The xx『xx』──余白の多い音楽が2010年代ポップに与えた影響

※本記事は生成AIを活用して作成されています。
TUNESIGHT DIALOGUE

※本記事は、TuneSightに登場する架空のライターによる創作対談です。


2009年に発表されたThe xxのデビュー作『xx』は、当時のインディーロックの中でも異様なほど音が少なかった。Romy Madley Croftのギターは短く、Oliver Simのベースは深く沈み、Jamie Smithのビートは必要な場所にだけ置かれる。RomyとOliverのヴォーカルも声量で押さず、互いの距離を測るように歌う。「Crystalised」「Islands」「VCR」「Infinity」といった曲には、大きなサビや分厚いアレンジがほとんどない。それでも『xx』は親密さと緊張感を同時に持ち、その後のインディーポップ、R&B、エレクトロニック・ポップへ通じる「少ない音ほど大きく聞かせられる」という感覚を象徴する作品になった。今回はNaomi、Alex、Marcusの3人が、『xx』の余白はどのように作られていたのか、そしてその美学が2010年代のポップに何を残したのかを考える。

※本記事は、TuneSightに登場する架空のライターによる創作対談です。

『xx』は本当に「音が少ない」アルバムなのか

Naomi

『xx』を説明するとき、「ミニマル」「余白が多い」と言えば間違いではないんですが、私はまず、単純にトラック数が少ないという話ではないと思うんです。重要なのは、鳴っている音が互いの場所を奪わないこと。「Intro」からそうで、ギター、ベース、ビートの輪郭がかなり離れて配置されている。結果として一つ一つの音が小さくても、非常に大きな存在感を持つんです。

Alex

ギターが典型ですよね。Romyはコードをジャーンと鳴らして空間を埋めることをほとんどしない。「Crystalised」でも、短いフレーズを一つ置いたら、次の音までかなり待つ。普通のインディーバンドなら、その隙間で別のギターを重ねるとか、シンバルを鳴らすとかしたくなる。でもThe xxは、その「何もない時間」を曲の一部として残している。

Marcus

それで面白いのは、リズムも同じなんですよ。Jamie xxのビートは、ヒップホップやR&Bを通過した耳で聴くとかなり理解しやすい。全部の拍を埋める必要はなくて、キックやスネアの位置で空白に意味を作る。だからロックバンドの編成なのに、アンサンブルの考え方は必ずしもロックではないんです。

Naomi

そうですね。ドラムが「時間を全部説明する」役割を放棄している。ハイハットを細かく刻んでテンポを明示し続けないから、ベースの一音やギターの減衰までリズムとして聞こえる。無音と実音の境界まで、グルーヴに参加しているんです。

Alex

僕はそこにポストパンク的な感覚も感じます。ギターを伴奏楽器ではなく、短い記号として置く発想。ただ、Gang of Fourみたいにカッティングで緊張を作るのではなく、もっと遅く、もっと柔らかい。攻撃性を抜いても、ギターの「置き方」だけ残っている感じがする。

Marcus

だから『xx』は音が少ないというより、音の責任が重いアルバムなんですよ。一個のスネア、一個のベース音、一回の息遣いが、その瞬間の空気を変える。音数を削ったから単純になったのではなく、削った結果、一つの音を適当に置けなくなっている。

Romyのギターはなぜ「小さい」のに曲を支配するのか

Alex

『xx』で一番驚くのは、Romyのギターがものすごく控えめなのに、一曲聴いたあと必ずフレーズを覚えていることです。「VCR」なんて特にそうで、複雑なコードを鳴らしているわけではないのに、短い単音の組み合わせが曲の人格になっている。ギターの役割を極端に限定したことで、逆に輪郭が強くなっているんです。

Naomi

音色も大事です。歪ませて倍音を増やすのではなく、かなりクリーンで、アタックのあとに余韻が残る。だからフレーズそのものより、音が消えていく過程まで聞こえる。リヴァーブも空間を埋めるためではなく、音と次の音の間に距離を作るために使われているように感じます。

Marcus

その距離感がヴォーカルと合うんですよね。RomyとOliverは感情を絶叫しない。二人ともかなり抑えた声で歌うから、ギターが派手に動くとバランスが崩れる。逆にギターが一歩引くことで、声のわずかな揺れや発音が前へ出る。

Alex

ロックギターの歴史には「少ない音で勝負する」という伝統もあるけれど、The xxはブルース的な表現力とも違う。一音をチョーキングして感情を込めるわけではなく、むしろ無表情に近い。でも、その無表情さが曲の親密さを壊さない。感情を説明しすぎないギターなんです。

