発売日: 1995年8月22日
ジャンル: パンクロック、スカパンク
1995年にリリースされたRancidの3作目『…And Out Come the Wolves』は、バンドのキャリアを代表する名盤であり、1990年代のパンクロックリバイバルの象徴的作品とされている。キャッチーなメロディとスカ、レゲエの影響を取り入れた楽曲が特徴で、このアルバムでRancidは商業的成功と批評的評価の両方を獲得した。タイトルは、バンドが成功の中で経験した裏切りや困難を比喩しており、攻撃的でエネルギッシュな楽曲の中に、切実な感情が込められている。
プロデューサーには、バンドと長年協力してきたブレット・グレウィッツ(Epitaph Recordsの創設者)が起用されており、Rancidの持つロウなエネルギーと洗練されたアレンジが共存するサウンドが作り上げられている。アルバムは「Time Bomb」や「Ruby Soho」といったヒット曲を生み出し、パンクロックシーンを超えて多くのリスナーを魅了した。
アルバム全体が、青春の苦悩や社会的不満、友情と裏切りをテーマにしており、そのメッセージ性とエネルギッシュなパフォーマンスがリスナーの心をつかむ。この作品は、Rancidをグリーン・デイやオフスプリングと並ぶ90年代パンクロックムーブメントのリーダー的存在へと押し上げた。
- トラックごとの解説
- 1. Maxwell Murder
- 2. The 11th Hour
- 3. Roots Radicals
- 4. Time Bomb
- 5. Olympia WA
- 6. Lock, Step & Gone
- 7. Junkie Man
- 8. Listed M.I.A.
- 9. Ruby Soho
- 10. Daly City Train
- 11. Journey to the End of the East Bay
- 12. She’s Automatic
- 13. Old Friend
- 14. Disorder and Disarray
- 15. The Wars End
- 16. You Don’t Care Nothin’
- 17. As Wicked
- 18. Avenues and Alleyways
- 19. The Way I Feel
- アルバム総評
- このアルバムが好きな人におすすめの5枚
トラックごとの解説
1. Maxwell Murder
アルバムのオープニングを飾る疾走感あふれるトラック。特にマット・フリーマンのベースソロが圧巻で、Rancidの技術力とエネルギーを象徴する一曲。歌詞は犯罪と裏社会をテーマにしており、アルバム全体のダークなトーンを示唆している。
2. The 11th Hour
社会的な絶望と個人的な闘争をテーマにした楽曲。ティム・アームストロングのざらついたボーカルとキャッチーなコーラスが印象的で、バンドのパンク精神が全面に押し出されている。
3. Roots Radicals
スカのリズムが取り入れられた楽曲で、Rancidの多様性を示す一曲。タイトルはレゲエのルーツミュージックへのオマージュで、歌詞には友情や反抗の精神が込められている。
4. Time Bomb
スカパンクの代表曲ともいえるヒット曲。アップテンポのリズムとキャッチーなメロディが特徴で、歌詞は犯罪や社会の抑圧に直面する若者を描いている。ホーンセクションが楽曲に明るさと深みを加えている。
5. Olympia WA
アルバムの中でも特にエモーショナルな楽曲。ツアー中の孤独感や、愛する人への想いが歌詞に込められている。シンプルな構成ながらも感情的なインパクトが大きい。
6. Lock, Step & Gone
激しいギターリフとスピーディーな展開が特徴のトラック。歌詞は権力に対する反抗心を描いており、バンドの反体制的な姿勢が色濃く反映されている。
7. Junkie Man
ザックリとしたギターサウンドと語りのようなボーカルが特徴の楽曲。ドラッグ中毒者の視点から描かれた歌詞が、社会の暗部をリアルに映し出している。
8. Listed M.I.A.
戦争や失われた命をテーマにしたメッセージ性の強い楽曲。バンドのパンクロックらしい怒りと切実さが全面に押し出されている。
9. Ruby Soho
アルバムの中でも特に有名な楽曲で、キャッチーなメロディと切ない歌詞が多くのリスナーの共感を呼んだ。ツアー生活の孤独感と、愛する人との別れがテーマとなっている。コーラスの「Destination unknown」が心に残る一曲。
10. Daly City Train
スカのリズムが際立つ楽曲で、友情や思い出をテーマにした歌詞が心温まる。軽快なビートとストレートなメッセージが印象的だ。
11. Journey to the End of the East Bay
Rancidのメンバーのバックグラウンドと、彼らの音楽に対する情熱を描いた楽曲。疾走感あふれるリズムと、パーソナルな歌詞がリスナーを引き込む。
12. She’s Automatic
ストレートなロックンロールの要素が強い楽曲。キャッチーなメロディと軽快なテンポが、アルバムの中で一息つけるポイントとなっている。
13. Old Friend
失った友情への思いを歌った切ない楽曲。シンプルな構成ながらも感情的なインパクトが大きく、バンドの人間味が感じられる。
14. Disorder and Disarray
激しいサウンドと攻撃的な歌詞が特徴のトラック。社会の混乱や抑圧への怒りが込められており、アルバム全体のテーマを反映している。
15. The Wars End
戦争と平和をテーマにした楽曲で、力強いメッセージ性が光る一曲。キャッチーなメロディとコーラスが耳に残る。
16. You Don’t Care Nothin’
個人的な裏切りや失望をテーマにした楽曲で、感情的な歌詞が心に響く。ギターリフとボーカルの絡みが印象的。
17. As Wicked
スカとパンクの融合が際立つ楽曲で、テンポの速い展開と明るいサウンドが特徴的。バンドの幅広い音楽性を感じられる一曲。
18. Avenues and Alleyways
都市の陰影を描いた楽曲で、Rancidのリアリズムが光る。歌詞には都会での生活の孤独感や葛藤が込められている。
19. The Way I Feel
アルバムの締めくくりを飾るエモーショナルなトラック。切ない歌詞とメロディが、アルバム全体のテーマをまとめ上げる。
アルバム総評
『…And Out Come the Wolves』は、Rancidの持つエネルギーと多様な音楽性を見事に融合させた名盤である。パンクロックの持つ反抗精神と、スカやレゲエのリズムが絶妙に組み合わさり、1990年代のパンクロックリバイバルの象徴的な作品となった。青春の苦悩や社会への不満を描きつつも、キャッチーなメロディと心に響く歌詞が、多くのリスナーの共感を呼び続けている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Smash by The Offspring
同時期にパンクロックのメインストリーム進出を果たした作品。キャッチーでエネルギッシュな楽曲が揃う。
Dookie by Green Day
1990年代のパンクロックリバイバルの代表作。疾走感と親しみやすいメロディが特徴的。
London Calling by The Clash
Rancidが強い影響を受けたバンド、The Clashの名盤。ジャンルを超えた多様なサウンドが楽しめる。
Energy by Operation Ivy
Rancidのメンバーが所属していたバンドの唯一のアルバムで、スカとパンクの融合が特徴。
Punk in Drublic by NOFX
ユーモアとエネルギーを兼ね備えた楽曲が揃う、90年代パンクの名盤。
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