発売日: 1974年6月26日
ジャンル: ハードロック、ブルースロック、アリーナロック
無骨な男たちの矜持——ハードロック黄金期の静かなる名盤
1974年、ブリティッシュ・ロックの名プレイヤーたちが集結して結成されたBad Companyは、その名を冠したデビューアルバムBad Companyで一気にロックシーンの最前線へと躍り出た。
ヴォーカルのPaul Rodgers(元Free)、ギターのMick Ralphs(元Mott the Hoople)、ドラムのSimon Kirke(元Free)、そしてベースのBoz Burrell(元King Crimson)というラインナップは、当時としても異例の“ドリーム・バンド”だった。
本作は、煌びやかな技巧やスタジオ・マジックとは無縁である。
代わりにあるのは、地に足のついた骨太なサウンドと、男の渋さが滲み出るソングライティング。
そして、何よりPaul Rodgersのソウルフルで堂々たるヴォーカルが、全編を貫いている。
全曲レビュー
1. Can’t Get Enough
アルバム冒頭を飾るBTO最大のヒット曲。
Mick Ralphs作のこの曲は、シンプルなコード進行と繰り返しの中に強烈なグルーヴを秘めており、ハードロックとブルースの美しい接点を体現している。
ラジオでも長く愛されたロック・アンセム。
2. Rock Steady
スロウテンポで粘り気のあるリズムが心地よい。
Paul Rodgersのヴォーカルが、まるでスモーキーなウイスキーのように深く染み込んでくる。
リズム隊の一体感も見事。
3. Ready for Love
Mick RalphsがMott the Hoople時代に書いた曲をセルフカバーしたバラード。
情感たっぷりのギターと、抑制の効いたヴォーカルが絶妙に交差する。
陰影と深みのあるラブソング。
4. Don’t Let Me Down
サザンロックの風も感じさせる中速ロックナンバー。
落ち着いたアレンジの中に、切実な願いと男の不器用さがにじむ。
5. Bad Company
バンド名と同名のこの曲は、まさに彼らの精神を象徴する名曲である。
ピアノとリバーブの効いたギターに支えられ、Paul Rodgersが“ならず者の美学”を力強く歌い上げる。
静と動のバランス、余白を生かした構成が、聴く者の想像力を刺激する。
6. The Way I Choose
ブルージーで内省的な雰囲気が漂うスロー・ナンバー。
「自分の選んだ道を信じる」というテーマは、ロックンロールの根幹にある反骨と誠実さを浮かび上がらせる。
7. Movin’ On
ツアー生活やロードをテーマにした軽快なロック。
移動し続けるロッカーの心情と、そこにある開放感がシンプルに描かれている。
リフの爽快さが魅力。
8. Seagull
アコースティックギターとともに静かに始まるフォーキーなラストトラック。
“カモメ”をメタファーに、生と死、自由と孤独を静かに歌い上げる。
アルバム全体の余韻を美しく締めくくる一曲。
総評
Bad Companyは、1970年代ハードロックの中でもとりわけ“静かな強さ”を宿した作品である。
爆発力やテクニカルな華やかさではなく、ロックという音楽の“素地”を丁寧に鳴らすことで、むしろ深い印象を残す。
Paul Rodgersの圧倒的な声、Mick Ralphsの骨太なギター、そしてバンドとしての呼吸の合った演奏。
それらが揃ったこのアルバムは、“シンプルなものこそ最も強い”という真理を体現している。
時代を超えて聴かれ続けるのも、当然のことなのだ。
おすすめアルバム
- Free – Fire and Water
Paul RodgersとSimon Kirkeが在籍したバンドの代表作。Bad Companyのルーツがここにある。 - Humble Pie – Smokin’
ソウルフルなヴォーカルと骨太なロックがぶつかり合う、70年代英国ロックの名盤。 - Led Zeppelin – Presence
よりヘヴィで内省的なロックを求めるなら、Zepのこの一枚は好相性。 - The Faces – A Nod Is as Good as a Wink…
自由でラフなグルーヴ感が好きならこちらもおすすめ。Rod Stewartの全盛期。 - Aerosmith – Get Your Wings
アメリカ版Bad Companyとも言えるブルージーなロックンロールが詰まった名作。
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