Naomi

「Infinity」なんかは特に、ギターが感情の背景ではなく、感情の境界線を引いているように聞こえます。声が曖昧な関係性を歌っているところに、ギターが短い音で「ここまで」と区切る。その繰り返しによって、曲全体に妙な緊張が生まれる。

Marcus

だから後のインディーポップでよく見られる、クリーンなギターを短く置いて大量の余白を残すスタイルを考えると、The xxの存在はかなり大きいと思います。ただし表面だけ真似すると弱くなる。彼らの場合、ギターを減らした分、ベース、声、ビートとの関係まで設計されていたから成立したんです。

Oliver Simのベースはなぜ「低音」以上の役割を持ったのか

Marcus

『xx』でギター以上に重要なのがOliverのベースだと思うんです。普通、余白の多いアレンジは軽くなりやすい。でもThe xxはベースがかなり深い位置にいるから、音数が少なくても身体感覚が残る。「Basic Space」なんて、タイトル通り空間の曲だけれど、低音があるから抽象的なアンビエントにはならない。

Naomi

ベースが低域をずっと埋めるわけではないのも重要です。長い音を置いて、次にまた空白を作る。低音というのは持続させると空間全体を支配しますが、The xxはそれを切る。だからベースが鳴った瞬間だけ、床が突然現れるように感じるんです。

Alex

ギタリストからすると、あのベースがいるからRomyがあそこまで弾かなくて済むんですよ。コードのルート感や曲の重心をOliverが引き受けているので、ギターは装飾でも伴奏でもなく、完全に自由な位置へ行ける。パワートリオとは逆の発想ですね。三人で音を大きくするのではなく、三人で空白を分担する。

Marcus

そしてOliver自身がヴォーカルも取るから、ベースと声が心理的にもつながる。「Heart Skipped a Beat」みたいに低い声で歌うと、低域の楽器と人格が連続して聞こえる。Romyの声がもっと空中に浮くように聞こえるのに対して、Oliverの声は地面に近い。この男女の声の対比が、アルバム全体の奥行きを作っている。

Naomi

ミックスとしても面白いですよね。低域をただ巨大にするのではなく、中域を空けることでベースの存在を感じさせる。全部を太く録るのではなく、周囲を薄くすることで低音が大きく感じられる。これは後のミニマルなR&Bやエレクトロニック・ポップにもつながる考え方だと思います。

Alex

つまりThe xxは「小さい音」を作ったというより、相対的なスケールを使ったんですよね。周りが静かだからベースが巨大に聞こえ、周りが薄いからギターの一音が鋭く聞こえる。ロックが絶対的な音量で迫力を出すのに対して、彼らは対比で迫力を作った。

RomyとOliverのデュエットはなぜ恋愛を「会話」にしなかったのか

Marcus

僕が『xx』をR&B的な耳で面白いと思うのは、RomyとOliverのデュエットです。男女が交互に歌うと、普通は二人の会話として聴かせるでしょう。「あなたはこう思う」「私はこう思う」というドラマを作る。でもThe xxでは、二人が同じ部屋にいるのかさえ分からないような瞬間がある。

Naomi

声が重なっても、完全に一つにならないんですよね。同じメロディを力強くユニゾンして共同体を作るのではなく、少し距離を残して並ぶ。「Crystalised」なんて、その距離が曲の感情そのものになっていると思います。

Alex

ギターもその間に入ってこない。普通ならデュエットを盛り上げるためにコードを厚くしたり、ドラムを増やしたりする。でもThe xxは、二人の声が近づくほど周囲を静かにする。だからロマンティックなのに、安心できないんです。

Marcus

歌詞も、二人の関係を完全に説明しないでしょう。欲望や距離、ためらい、相手への執着があるのに、ドラマの設定が細かく提示されない。だから聴き手は物語を見るというより、関係性の「温度」だけを感じることになる。

Naomi

それが余白の美学と一致しています。音楽も歌詞も、情報を全部埋めない。何が起きているのかを説明しないから、声の間の沈黙まで意味を持つ。二人の声が止まった瞬間に、関係が切れたように感じることすらある。

Marcus

この方法は2010年代のポップやR&Bでかなり一般化したと思います。感情を大きなサビで言い切るより、短いフレーズと沈黙で親密さを作る。The xxだけが起源ではないけれど、インディーとR&Bの耳をつなぐ上で『xx』は非常に分かりやすい接点になったんです。

Jamie xxはロックバンドのドラムをどう「編集」したのか

Naomi

Jamie xxの存在を抜きに『xx』の余白は説明できません。彼のリズムは、生ドラムを演奏するように全小節を埋めるのではなく、サンプラー的に必要な瞬間だけ音を置く。だから一つのキックやリムショットが、演奏というより編集点のように聞こえるんです。

