- 発売日: 2017年6月16日
- ジャンル: インディーロック、ドリームポップ、シンセポップ
Abysmal Thoughtsは、The Drumsの4作目のアルバムであり、バンドのフロントマンであるジョナサン・ピアースが一人で全ての楽曲制作と演奏を担当した作品である。メンバーの脱退によってピアース単独のプロジェクトとなったThe Drumsは、本作でより内省的かつ個人的なテーマを深く掘り下げ、アルバム全体を通じて失恋、自己探求、そして孤独に対する葛藤が強く表現されている。音楽的には、彼がこれまでのポップでノスタルジックなサウンドを引き継ぎながらも、さらにエモーショナルでダークな要素を加え、シンセポップとドリームポップの雰囲気が新たに加わっている。
アルバムタイトルの「Abysmal Thoughts（底なしの思考）」は、ピアースの暗い心情や、彼の人生における感情的な苦悩を反映しており、楽曲の多くがパーソナルな経験に基づいている。本作は、バンドの始まりから長い道のりを経て、一人で新しい始まりを迎えたピアースの再生と自己発見の旅ともいえる作品である。
トラック解説
1. Mirror
アルバムのオープニングトラックで、リズム感のあるビートとキャッチーなメロディが際立つ。歌詞には自己反省と内面の葛藤が描かれており、ピアースが自分と向き合う姿が感じられる。明るいサウンドに隠されたダークなリリックが、The Drumsの魅力をよく表している。
2. I’ll Fight for Your Life
力強いギターフックが印象的で、ピアースのエモーショナルなボーカルが響く。歌詞には愛や守りたい人に対する決意が込められており、メロディと共に希望が感じられる。
3. Blood Under My Belt
アルバムのリードシングルで、失恋と痛みをテーマにしたキャッチーな楽曲。切ない歌詞とアップテンポなメロディが対照的で、ポップでありながらも深い哀愁が漂っている。
4. Heart Basel
ミディアムテンポで進行する楽曲で、都会的な寂しさや孤独をテーマにしている。サビのメロディがキャッチーで耳に残り、ピアースのボーカルが切ない感情を伝える。
5. Shoot the Sun Down
静かなイントロから始まり、徐々に盛り上がる構成が特徴的。シンセとギターが絡み合い、夢幻的なムードが漂う一曲で、ピアースの切ない歌声が楽曲に深みを与えている。
6. Head of the Horse
アップテンポで軽快なビートが心地よいトラックで、日常のささやかな喜びと葛藤が歌われている。シンプルなギターリフがメロディを支え、聴き心地の良いリズムが印象的。
7. Under the Ice
暗く冷たいシンセサウンドが特徴的で、孤独感と不安が表現されている楽曲。歌詞には、心の深い闇に閉じこもってしまうような感情が込められており、ピアースのボーカルが感情をリアルに伝える。
8. Are U Fucked
タイトル通り強烈なメッセージが込められた一曲で、関係の終焉に対する苛立ちと諦めが歌われている。鋭いギターフックが楽曲にエッジを加え、ダークなムードが漂う。
9. Your Tenderness
アップテンポでノリの良いビートが特徴のトラック。失恋に対する複雑な感情と、再び求める優しさが歌詞に表現されている。軽快なサウンドと切ないリリックの対比が印象的。
10. Rich Kids
社会的な皮肉と皮肉の効いた歌詞が特徴で、タイトル通りの裕福な若者へのメッセージが込められている。ギターとシンセが絡み合い、ダンサブルなサウンドが心地よい。
11. If All We Share (Means Nothing)
アルバムの中でも特にエモーショナルなトラックで、失われた愛や価値観の崩壊が歌われている。スローテンポなビートと、ピアースの切々としたボーカルが楽曲に深い感情をもたらしている。
12. Abysmal Thoughts
タイトル曲で、アルバムの締めくくりにふさわしいエモーショナルなナンバー。孤独や不安をテーマにしながらも、前向きなメッセージが込められている。ドリーミーなサウンドと切ないメロディが美しい余韻を残す。
アルバム総評
Abysmal Thoughtsは、ジョナサン・ピアースが一人で制作したことで、The Drumsの中でも特にパーソナルで深みのある作品に仕上がっている。失恋や孤独、自己探求といったテーマが前面に出され、音楽的にはドリームポップやシンセポップの要素がさらに強調されている。キャッチーで明るいメロディの中に切ないリリックが隠され、ピアースの内省的な視点がリスナーに訴えかける。Abysmal Thoughtsは、The Drumsの新しいスタートとともに、ピアースの個人的な成長と自己発見を描いた感動的な作品である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- I See You by The Horrors
ドリーミーでエモーショナルなサウンドが特徴で、内省的なテーマが共通する。シンセサウンドとダークなリリックが響き合う。 - Stranger in the Alps by Phoebe Bridgers
孤独や内面的な葛藤をテーマにしたアルバムで、深い感情表現が際立つ。ピアースの個人的なリリックと共鳴する。 - Coexist by The xx
ミニマルでメランコリックなサウンドと、深いリリックが共通しており、The Drumsファンには親しみやすいアルバム。 - Currents by Tame Impala
シンセポップと内省的な歌詞が共通する一枚。ピアースの感情的なテーマに共感するリスナーにおすすめ。 - Let’s Go Extinct by Fanfarlo
ドリーミーでエモーショナルなサウンドと、自己探求のテーマが楽しめるアルバム。The Drumsの新たな音楽性と親和性がある。
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