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ブルースを知るなら、まず定番アーティストから
ブルースは、ロック、R&B、ソウル、ファンクなど、20世紀以降のポピュラー音楽を理解するうえで欠かせないジャンルである。ギターのフレーズ、コード進行、歌い回しなど、現在では当たり前になった表現の多くにブルースの影響を見つけることができる。
一方で、ブルースにはデルタ・ブルース、シカゴ・ブルース、エレクトリック・ブルースなど複数のスタイルがあり、初めて聴く場合はどこから入ればいいのかわかりにくい。そこで入口になるのが、ジャンルの歴史を形作ってきた定番アーティストである。
ここではロバート・ジョンソンからB.B.キング、マディ・ウォーターズ、バディ・ガイまで、ブルースを知るうえで押さえておきたい10組を紹介する。代表作を順番に聴けば、アコースティック中心の初期ブルースから、エレクトリック化された都市型ブルース、さらにロックへ接続していく流れまで見えてくるはずだ。
ブルースとはどんなジャンルか
ブルースは、19世紀末から20世紀初頭にかけてアメリカ南部のアフリカ系アメリカ人コミュニティから形成されていった音楽である。いわゆる12小節ブルースのコード進行、ブルーノートを含む旋律、コール・アンド・レスポンスなどが代表的な特徴として知られている。
初期には歌とアコースティックギターを中心とした演奏も多かったが、南部からシカゴなど北部の都市へ人口が移動すると、ブルースも都市化していく。エレクトリックギター、ベース、ドラム、ハーモニカなどを使った大音量のバンド演奏が発展し、後のロックンロールやブルースロックに大きな影響を与えた。
そのためブルースは、単独のジャンルとして聴くだけでなく、ロックのルーツをたどる視点から聴くのも面白い。ローリング・ストーンズやエリック・クラプトン、ジミ・ヘンドリックスなどの音楽を理解するうえでも重要な出発点なのだ。
ブルースの定番アーティスト10選
1. Robert Johnson
ロバート・ジョンソンは、1911年にミシシッピ州で生まれたデルタ・ブルースを代表するシンガー/ギタリストである。1930年代に残した録音は決して多くないが、後世のブルースやロックに与えた影響は非常に大きい。
ギターではベース音、コード、旋律を組み合わせ、一人で演奏しているとは思えないほど立体的な伴奏を作る。「Cross Road Blues」や「Sweet Home Chicago」などは後のミュージシャンによって繰り返し演奏され、ブルースのスタンダードとなった。
初心者なら、まず「Cross Road Blues」を聴きたい。現代的なバンドサウンドとは異なるが、ブルース特有の歌とギターの関係を理解するには格好の入口である。
2. Muddy Waters
マディ・ウォーターズは、ミシシッピ州出身で、1940年代以降のシカゴ・ブルースを象徴する存在である。南部のブルースを都市のクラブに対応したエレクトリックなバンド音楽へ発展させた人物として重要だ。
力強いヴォーカルとエレクトリックギターを軸にしたサウンドは、後のロックバンドにも直接的な影響を与えた。「Hoochie Coochie Man」「Mannish Boy」などでは、反復するリフとヴォーカルの掛け合いが強烈なグルーヴを生み出している。
ブルースからロックへつながる道筋を知りたいなら、マディ・ウォーターズは外せない。アコースティックなブルースとの違いを意識して聴くと、その革新性がわかりやすい。
3. B.B. King
ミシシッピ州出身のB.B.キングは、戦後ブルースを代表するギタリスト/シンガーである。長い活動歴を通じてブルースを幅広い聴衆へ届け、ジャンルを代表するスターとなった。
最大の特徴は、音数を詰め込むのではなく、一音一音に意味を持たせるギタープレイである。ヴィブラートやチョーキングを駆使したフレーズと歌声が交互に現れ、まるでヴォーカルとギターが会話しているように進んでいく。