Marcus

ヒップホップやUKのクラブミュージックを聴いている人には自然な感覚ですよね。ドラムが「ドラマーの身体」を見せる必要がない。反復していても、どの音を抜くかでグルーヴを作る。The xxはそれをギターバンドの文脈へ持ち込んだから新鮮に聞こえた。

Alex

ロックのドラマーだったら埋めたくなる場所が相当ありますよね。「Islands」なんか、スネアをもっと入れても曲としては成立する。でもJamieはやらない。その結果、RomyのギターやOliverのベースがリズムとして聞こえてくる。ドラムが引いたことで、ほかの楽器が打楽器化するんです。

Naomi

しかもサウンド自体も乾いています。大きなルームアンビエンスや派手なシンバルで空間を埋めず、短い音をかなり近い位置に置く。声やギターには余韻があるのに、ビートは乾いている。この差が、曲をぼんやりしたドリームポップにしない。

Marcus

そこは重要です。もし全部に大量のリヴァーブをかけていたら、『xx』はもっと夢見心地になっていた。でもJamieのビートが輪郭を残すので、感情の距離感が現実的なんです。柔らかいけれど、曖昧ではない。

Alex

だからライブでも成立したんでしょうね。音源では静かなのに、ビートとベースの位置が明確なので、大きい音で鳴らすと意外に強い。繊細な音楽と大音量が矛盾しない。その点も、後のフェスティバル世代のインディーにかなり影響したと思います。

「Intro」はなぜ歌がないのにThe xxを代表できたのか

Alex

「Intro」があれほど象徴的になったのは面白いですよね。ヴォーカルがないのに、The xxとは何かをかなり説明してしまう。短いギターの反復、深いベース、抑制されたビート。この三つだけで、音の距離感が全部分かる。

Naomi

あの曲は、音を足して展開するのではなく、同じ素材の見え方を変えていくんです。小さな変化しか起きないのに、徐々にスケールが大きく感じられる。これはクラブミュージック的なビルドアップとも違って、かなり静かな増幅です。

Marcus

それなのに映像やスポーツ中継など、別の文脈に置かれても強く機能したのは、歌詞による意味の固定がないからでしょうね。勝利にも緊張にも孤独にも使える。『xx』全体の「意味を決めすぎない」美学が、インストゥルメンタルだとさらに明確になる。

Alex

ギターのフレーズも面白いです。典型的なロックのリフなら「このリフが曲を支配している」と分かる。でも「Intro」は支配というより空間の輪郭を描く。誰かが大声を出しているのではなく、同じ形を何度も見せることで記憶に刻む。

Naomi

そしてビートが過剰に盛り上げない。もし後半で大きなクラッシュシンバルやベースドロップを入れたら、普通の「高揚するイントロ」になったと思う。でもThe xxは最後まで自制する。頂点を作らないことで、逆にどこまでも続くような印象を残すんです。

Marcus

2010年代のポップで増えた「サビで全部爆発しない曲」を考えると、この自制は重要です。聴き手を満足させるために最大音量まで行かなくてもいい。ある緊張を保ったまま終わること自体が快感になる。その感覚をインディーの大きな文脈で可視化した曲の一つだと思います。

『xx』の静けさはR&Bとどこでつながっていたのか

Marcus

The xxをインディーロックの歴史だけで見ると、半分しか分からないと思います。RomyとOliverの歌の置き方、Jamieのビート、低音の扱いには、R&Bの親密さとかなり共通するところがある。声を大きく張らず、ビートの上でささやくように歌う感覚ですね。

Naomi

空間の使い方もそうです。90年代後半から2000年代のR&Bやヒップホップには、低域とヴォーカルを残して中域をかなり空けるプロダクションがありました。The xxはそれをそのまま使ったわけではないけれど、「隙間は欠落ではなくグルーヴになる」という考え方は共通しています。

Alex

そこが当時のギターバンドとして変だったんですよ。インディーロックって、音を足すことで個性を作る方向も強かった。ギターを何本も重ねたり、ノイズを増やしたり、ドラムを大きくしたり。でもThe xxは逆にR&B的な空間感覚を持ち込んで、ギターを最小限にした。

Marcus

そしてRomyとOliverのデュエットも、R&Bの男女デュエットを極端に内向きへしたような聞こえ方がある。劇的に歌い上げないけれど、二人の声の距離だけで関係性を作る。愛や欲望を声量で証明しないんです。

