
発売日: 2020年4月24日
ジャンル: オルタナティブ・ロック、エレクトロ・ロック、ポストパンク
破壊と再生の物語——Awolnationの最もダイナミックなコンセプトアルバム
4thアルバムAngel Miners & the Lightning Ridersは、AwolnationのフロントマンAaron Brunoが、個人的な悲劇と社会の混乱を乗り越えながら作り上げた、最もパーソナルかつエネルギッシュな作品である。
本作は、カリフォルニアの山火事でAaron Brunoのスタジオが焼失した出来事を背景に制作されており、その影響がサウンドや歌詞に色濃く反映されている。タイトルの「Angel Miners(天使の鉱夫)」と「Lightning Riders(雷の騎士)」は、彼がアルバムを通じて描く善と悪の象徴となっており、破壊と再生、絶望と希望といったテーマが全編に貫かれている。
サウンド面では、過去のエレクトロ・ロック要素を引き継ぎながらも、よりヘヴィなギターとポストパンク的な冷たさ、ヒップホップやポップパンクの影響を取り入れた多彩な楽曲構成となっている。
全曲レビュー
1. The Best
シングルとしてリリースされた本作の代表曲。シンプルなコード進行と高揚感のあるメロディが印象的で、希望に満ちたメッセージが込められている。歌詞は自己成長と再生をテーマにしており、「ベストな自分になりたい」という切実な願いが表現されている。
2. Slam (Angel Miners)
ヘヴィなギターリフと機械的なドラムが特徴の、インダストリアル・ロック的な楽曲。「Angel Miners(天使の鉱夫)」というアルバムのコンセプトを象徴する楽曲で、混沌と破壊のエネルギーが詰まっている。
3. Mayday!!! Fiesta Fever (feat. Alex Ebert)
Edward Sharpe and the Magnetic ZerosのAlex Ebertをフィーチャーした異色のトラック。ラテン調のビートとパンク的なエネルギーが交錯する、ダンサブルかつアグレッシブな楽曲。
4. Lightning Riders
80年代のニューウェーブとポストパンクの影響を感じさせる、シンセが際立つ楽曲。「Lightning Riders(雷の騎士)」という善の象徴をテーマにした、希望に満ちたナンバー。
5. California Halo Blue
カリフォルニアの山火事をテーマにした楽曲。叙情的なメロディと詩的な歌詞が特徴で、Aaron Brunoが体験した喪失と再生のストーリーが込められている。メロウでエモーショナルなバラード。
6. Radical
パンキッシュな勢いのある楽曲。パワフルなギターとシャウト気味のボーカルが印象的で、ライブで盛り上がること間違いなしのエネルギッシュなトラック。
7. Battered, Black & Blue (Hole in My Heart)
アルバムの中でも特にポップパンクの要素が強い楽曲。Blink-182やGreen Dayの影響を感じさせるキャッチーなサウンドで、リスナーに親しみやすいナンバー。
8. Pacific Coast Highway in the Movies (feat. Rivers Cuomo)
WeezerのRivers Cuomoをフィーチャーした、カリフォルニアらしいドライブ向けの楽曲。サーフロック的な軽快なビートと、キャッチーなメロディが心地よい。
9. Half Italian
ユーモラスな歌詞と軽快なリズムが特徴的な楽曲。実験的なアレンジが施されており、過去のAwolnationにはなかったスタイルを試みている。
10. I’m a Wreck
アルバムのラストを飾るバラード。静かなピアノと感情を吐露するようなAaron Brunoのボーカルが印象的で、傷ついた魂が再生していくストーリーが感じられる。
総評
Angel Miners & the Lightning Ridersは、Awolnationのキャリアの中で最もパーソナルで、最も多様な音楽スタイルが詰め込まれたアルバムである。
本作では、過去のエレクトロ・ロック的な要素に加え、ポストパンク、インダストリアル、ポップパンク、オルタナティブ・ロックの影響が混在し、バンドの音楽性が新たな方向へ進化した。
また、Aaron Bruno自身が経験した山火事や喪失感を反映した歌詞が、アルバム全体に深みを与えており、単なるロックアルバムではなく、「破壊と再生」の物語としてのコンセプト性を持った作品になっている。
一方で、楽曲ごとにスタイルが大きく異なるため、統一感を求めるリスナーにはややまとまりに欠けるように感じられるかもしれない。しかし、それこそが本作の魅力でもあり、混沌とした世界の中で生き抜くための多様なエネルギーを体現した作品と言えるだろう。
おすすめアルバム
- Nine Inch Nails – With Teeth (2005)
インダストリアルな要素とロックの融合が本作と共通。 - Blink-182 – California (2016)
ポップパンクのエネルギーとキャッチーなメロディが似ている。 - Weezer – The White Album (2016)
カリフォルニアらしい爽快なロックが「Pacific Coast Highway in the Movies」と共鳴。 - Twenty One Pilots – Trench (2018)
ポストパンクとエレクトロ、ヒップホップを融合した実験的なサウンドが本作とリンク。 - Muse – Simulation Theory (2018)
80年代の影響を感じさせるシンセロックと、オルタナティブ・ロックの融合が本作と共通する。
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