発売日: 2017年10月13日
ジャンル: ポップ、ポップ・ロック
アルバム全体の印象
ピンクの7枚目のスタジオアルバム『Beautiful Trauma』は、成熟したアーティストとしての確立された地位をさらに固めた作品だ。前作『The Truth About Love』から5年ぶりのリリースとなるこのアルバムは、彼女の個人的な人生と社会的な問題が融合した内容になっており、ピンク特有の率直さと感情的な奥深さが光る。
アルバムのタイトルに含まれる「Beautiful」と「Trauma」という対照的な言葉が象徴するように、この作品は喜びと痛み、希望と絶望という二面性をテーマとしている。彼女自身の結婚生活、子育て、そして社会に対する疑問や怒りが散りばめられており、リスナーは彼女の人生の旅路を共に歩む感覚を味わえるだろう。
アルバムのプロデュースには、ジャック・アントノフ（LordeやTaylor Swiftとの仕事で知られる）、マックス・マーティン、シェルバックといった実力派が名を連ねている。ポップを基盤としつつも、ロックやダンス、R&Bの要素を取り入れた多彩なサウンドがアルバムを彩り、どの楽曲も鮮やかで感情的なストーリーを伝える力を持っている。全体として、ピンクがこれまでに築き上げてきたスタイルを保ちながらも、新たな挑戦と視点を加えた傑作といえるだろう。
トラックごとの解説
1. Beautiful Trauma
タイトル曲であり、アルバムのテーマを象徴する楽曲だ。壮大なピアノのイントロに続いて、ドラマチックなビートが展開される。歌詞では、「完璧ではないが、それでも美しい」という愛の現実を描いており、彼女の結婚生活を暗喩しているようだ。サビでのエモーショナルな爆発力は圧巻。
2. Revenge (feat. Eminem)
ユーモラスでキャッチーな楽曲で、ピンクとエミネムの掛け合いが光る。復讐のテーマをコミカルに描きながらも、ビートの強さが楽曲にエッジを与えている。2人の声の相性も良く、リスナーを飽きさせない。
3. Whatever You Want
パワフルなポップロックナンバーで、愛の葛藤をテーマにしている。「I’ll fight, I’ll fight for us」という歌詞が、諦めたくないという彼女の決意を伝える。エレクトロポップ調のサウンドが現代的で、広がりのあるコーラスが印象的だ。
4. What About Us
アルバムのリードシングルとしてリリースされたこの曲は、社会的メッセージを含んだ感動的なバラードだ。エレクトロポップのサウンドスケープと力強いボーカルが融合し、「私たちはどうなるの？」と問いかける歌詞がリスナーの心に訴えかける。現代社会の分断や失望感を象徴している。
5. But We Lost It
バラード調の楽曲で、壊れゆく愛の悲しみを切なく歌い上げている。シンプルなピアノ伴奏に乗せて、ピンクの繊細で感情的なボーカルが際立つ。アルバムの中でも特に心に残る一曲。
6. Barbies
タイトル通り、子供時代への郷愁を歌った楽曲だ。アコースティックギターを基調とした温かみのあるサウンドと、「Can I go back to the days when I was young?」という歌詞が、懐かしさと共に現実への不安を呼び起こす。
7. Where We Go
軽快なリズムとドリーミーなメロディが特徴のミッドテンポナンバー。自由奔放な愛の旅を描いており、楽観的でポジティブなエネルギーに溢れている。
8. For Now
切ない恋愛バラードで、「この瞬間を楽しみたいが、未来はどうなるのかわからない」という心情が描かれている。ストリングスとピアノのアレンジが曲に深みを与えている。
9. Secrets
ポップでグルーヴィーなトラックで、シンプルながらもダンスフロア向きのサウンドが印象的だ。歌詞では隠し事や秘密をテーマにしており、彼女の率直なスタイルが光る。
10. Better Life
希望に満ちたメロディが特徴の楽曲で、「より良い人生」を求める願いが込められている。サウンドは軽快だが、歌詞には深いメッセージ性がある。
11. I Am Here
ゴスペル風の壮大な楽曲で、人生の目的や存在意義を問う歌詞が力強い。コーラスの力強さが楽曲に圧倒的なエネルギーを与えている。
12. Wild Hearts Can’t Be Broken
静かなピアノバラードで、彼女のボーカルが一際際立つ楽曲だ。強いメッセージ性を持ちながらも、繊細なアレンジが曲に深い余韻を残す。
13. You Get My Love
アルバムを締めくくる感動的なバラードで、愛と献身をテーマにしている。シンプルなピアノ伴奏とピンクの感情豊かな歌声が、リスナーに深い印象を与える。
アルバム総評
『Beautiful Trauma』は、ピンクの成熟と感情的な深みが詰まったアルバムだ。愛や喪失、社会問題など幅広いテーマを扱いながらも、どの楽曲も彼女らしい率直さとエネルギーに溢れている。この作品は、ポップスターとしてのピンクだけでなく、人間としてのピンクを感じさせる内容であり、聴く者に強い共感を呼び起こすだろう。
特に「What About Us」や「Beautiful Trauma」といった楽曲は、彼女のキャリアの中でも特筆すべき名曲だ。アルバム全体の完成度が高く、彼女の進化を楽しむことができる一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Lover by Taylor Swift
愛と葛藤、再生をテーマにしたアルバムで、繊細な歌詞とカラフルなサウンドが特徴。ピンクの感情的な深みを好むリスナーに響く。
Melodrama by Lorde
内省的なテーマとドラマチックなサウンドが共通しており、ピンクの『Beautiful Trauma』と似た感情的な旅を提供する。
Future Nostalgia by Dua Lipa
ポップに重点を置いた作品だが、深い感情とメッセージ性があり、ポップファンには必聴。
This Is Acting by Sia
力強いボーカルと感情的なテーマが特徴のアルバム。ピンクのダイナミックなスタイルを好む人におすすめ。
Stripped by Christina Aguilera
愛、自己発見、強さといったテーマを扱う作品で、ピンクのアルバムのファンにも響く内容。
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