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NWOBHMを知るなら、まず代表曲から
NWOBHMはアルバム単位で聴くとシーンの広がりが見えやすいが、最初の入口としては代表曲から入るのがわかりやすい。鋭いギターリフ、疾走するリズム、ツインギターのハーモニー、力強いボーカル、ライブ会場で映えるサビが、一曲の中に凝縮されているからである。
1970年代末から1980年代初頭のイギリスでは、Black SabbathやJudas Priest、UFO、Thin Lizzyなどの影響を受けた若いバンドが、より速く、より鋭いメタルを鳴らし始めた。パンク以後のスピード感やDIY的な空気も加わり、NWOBHMはヘヴィメタルを次の時代へ押し出す重要なムーブメントになった。
ここでは、NWOBHMの魅力がわかる代表曲を10曲紹介する。Iron MaidenやSaxonの王道から、Diamond Headのリフ、Def Leppardのメロディ、Venomの過激さまで聴いていくと、このジャンルが後のスラッシュメタル、パワーメタル、アリーナ・ロックへどれほど広がったかが見えてくる。
NWOBHMとはどんなジャンルか
NWOBHMは、「New Wave of British Heavy Metal」の略で、1970年代末から1980年代初頭にかけてイギリスで広がったヘヴィメタルのムーブメントである。1970年代ハードロックの重いギターや長いソロを受け継ぎながら、よりコンパクトで速く、若い世代のクラブシーンに合う音へ変化させた。
音楽的には、鋭いギターリフ、速いテンポ、ツインギターのハーモニー、力強いボーカル、荒さを残した録音が特徴である。Iron Maidenのようにドラマチックな曲展開を得意とするバンドもいれば、Saxonのようにストレートなリフで押すバンド、Def Leppardのようにメロディ重視の方向へ進んだバンドもいる。
親ジャンルとしてはメタルに位置づけられるが、ハードロックやパンク・ロックとも深く関係している。後のスラッシュメタル、パワーメタル、ブラックメタル、ポップ・メタルにも大きな影響を与えた。オルタナティブ・ロックの一部にも、初期メタルのリフやNWOBHM的な鋭さを参照する流れは見られる。
NWOBHMの代表曲10選
1. Run to the Hills by Iron Maiden
「Run to the Hills」は、1982年発表のアルバム『The Number of the Beast』に収録されたIron Maidenの代表曲である。Iron MaidenはNWOBHMを代表する最重要バンドであり、Steve Harrisのベースを軸にした疾走感、ツインギターのハーモニー、物語性のある歌詞、ドラマチックな曲展開でヘヴィメタルを世界的な音楽へ押し上げた。
この曲では、駆け抜けるようなリズム、Bruce Dickinsonの高く伸びるボーカル、印象的なギターラインが一体になっている。曲はコンパクトだが、展開には大きなスケールがあり、NWOBHMが単なる荒いローカルシーンの音から、世界中の会場で鳴るヘヴィメタルへ進化していく力を示している。
初心者には、NWOBHMの王道を知る最初の一曲としておすすめできる。速さ、メロディ、歌の強さ、ライブ映えするサビがそろっており、Iron Maidenの魅力を短い時間で体感できる。
2. Wheels of Steel by Saxon
「Wheels of Steel」は、1980年発表の同名アルバムに収録されたSaxonの代表曲である。SaxonはNWOBHMの王道を支えたバンドであり、Iron Maidenほどドラマチックではなく、Def Leppardほどポップでもない、骨太でストレートなヘヴィメタルを鳴らした。
この曲の魅力は、シンプルで強いギターリフと、ライブ会場で観客を巻き込むようなコーラスにある。テンポは極端に速いわけではないが、リズムは重く、ギターは太く、Biff Byfordのボーカルには力強いロック感がある。バイクやツアーを思わせる世界観も、Saxonらしい労働者的なメタル感覚につながっている。
初心者には、NWOBHMのストレートな魅力を知る曲として最適である。複雑な構成ではなく、リフとビートの気持ちよさで押し切るタイプのメタルを味わえる。
3. Am I Evil? by Diamond Head
「Am I Evil?」は、1980年発表のアルバム『Lightning to the Nations』に収録されたDiamond Headの代表曲である。Diamond Headは商業的な成功ではIron MaidenやDef Leppardほど大きくなかったが、後のスラッシュメタルに与えた影響の大きさではNWOBHMの中でも特に重要なバンドである。
この曲は、重々しいイントロから始まり、鋭いリフとドラマチックな展開で進んでいく。ギターリフには緊張感があり、曲全体には荒削りながらも強い構成力がある。Metallicaが取り上げたことでも知られ、NWOBHMのリフが1980年代以降のメタルへどう受け継がれたかを知るうえで重要な一曲である。
初心者には、Iron Maidenのメロディアスな疾走感とは違う、リフ主体のNWOBHMを知る曲としておすすめできる。スラッシュメタルへの入口としても聴きやすい。
4. Photograph by Def Leppard