Naomi

Jamie xxが後にソロでクラブミュージックへより直接的に接近したことを考えても、『xx』の時点でリズムの耳はかなりバンド外へ開いていたと思います。だからThe xxはギター・バンドなのに、後の電子ポップやR&Bから振り返っても古くならない。

Marcus

2010年代にはインディーとR&Bの境界自体がかなり薄くなりましたよね。The xxはその流れの唯一の原因ではないけれど、「インディーバンドがR&Bの空間感覚を持っていてもいい」ということを自然に見せた。その意味ではかなり象徴的な存在です。

2010年代ポップは「大きなサビ」を本当に必要としなくなったのか

Naomi

『xx』以降のポップで私が一番大きい変化だと思うのは、「音が少ないことを未完成とみなさない」感覚が広がったことです。2010年代には、低いベース、短いビート、近いヴォーカルだけで曲を成立させるプロダクションがかなり増えた。The xxだけの影響ではありませんが、彼らはその美学を非常に強い形で提示した。

Marcus

特にR&Bやオルタナティブ・ポップでは、ヴォーカルを大きなバックトラックの上に乗せるより、声の周囲を空ける方向が強くなった。James Blakeや後のBillie Eilishまで一直線の影響関係を作るのは雑ですが、「静かな曲でも巨大な文化的存在になれる」という感覚は共有されています。

Alex

ギター音楽にも影響がありましたよね。クリーンギターを短く鳴らして、ドラムを極端に簡略化するインディーポップが増えた。ただ、The xxのコピーが弱く聞こえる場合も多かった。なぜなら彼らの音数の少なさはファッションではなく、全パートの相互依存で成立していたからです。

Naomi

そう。ミニマルにするというのは単にトラックをミュートすることではないんです。残った音に十分な質感と配置が必要になる。『xx』ではベースの深さ、声の近さ、ギターの余韻、ビートの乾きがそれぞれ違う空間を持っている。だから少なくても平面にならない。

Marcus

それと、2010年代のストリーミング時代との相性も結果的には良かったと思います。イヤホンで近いヴォーカルを聴く文化の中では、過剰に大きなサウンドより、耳元で起きているような音楽が強く感じられる。ただし『xx』はストリーミング向けに設計された作品ではなく、その前段階でこの親密さを完成させていた。

Alex

つまり後から時代がThe xxに追いついた部分もある。2009年には「こんなに音がなくていいのか」という驚きがあったのに、2010年代半ば以降になると、むしろ音を詰め込みすぎないことが洗練の記号になっていく。そこまで感覚が変わったんです。

「余白」は親密さだけでなく、不安も作っている

Alex

『xx』ってよく「親密」「静か」と言われますけど、僕はかなり不安なアルバムだと思うんです。「Fantasy」や「Infinity」を聴いていると、二人の間にある距離が全然埋まらない。音が少ないから、その距離が可視化される。

Marcus

そうですね。余白はロマンティックな空間だけではない。返事が来ない時間にも聞こえる。二人で歌っているのに、互いが完全には届いていない。その感覚が恋愛の曲を甘くしすぎないんです。

Naomi

ミックスもその心理を支えています。声が非常に近く聞こえる瞬間と、残響で少し遠く感じる瞬間がある。物理的な距離が一定ではないんですよ。だから「同じ部屋にいる二人」というより、記憶や想像の中で声が近づいたり離れたりするように聞こえる。

Alex

ギターの単音も、返答のように機能することがあります。歌が止まったあとに短いフレーズが鳴ると、言葉の続きを弾いているように聞こえる。でもそれも完全な回答ではない。The xxには「言い切らない」ことが徹底されています。

Marcus

だから2010年代ポップへの影響を「ミニマルなサウンドが流行った」だけで終わらせると浅い。もっと重要なのは、空白そのものに感情を持たせる方法が広がったことです。沈黙、ブレス、ビートの欠落、ヴォーカルの途切れを、演出として積極的に使うようになった。

Naomi

そしてその余白は、音量を下げても緊張を維持する技術でもあります。派手な展開がないのに聴き手が離れないのは、何かが起こるのを待たせ続けるから。『xx』は「何も起きない音楽」ではなく、「起きそうで起きない状態」を非常に長く保てる音楽なんです。

『Coexist』と『I See You』から見ると、『xx』の特殊さが分かる

Naomi

後の作品と比較すると、『xx』がどれほど独特なバランスだったかが見えます。『Coexist』(2012年)はさらに空間を広げ、ビートの存在もかなり抽象的になる。一方『I See You』(2017年)ではJamieのクラブミュージック的な感覚がもっと前へ出て、音に色彩と動きが増える。

