1. 歌詞の概要
「Awake（アウェイク）」は、アメリカ・ボストン出身のオルタナティブ・ロック・バンド、Letters to Cleo（レターズ・トゥ・クレオ）が1993年に発表したデビュー・アルバム『Aurora Gory Alice』に収録された楽曲である。
アルバムの中でも特に内省的かつエモーショナルなこの曲は、“眠りから目覚めること”をテーマに据えながら、それが比喩的な意味において――恋愛や人間関係、あるいは自己の再認識における“覚醒”を描いている。
タイトルの「Awake」は、単に睡眠から目を覚ますという意味に留まらない。
この楽曲では、誰かの存在により“心が揺さぶられた瞬間”、あるいは“もう元には戻れないと気づいた瞬間”としての「目覚め」が語られている。
それは痛みを伴いながらも、否応なく起こってしまう変化――逃れられない感情の奔流に巻き込まれるような時間だ。
2. 歌詞のバックグラウンド
「Awake」は、Kay Hanley（ケイ・ハンリー）の透き通るようなヴォーカルが、そのまま感情の繊細さを表現しているナンバーである。
Letters to Cleoの初期作品に多く見られるように、この曲もまた“傷つきやすさ”と“強がり”の間に揺れる感情を丁寧にすくい上げており、特に女性の視点から語られる不安定な関係性や、自意識の細やかな揺れが、彼女の声を通じてリスナーに染み込んでいく。
アルバム『Aurora Gory Alice』は、商業的な成功を狙った作品というよりは、バンドとしての自己表現が最も強く出たパーソナルな作品であり、「Awake」はそのなかでも特に、個人の心象風景をそのまま音にしたようなナンバーだ。
3. 歌詞の抜粋と和訳
以下に、「Awake」の印象的なフレーズを抜粋し、日本語訳を併記する。
“You said you wanted to be awake / And now you are”
「目覚めたいって言ってたよね / 今、君はその通りになったんだよ」
“You said you wanted to be honest / Well, now you are”
「正直になりたいって言ってたよね / 今、それが叶ったんだ」
“And I see what it means to be free / I see you leaving me”
「“自由”ってことがどういう意味か、やっとわかった / それってつまり、君が私から離れるってことだった」
“You look away, but I know you see me / And I know you’re gone”
「視線を逸らすけど、私を見てるってわかってる / そして、君がもう戻ってこないってことも」
歌詞全文はこちらで確認可能：
Letters to Cleo – Awake Lyrics | Genius
4. 歌詞の考察
「Awake」は、恋愛関係における“決定的な別れの瞬間”を描いている。
語り手は、“正直さ”や“自由”といった理想を尊重しながらも、それが最終的には“関係の終わり”につながったことを、ほろ苦く、しかし受け入れようとしている。
「目覚めたいと言っていた、その結果がこれ」というフレーズには、愛する人の成長を見届けながらも、それが自分の喪失につながってしまうという皮肉がある。
これは、共にいた時間の中で相手の願いを理解し支えてきたからこそ、別れを“恨み”に変えることができないという、成熟した痛みだ。
また、「Awake」という言葉は、語り手自身の内面にも向けられている。
相手の変化に触れ、自分もまた“目が覚めてしまった”。
つまりこの曲は、感情の終焉とともに、“恋の幻想からの覚醒”を歌っている。
楽曲の構成はシンプルで、決して派手ではないが、歌詞の一つひとつが丁寧に積み重ねられ、淡々としたギターとヴォーカルがその余韻を深く残す。
ケイ・ハンリーの声が震えるように響くことで、その感情の繊細さが何倍にも増幅される構造になっている。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- You Could Make a Killing by Aimee Mann
関係の中で“何かが冷えてしまった瞬間”を描く、知的で切ないポップソング。 - Shadowboxer by Fiona Apple
感情の綱引きと自己認識の目覚めを、濃密な詞とピアノで描いた力作。 - Sleep to Dream by Fiona Apple
自己覚醒と拒絶の力がみなぎる、感情の噴出を描いた強烈なナンバー。 - My Favorite Mistake by Sheryl Crow
愛してはいけなかった人への後悔と、それでも続いた愛情の矛盾を描いた大人の別れ歌。 -
Goodbye To You by Michelle Branch
別れの痛みと、前を向こうとする静かな決意を、軽快なポップに包んだ青春の記憶。
6. “目が覚めたとき、世界は違っていた”
「Awake」は、“目覚め”という名の別れの歌である。
それは、誰かの変化を願いながらも、それによって自分が取り残されてしまうという切なさ。
そして、取り残された自分自身もまた、“今までの関係”にはもう戻れないことを理解し、ゆっくりと“覚めていく”――そんな二重の意味での「Awake」がこの曲には込められている。
この楽曲は、やさしく目を覚まさせる。夢から、恋から、そして過去から。
そして、静かに言葉を置く。「そう、君が目覚めた今、私も目覚めたんだ」と。
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