発売日: 1967年11月27日
ジャンル: サイケデリックロック、エクスペリメンタルロック
アルバム全体の印象
「After Bathing at Baxter’s」は、Jefferson Airplaneが1967年にリリースしたセカンドアルバムであり、前作「Surrealistic Pillow」の成功を受けて、さらに実験的で野心的な方向性に踏み出した作品である。本作では、商業的なポップス要素を大幅に削ぎ落とし、代わりに長尺の楽曲、複雑なアレンジ、そして予測不能な構造が採用されている。カリフォルニアのサイケデリックシーンの頂点を象徴するアルバムとして、その影響力は計り知れない。
アルバムは5つのセクション(組曲)に分けられ、それぞれが独立したテーマと雰囲気を持ちながらも、アルバム全体として一貫したサウンドを形成している。ヨーマ・カウコネンのギター、ジャック・キャサディのベースライン、そしてグレイス・スリックとマーティ・バリンのボーカルが絶妙に絡み合い、夢幻的なサウンドスケープを作り上げている。
サイケデリック文化や自由な創造性を象徴するこのアルバムは、Jefferson Airplaneがその音楽的な探求を深めた瞬間を捉えた記念碑的な作品である。
各曲解説
セクション 1: Streetmasse
1. The Ballad of You and Me and Pooneil
アルバムのオープニングを飾る、壮大なトラック。カウコネンの実験的なギターとキャサディのファンキーなベースラインが印象的で、グレイスとマーティのボーカルが楽曲に深みを与えている。愛と自己探求をテーマにした歌詞が特徴。
2. A Small Package of Value Will Come to You, Shortly
実験的でシュールなインタールード的な楽曲。カットアップ的なコラージュが使用され、60年代のアヴァンギャルドな精神が色濃く反映されている。
3. Young Girl Sunday Blues
マーティ・バリンがリードボーカルを務めるキャッチーな楽曲。ブルースの要素とサイケデリックなアレンジが融合しており、アルバムの中でも比較的親しみやすい一曲。
セクション 2: The War is Over
4. Martha
静かなアコースティックギターと優雅なメロディが印象的なバラード。グレイス・スリックがコーラスを担当し、夢幻的な雰囲気を作り出している。愛と孤独をテーマにした詩的な歌詞が心に響く。
5. Wild Tyme (H)
アップテンポでエネルギッシュな楽曲。自由や反体制的なスピリットが歌詞に込められており、Jefferson Airplaneの力強いメッセージ性を感じる。
セクション 3: Hymn to an Older Generation
6. The Last Wall of the Castle
ヨーマ・カウコネンのリードギターが炸裂するハードなロックナンバー。ダイナミックな演奏が特徴で、アルバムの中でも特にライブ感が強い楽曲。
7. Rejoyce
グレイス・スリックが作詞作曲を手掛けた幻想的なトラック。クラシック音楽の影響を受けたアレンジと詩的な歌詞が際立ち、アルバムの中でも特に芸術性が高い一曲。
セクション 4: How Suite It Is
8. Watch Her Ride
マーティ・バリンがボーカルを務める楽曲で、愛と希望をテーマにしている。シンプルな構造ながらも、力強いメロディが印象的。
9. Spare Chaynge
約9分に及ぶインストゥルメンタルトラックで、即興演奏が中心。ヨーマ・カウコネンとジャック・キャサディによるギターとベースの掛け合いが見事で、アルバムの中で最も実験的なパートの一つ。
セクション 5: Schizoforest Love Suite
10. Two Heads
グレイス・スリックがリードボーカルを務める楽曲で、不穏な雰囲気とエキゾチックなメロディが特徴。精神的な混乱やアイデンティティをテーマにした歌詞が印象的だ。
11. Won’t You Try / Saturday Afternoon
アルバムを締めくくる壮大な組曲で、サイケデリック文化と自由への賛歌を描いた楽曲。リフレインが印象的で、アルバム全体をまとめるフィナーレにふさわしい一曲。
アルバム総評
「After Bathing at Baxter’s」は、Jefferson Airplaneが商業的成功を手にしながらも、実験性と自由な表現を追求する姿勢を鮮明にしたアルバムだ。複雑な構造と大胆なアプローチにより、リスナーに挑戦を突きつける内容となっている一方で、サイケデリックロックの枠を超えた芸術的な深みを持っている。
「The Ballad of You and Me and Pooneil」や「Rejoyce」のような楽曲は特に際立ち、バンドの多彩な才能を感じさせる。また、5つのセクションに分けられた構成はアルバムを一つの物語として聴く楽しみを与え、完成度の高いコンセプトアルバムとしても評価されている。60年代サイケデリックロックの真髄を知るうえで欠かせない一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
「The Piper at the Gates of Dawn」 by Pink Floyd
サイケデリックなアプローチと実験性が共通する。Jefferson Airplaneのファンにも楽しめる内容。
「Anthem of the Sun」 by Grateful Dead
サイケデリックシーンを代表するバンドのアルバムで、即興性と構築美が魅力的。
「Disraeli Gears」 by Cream
サイケデリックロックの名盤で、ブルースとロックの融合が特徴。カラフルなサウンドが共通している。
「Forever Changes」 by Love
フォークロックとサイケデリックロックが融合した傑作。詩的で幻想的な雰囲気が「Baxter’s」とリンクする。
「Axis: Bold as Love」 by The Jimi Hendrix Experience
実験的なギターサウンドとサイケデリックな雰囲気が、Jefferson Airplaneの作品と通じる部分が多い。
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