初心者には1970年のアルバム『Indianola Mississippi Seeds』や、代表曲「The Thrill Is Gone」がおすすめだ。ブルースギターの表現力を理解するなら、まずB.B.キングから入るのもいい。
4. Howlin’ Wolf
ハウリン・ウルフはミシシッピ州出身で、マディ・ウォーターズと並んでシカゴ・ブルースを代表するシンガーである。1950年代からチェス・レコードを中心に数多くの重要な録音を残した。
最大の武器は、荒々しく巨大な存在感を持つヴォーカルである。「Smokestack Lightning」や「Spoonful」では、反復するリフと強烈な歌声によって、後のハードロックにも通じる迫力を作り出している。
ローリング・ストーンズやクリームなど英国ロック勢への影響も大きい。ロックを普段聴いている人なら、比較的入りやすいブルース・アーティストだろう。
5. John Lee Hooker
1910年代にミシシッピ州で生まれ、デトロイトを拠点に活動したジョン・リー・フッカーは、独特の反復感覚を持つブルースで知られる。
彼の演奏は、必ずしも整然とした12小節形式だけに収まらない。一定のリズムとギターリフを繰り返しながら、歌に合わせて自在に展開するスタイルが特徴である。「Boogie Chillen’」や「Boom Boom」を聴けば、その身体的なグルーヴがよくわかる。
特に「Boom Boom」はロックやR&Bに慣れた初心者にも聴きやすい。複雑な演奏よりも、リフとリズムそのものの強さに注目したい。
6. Albert King
アルバート・キングは、B.B.キング、フレディ・キングとともに「Three Kings」と呼ばれることの多いブルースギタリストである。特に1960年代以降のエレクトリック・ブルースやブルースロックへの影響が大きい。
1967年の『Born Under a Bad Sign』は代表作であり、スタックスのミュージシャンたちによるタイトなリズムセクションと、アルバート・キングの鋭いギターが組み合わされている。ブルースとソウル/R&Bの接点を感じられる作品でもある。
ギターのチョーキングを中心としたフレーズは、エリック・クラプトンやスティーヴィー・レイ・ヴォーンなど後世のギタリストにも大きな影響を与えた。
7. Freddie King
テキサス州出身のフレディ・キングも、戦後のエレクトリック・ブルースを代表するギタリストである。シカゴで活動し、ブルースとR&B、ロックンロールを結ぶような力強い演奏を残した。
代表曲のひとつ「Hide Away」はギター・インストゥルメンタルとして広く知られ、ブルースギタリストの定番レパートリーとなった。切れ味のあるフレーズと前へ進むリズムは、伝統的なブルースという言葉から想像する以上にエネルギッシュである。
ロックギターからブルースへ入る人には特におすすめしたい。ギターソロの語彙がどこから来たのかを実感しやすいアーティストだ。
8. Buddy Guy
1936年にルイジアナ州で生まれたバディ・ガイは、シカゴへ移り、1950年代後半から活動を本格化させた。伝統的なシカゴ・ブルースと、より激しいロック的なギター表現をつないだ重要人物である。
ダイナミクスの大きな演奏、鋭いチョーキング、フィードバックも取り込んだ大胆なギターサウンドが特徴だ。ジミ・ヘンドリックスやエリック・クラプトンをはじめ、後世のロックギタリストへの影響でも知られている。
ブルースを「古い音楽」と感じている人ほど聴いてほしい。ライブ感の強い演奏から入ると、ブルースがロックと地続きの音楽であることが理解しやすい。
9. Etta James
1938年にロサンゼルスで生まれたエタ・ジェイムスは、ブルースだけでなくR&Bやソウルの文脈でも重要なシンガーである。ブルースの表現が他のブラックミュージックへ広がっていく過程を知るうえで欠かせない。
