フォークやカントリーの要素を取り入れた、アメリカーナ色の濃い作品である。ContinuumやBattle Studiesでのブルース・ロック的なアプローチから一転し、70年代のフォークロックやシンガーソングライターの伝統に回帰したサウンドが特徴。声帯の問題からしばらく活動を休止せざるを得なかったメイヤーが、自己反省と再出発をテーマに作り上げたこの作品は、彼のキャリアにおいて特別な意味を持つ。
ドン・ウォズがプロデューサーを務め、アコースティックギターとハーモニカが中心のサウンドが、メイヤーの穏やかで内省的なボーカルを引き立てている。歌詞には、故郷や家族、自分自身との対話が描かれ、メイヤーが新たな心境で音楽と向き合う姿が感じられる。全体を通して落ち着いたトーンが貫かれており、Born and Raisedはジョン・メイヤーの成熟した一面と、彼が歩んできた道への敬意を込めた作品である。
トラックごとの解説
1. Queen of California
アルバムのオープニングを飾るフォークロックナンバーで、70年代のウェストコースト・ロックを彷彿とさせる軽やかなサウンド。カリフォルニアをテーマにした歌詞が、自由なスピリットと新しい始まりを象徴している。
2. The Age of Worry
前向きなメッセージが込められた楽曲で、人生の困難を乗り越える強さを歌っている。アコースティックなアレンジとメイヤーの落ち着いたボーカルが、リスナーに安心感を与える一曲。
3. Shadow Days
メイヤーが自身の過去の過ちや苦悩を乗り越え、新しいスタートを切る決意を表明した曲。カントリーの要素が加わったリズムと、内省的な歌詞が心に響く。
4. Speak for Me
現代社会の表面的な価値観に疑問を投げかけるトラック。シンプルなギターサウンドが、メイヤーの率直なメッセージを引き立て、彼の成熟した視点が伺える。
5. Something Like Olivia
メイヤーの軽快なギターとリラックスした雰囲気が特徴の楽曲。想い人への片思いをテーマにした歌詞が、切なくも微笑ましい。
6. Born and Raised
アルバムのタイトル曲で、フォークとブルースの要素が織り交ぜられた深いバラード。人生の旅路や成長、自己認識についてのメッセージが込められており、メイヤーの新たな覚悟が伝わってくる。
7. If I Ever Get Around to Living
ゆったりとしたテンポと、メイヤーの静かなボーカルが印象的なトラック。人生の目的や、心の自由を追い求める姿が描かれている。穏やかなメロディと詩的な歌詞が美しい。
8. Love is a Verb
「愛とは行動である」というシンプルで深いメッセージをテーマにした曲。アコースティックなサウンドと柔らかな歌詞が、リスナーに優しく語りかける。
9. Walt Grace’s Submarine Test, January 1967
物語性のあるユニークな楽曲で、夢を追う一人の男の冒険が描かれている。物語調の歌詞とメイヤーの語り口が新鮮で、リスナーを別世界へと誘う。
10. Whiskey, Whiskey, Whiskey
メイヤーが自分の弱さや悩みをアルコールに託して語るバラード。カントリー調のサウンドが切なさを引き立て、彼の心の葛藤が垣間見える。
11. A Face to Call Home
愛と居場所を求める心情を描いたトラックで、シンプルで温かいメロディが印象的。希望と安心感に満ちたメッセージが、アルバム全体を包み込むように感じられる。
12. Born and Raised (Reprise)
アルバムを締めくくる短いインストゥルメンタルで、全体に渡るテーマが余韻となって響く。静かなメロディがリスナーに安らぎを与えるエンディング。
アルバム総評
Born and Raisedは、ジョン・メイヤーがこれまでのキャリアを振り返り、より成熟した視点で自己を見つめ直した作品である。フォークやカントリーを取り入れたサウンドは穏やかであり、彼の成長と新たな出発を感じさせる。特に「Shadow Days」や「Born and Raised」では、過去の過ちと向き合い、未来への希望を見出そうとする姿がリスナーに伝わってくる。Born and Raisedは、彼の音楽性がさらに広がり、アーティストとしての新たな一面を示す重要な一枚である。
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