アルバムレビュー：ANTI by Rihanna

発売日: 2016年1月28日
ジャンル: R&B, ポップ, ダンスホール, ソウル

Rihannaの8作目のスタジオアルバム『ANTI』は、彼女が従来のポップフォーマットを脱却し、より個人的で実験的な方向に進んだ作品だ。Rihannaはこれまでの「ヒットを狙った」作品とは異なり、このアルバムでは自身のアーティストとしてのアイデンティティを深く掘り下げた。アルバム全体を通じて、彼女の大胆で自由な音楽的な表現が際立っており、商業的な成功にとらわれず、多様なスタイルを取り入れたサウンドが特徴的だ。

トラックリスト (全13曲):

1. Consideration (feat. SZA)
   重厚なトリップホップのビートに、RihannaとSZAの声が溶け合うイントロダクション。自己表現の自由を訴えるメッセージが込められている。
2. James Joint
   夢見心地なインタールード。タイトル通り、リラックスした気持ちと自分らしさを忘れない彼女の姿勢を感じさせる。
3. Kiss It Better
   エレキギターのリフが印象的なロマンティックなポップソング。情熱的な愛を求める感情が溢れ出す楽曲。
4. Work (feat. Drake)
   ダンスホールに影響を受けたリズムが特徴のヒット曲。Drakeとのコラボレーションで、恋愛の駆け引きを描いている。
5. Desperado
   ダークでドラマチックなトラック。Rihannaの「孤独なカウボーイ」的な一面が描かれている。
6. Woo
   ブレイクアップアンセム。エモーショナルな歌詞とファルセットのコーラスが曲を際立たせる。
7. Needed Me
   強力なベースラインに乗せて「私を必要としていたのはあなたの方」と主張する楽曲。自己肯定感を高めるリリックが印象的。
8. Yeah, I Said It
   ゆったりとしたR&Bのスロージャム。セクシーで控えめなサウンドが、アルバム全体のムードにぴったり。
9. Same Ol’ Mistakes
   Tame Impalaのカバーで、夢幻的なサウンドに乗せた6分間のトリップ。
10. Never Ending
    フォーク風のアレンジを取り入れた、Rihannaの新たなアプローチが感じられる楽曲。
11. Love on the Brain
    50年代のドゥーワップを彷彿とさせる楽曲。恋愛の痛みと喜びを重厚なボーカルで表現している。
12. Higher
    短いながらも感情的に響く一曲。酒と感情にまみれたリリックが、傷ついた心を表現。
13. Close to You
    アルバムの最後を飾る優しいバラード。シンプルなメロディとRihannaのソウルフルなボーカルが印象的。

アルバム総評:

『ANTI』は、Rihannaが自己表現の自由を求めて音楽的な境界を押し広げた作品だ。ヒット狙いの曲よりも、アーティストとしての深い探求と実験的なサウンドが際立っている。特に「Work」や「Love on the Brain」などがアルバムのハイライトで、彼女の多面的な才能が存分に発揮されている。

このアルバムが好きな人におすすめの5枚:

1. Lemonade by Beyoncé
   女性の自己表現と多様な音楽スタイルを融合させた、実験的かつパワフルな作品。
2. Ctrl by SZA
   同じくR&Bの要素を多く取り入れたアルバムで、感情豊かな歌詞とユニークなサウンドが魅力。
3. The Weeknd by Trilogy
   アンビエントR&Bとエレクトロの要素が融合した、感情的かつ深みのある作品。
4. Blonde by Frank Ocean
   音楽的な境界を押し広げ、個性的な表現を追求したアルバム。
5. A Seat at the Table by Solange
   社会的なメッセージと美しいサウンドスケープが特徴のアートフルなアルバム。