代表曲としては「I’d Rather Go Blind」や「At Last」がよく知られている。とりわけ前者では、派手な展開に頼らず、ヴォーカルの抑揚によって感情を押し出すブルース/ソウルの歌唱を味わえる。
ギター中心のブルースが続くと聴きづらいという初心者にもおすすめである。ブルースにおいて「歌」がどれほど重要なのかを理解できる存在だ。
10. Koko Taylor
ココ・テイラーはテネシー州出身で、シカゴを拠点に活躍したブルースシンガーである。力強くざらついたヴォーカルで知られ、シカゴ・ブルースを代表する女性歌手の一人として高く評価されている。
代表曲として知られる「Wang Dang Doodle」では、バンドの重いグルーヴに負けない強烈な歌声を聴くことができる。ブルースがギタリストだけの音楽ではなく、ヴォーカリストの表現によって発展してきたジャンルであることを実感できるだろう。
マディ・ウォーターズやハウリン・ウルフを気に入った人が次に聴くアーティストとしてもおすすめである。同じシカゴ・ブルースでも、歌を中心に聴くことで別の魅力が見えてくる。
まず聴くならこの3組
最初の3組を選ぶなら、B.B.キング、マディ・ウォーターズ、ロバート・ジョンソンがおすすめである。この3人を聴くことで、ブルースの異なる重要な側面を効率よくつかめる。
ロバート・ジョンソンからは、歌とアコースティックギターを中心としたデルタ・ブルースの基本形が見えてくる。録音年代が古いため音質には時代を感じるものの、そのギターフレーズや楽曲構造が後世に与えた影響を意識すると面白い。
続いてマディ・ウォーターズを聴けば、ブルースが都市へ移動し、エレクトリックギターを中心とするバンドサウンドへ変化したことがわかる。そしてB.B.キングでは、ブルースギターがより洗練されたソロ表現へ発展していく過程を体験できる。
この3人を起点に、荒々しい音が好きならハウリン・ウルフ、反復するグルーヴが好きならジョン・リー・フッカー、ロックギターが好きならアルバート・キング、フレディ・キング、バディ・ガイへ進むと聴きやすい。
関連ジャンルへの広がり
ブルースから次に進むなら、まずブルースロックとの関係を追うとわかりやすい。1960年代には英国やアメリカのロックミュージシャンがブルースの楽曲、コード進行、ギターフレーズを積極的に取り込み、より大音量でロック的なサウンドへ発展させていった。
一方、エタ・ジェイムスやアルバート・キング周辺から聴き進めるなら、ソウルやR&Bとの接点にも注目したい。ホーン、オルガン、リズムセクションの使い方を比較すると、ブルースが他のブラックミュージックと相互に影響しながら発展してきたことが見えてくる。
さらにファンク、ロックンロール、ハードロックなどへ範囲を広げれば、ブルース由来のリフ、コード進行、ヴォーカル表現がさまざまな形で受け継がれていることに気づくだろう。
まとめ
ブルースには100年以上にわたる歴史があり、一言で「ブルース」といってもサウンドはさまざまである。ロバート・ジョンソンのデルタ・ブルース、マディ・ウォーターズやハウリン・ウルフのシカゴ・ブルース、B.B.キングやアルバート・キングのエレクトリックなギター表現まで、その発展を追うだけでもポピュラー音楽史の大きな流れが見えてくる。
初心者なら、まずB.B.キングやマディ・ウォーターズの代表曲を聴き、そこからロバート・ジョンソンへ遡る方法がおすすめである。ギターが好きならThree Kingsやバディ・ガイ、ヴォーカルを中心に楽しみたいならエタ・ジェイムスやココ・テイラーへ進むといい。
そしてブルースに耳が慣れてきたら、普段聴いているロック、ソウル、R&Bを改めて聴いてみたい。リフ、ギターソロ、歌と楽器の掛け合いなど、これまで何気なく聴いていた表現の中にブルースの語彙が数多く残っていることがわかるはずだ。

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