1. 歌詞の概要
「Alive and Kicking」は、スコットランド出身のロックバンド、Simple Mindsが1985年にリリースした楽曲で、アルバム『Once Upon a Time』に収録されたシングルです。この曲は前作「Don’t You (Forget About Me)」の大ヒットに続いて発表された楽曲であり、バンドの80年代におけるスタジアム・ロック的サウンドを象徴するエネルギッシュなナンバーです。
歌詞は、文字通り「生きていて、まだ闘っている」状態、すなわち力強く生きることの肯定をテーマにしています。恋愛や人生において、困難に直面してもなお、情熱や希望を失わずに前進していく姿勢が描かれています。特定の物語を追うというよりは、生命力や再生、そして人間の強さに対する賛歌として構成されており、サウンドと同様に歌詞もポジティブなエネルギーに満ちています。
繰り返される「Stay alive and kicking(生きて、蹴り続けろ)」というフレーズは、精神的にも肉体的にも生き延びることの重要性を象徴しており、Simple Mindsがこの時期に見せていた自信とスケールの大きなビジョンを反映したものでもあります。
2. 歌詞のバックグラウンド
「Alive and Kicking」は、前作である映画『ブレックファスト・クラブ』の主題歌「Don’t You (Forget About Me)」の世界的ヒットの後に制作された楽曲であり、Simple Mindsが自らのサウンドと立ち位置を再定義するために非常に重要な意味を持つ作品でした。実際、「Don’t You」は外部のソングライターによって書かれた楽曲であったのに対し、「Alive and Kicking」はジム・カー(ヴォーカル)、チャーリー・バーチル(ギター)、そしてプロデューサーのスティーヴ・リリーホワイトとの共作による、彼ら自身の創造力から生まれた楽曲です。
この曲の持つスケール感とエネルギーは、彼らが本格的にスタジアムロックバンドとしての進化を遂げつつあった時期の象徴でもあり、U2やINXSといった同時代のバンドと肩を並べる存在へと飛躍していく中での代表作となりました。
また、サビでコーラスを務めるロビン・クラーク(David Bowieの『Young Americans』でのバックシンガー)によるソウルフルなハーモニーが、この曲にさらに熱量と感情を加えており、スピリチュアルな高揚感を生み出す要素として重要な役割を果たしています。
3. 歌詞の抜粋と和訳
以下に「Alive and Kicking」の印象的な一節を抜粋し、和訳を添えて紹介します。
You turn me on
君は僕を目覚めさせるYou lift me up
君は僕を引き上げてくれるLike the sweetest cup I’d share with you
君と分かち合う、甘く満たされたカップのようにYou lift me up
君は僕を引き上げてくれるDon’t you ever stop, I’m here with you
絶対に止まらないで、僕は君と一緒にいるNow it’s all or nothing
今やすべてか、ゼロかの世界さ‘Cause you’re alive and kicking
だって君は生きている、そして闘っているStay until your love is alive and kicking
君の愛が生きて、燃え続けている限り、ここにいてくれ
歌詞全文はこちらで確認できます:
Genius Lyrics – Alive and Kicking
4. 歌詞の考察
「Alive and Kicking」の歌詞は、明確なストーリーを語るというよりは、抽象的で詩的な表現を通じて、感情の高まりと生命の鼓動を伝えています。「君は僕を目覚めさせる」「引き上げてくれる」といった表現は、恋愛関係の親密さや精神的な支えを示しつつ、それが自己変革や再生の原動力になっていることを象徴しています。
特に「Now it’s all or nothing(今やすべてかゼロか)」というフレーズは、現実の中途半端さや妥協を拒絶し、完全に生きる、完全に愛するという姿勢を強く主張しています。これは、80年代における大きな音楽的スケール感と密接に結びついたメンタリティであり、Simple Mindsが単なる“ニューウェーブ・バンド”から、より広く人間の可能性を歌う存在へと成長した証とも言えるでしょう。
「Alive and Kicking」という言葉そのものが、生の力強さとポジティブな自己肯定を体現しており、この曲を聴くことで得られる高揚感は、音楽が精神的な起爆剤となり得ることを改めて教えてくれます。
引用した歌詞の出典は以下の通りです:
© Genius Lyrics
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Pride (In the Name of Love) by U2
歴史と希望、スピリチュアルな情熱を詩的に歌い上げた名曲。スタジアムロックの理想形として共鳴する。 - Don’t Change by INXS
変化する世界の中で自分自身を肯定する姿勢がテーマ。力強くもメロディアスなスタイルが似ている。 - Shout by Tears for Fears
感情の爆発と抑圧への抵抗をダイナミックに表現した一曲。“自分を解き放て”という精神が「Alive and Kicking」と重なる。 - Glory Days by Bruce Springsteen
過ぎ去った日々への愛惜と“今を生きる”ことの賛美。前向きなエネルギーとストーリーテリングの融合が印象的。
6. 80年代の精神を象徴する“生のアンセム”
「Alive and Kicking」は、Simple Mindsがポスト・パンクやニューウェーブの領域から飛び出し、グローバルなロックバンドとして躍進したことを決定づけた一曲です。それまでの彼らの持つ内省的で芸術性の高い側面から、より外に向かって発信する“生きる歓び”を表現する方向へと大きく舵を切ったのがこの楽曲でした。
音楽的には、広がりのあるギター、重厚なベース、ドラムの躍動感、そしてジム・カーの説得力あるボーカルが重なり合い、壮大でありながら情熱的なサウンドスケープを作り出しています。それはまさに“Alive and Kicking”──息づくように鳴動し続ける楽曲であり、リスナーに「今を生きること」の喜びと意味を改めて問いかける存在です。
この曲が持つエネルギーは、80年代の音楽が持っていたスケールの大きさや夢の大きさを如実に表しており、今なおライヴでは定番曲として愛され続けています。人生の分岐点や新たなスタートラインに立つとき、耳元で囁かれるように響く「Stay alive and kicking」という言葉は、時代を超えて心に火を灯し続けるのです。
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