Alex

僕は『Coexist』をかなり好きですが、『xx』ほど即座には入ってこないんですよね。デビュー作にはまだギターバンドとしての骨格がはっきり残っている。Romyのフレーズも覚えやすく、Oliverのベースも曲を支える。その構造があるから、余白が実験に聞こえない。

Marcus

『I See You』になると「On Hold」みたいにサンプルの使い方が明確で、The xxがクラブやポップへ開いていく。でもそこで逆に、デビュー作の閉鎖性がどれほど重要だったか分かる。『xx』は外の世界に向かって大きく手を広げない。その小さな部屋の中だけで完結している感じが強い。

Naomi

それでも音響的には窮屈ではないんですよ。部屋は小さいのに、音と音の距離は広い。この矛盾がすごい。後の作品は実際に空間を拡張していくけれど、デビュー作は限られた色だけで奥行きを作っている。

Alex

だから模倣しにくいんでしょうね。表面的には簡単そうに聞こえる。クリーンギターを少し、ベースを少し、ドラムマシンを少し。でも本当に必要なのは、その少なさを支える曲の強さと演奏の精度です。簡単そうに聞こえる音楽ほど、誤魔化しが利かない。

Marcus

そして『xx』が2010年代へ残したものも、特定の音色よりその判断基準だと思います。「この音は本当に必要か」と問い続けること。ポップミュージックは足すことで豪華になれるけれど、引くことで親密さも巨大さも作れる。その考え方が広がったんです。

最高傑作は『xx』なのか、そして一曲だけ選ぶなら

Alex

The xxの最高傑作なら、僕はやっぱり『xx』です。後の作品の方が音響的に広いし、Jamieの成長も分かる。でもデビュー作には、バンドが自分たちの限界をそのまま個性へ変えた強さがある。「こういう音楽を作ろう」とデザインしたというより、三人の演奏の距離そのものがスタイルになった感じがするんです。

Naomi

私も『xx』ですね。音響設計の完成度が高いのに、作為が表面へ出すぎない。少ない音を広く配置し、それぞれに違う質感を与えることで、アルバム全体が一つの静かな建築物になっている。デビュー作でここまで空間のルールが確立されているのは珍しいです。

Marcus

一曲なら僕は「Crystalised」を選びます。二人のヴォーカル、ベース、ギター、ビートが全部あるのに、誰も曲を支配しない。関係性が歌詞だけでなくアレンジそのものにあるんです。The xxがなぜ単なるミニマルなインディーバンドではなかったか、一曲で分かる。

Alex

僕は「VCR」です。ギターがあれほど少ないのに、一音一音が記憶に残る。曲全体の温度もすごくThe xxらしい。甘いけれど、少し距離があって、ノスタルジックなのに何の思い出かは決められない。

Naomi

私は「Intro」を選びます。歌がなくても、このバンドの余白、低音、反復、空間が全部分かる。しかもインストゥルメンタルだからこそ、『xx』の影響がヴォーカルスタイルや歌詞ではなく、音の配置そのものにあったことが見えやすいんです。

Marcus

過小評価された曲なら「Basic Space」ですね。タイトルがそのまま彼らの方法論を言い当てているように感じる。ベースとビートは身体を支えるけれど、声とギターの周囲にはまだ大量の空間がある。『xx』の余白が装飾ではなく、グルーヴそのものだったことがよく分かる曲です。

Alex

僕は「Infinity」。後半へ向かって感情は強くなるのに、典型的なロックのクライマックスへは行かない。もっと鳴らせるのに鳴らさない。その我慢が一番The xxらしいし、2010年代のポップが学んだものも、結局そこだったんじゃないかと思います。

対談を終えて

The xxの『xx』が2010年代ポップへ残したものは、「音数を減らせばおしゃれになる」という表面的なミニマリズムではなかった。Romy Madley Croftの短いギター、Oliver Simの深いベース、Jamie xxの乾いたビート、そして二人のヴォーカルの距離は、それぞれが相手の場所を空けることで初めて成立している。そこで無音は不足ではなく、次の一音を大きくするための空間になり、沈黙は親密さだけでなく不安やためらいまで表現した。2010年代に広がったミニマルなR&B、インディーポップ、エレクトロニック・ポップのすべてを『xx』の直接的影響として語ることはできない。それでもこの作品が、「大きなサビや分厚いアレンジがなくても、ポップは十分に強くなれる」という感覚を象徴したことは大きい。『xx』の革新性は静かだった。しかし、その静けさによって、ポップミュージックに残された「鳴らさない場所」まで作品の一部にした。

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