「Photograph」は、1983年発表のアルバム『Pyromania』に収録されたDef Leppardの代表曲である。Def LeppardはNWOBHMの中から登場しながら、後にアリーナ・ロックやポップ・メタルの代表格へ進んだバンドである。シェフィールド出身の若いハードロックバンドが、メインストリームへ向かう過程を示した存在といえる。
この曲では、ギターの厚み、整えられたコーラス、明快なサビが強く印象に残る。初期NWOBHMの荒さは薄まりつつあるが、リフの勢いとロックバンドとしての力強さは残っている。Mutt Langeによるプロダクションの影響もあり、音は非常に磨かれている。
初心者には、NWOBHMが地下的なメタルだけでなく、ポップで巨大なロックへも発展したことを知る曲として聴きやすい。メタルに慣れていない人でも入りやすい、メロディ重視の代表曲である。
5. Angel Witch by Angel Witch
「Angel Witch」は、1980年発表のアルバム『Angel Witch』に収録されたAngel Witchの代表曲である。Angel Witchはロンドンを拠点に活動したNWOBHMの重要バンドで、暗い雰囲気、鋭いギターリフ、メロディアスなサビを組み合わせたサウンドで知られている。
この曲は、シンプルなリフと覚えやすいコーラスを持ちながら、どこか不穏な空気をまとっている。Black Sabbath以降の暗さを引き継ぎつつ、NWOBHMらしいテンポ感と若いバンドの勢いが加わっている。大規模なヒット曲というより、ジャンル内で長く愛されてきた象徴的な楽曲である。
初心者には、Iron MaidenやSaxonの王道を聴いたあとにおすすめしたい。より地下的で、少し妖しいNWOBHMの魅力が伝わる曲である。
6. Running Free by Iron Maiden
「Running Free」は、1980年発表のデビュー・アルバム『Iron Maiden』に収録された初期Iron Maidenの代表曲である。Bruce Dickinson加入前、Paul Di’Annoがボーカルを務めていた時期の楽曲で、後の壮大なIron Maidenとは違うストリート感と荒さがある。
この曲は、シンプルなリズムと覚えやすいサビが特徴である。Steve Harrisのベースはすでに存在感が強く、バンド全体にパンク以後の勢いがある。後年の長尺でドラマチックな曲と比べると構成はかなり直線的だが、NWOBHM初期のクラブシーン的な熱気がよく伝わる。
初心者には、「Run to the Hills」と聴き比べるとわかりやすい。「Running Free」では初期の荒々しさが、「Run to the Hills」では完成されたヘヴィメタルとしてのスケールが聴ける。
7. Hit and Run by Girlschool
「Hit and Run」は、1981年発表の同名アルバムに収録されたGirlschoolの代表曲である。Girlschoolは女性メンバーによるイギリスのハードロック/ヘヴィメタルバンドであり、Motörheadとの関係でも知られるNWOBHMの重要バンドである。
この曲では、コンパクトな曲構成、明快なギターリフ、勢いのあるボーカルとコーラスが前面に出ている。過度に技巧的ではなく、バンド全体のロックンロール感で押し切るタイプの楽曲である。パンク以後の荒さ、ハードロックの骨太さ、NWOBHMのメタル感が自然に混ざっている。
初心者には、NWOBHMの中でも比較的入りやすい一曲である。重すぎず、長すぎず、リフとサビの強さで楽しめる。Motörheadのような荒いロックンロールが好きな人にも相性がよい。
8. Don’t Need Your Money by Raven
「Don’t Need Your Money」は、1981年発表のアルバム『Rock Until You Drop』に収録されたRavenの代表曲である。Ravenはニューカッスル出身のバンドで、スピード感のある演奏と激しいパフォーマンスによって知られ、NWOBHMの中でも特に荒々しい側面を担った。
この曲は、突進するリズム、ハイトーン気味のボーカル、暴れるようなギターが特徴である。整ったメロディよりも、テンションと勢いを重視しており、後のスピードメタルやスラッシュメタルにもつながる感覚がある。録音の荒さも含めて、初期NWOBHMの生々しさをよく残している。
初心者には少し荒く感じられるかもしれないが、NWOBHMがどれほど速く、攻撃的になり得たかを知るには重要である。Saxonの骨太な王道から、さらに過激な方向へ進む橋渡しになる。
9. Countess Bathory by Venom
「Countess Bathory」は、1982年発表のアルバム『Black Metal』に収録されたVenomの代表曲である。VenomはNWOBHMの中でも最も過激な方向へ進んだバンドであり、後のスラッシュメタル、ブラックメタル、デスメタルなど、エクストリームメタル全体に大きな影響を与えた。
この曲は、整った演奏よりも荒い衝動と不穏なイメージが重要である。Motörhead的なロックンロールの勢い、パンクの粗さ、初期メタルの暗さが混ざり、独特の攻撃性を生んでいる。音は粗く、ボーカルも荒々しいが、その過剰さこそがVenomの個性である。
初心者には最初から聴きやすい曲ではないが、NWOBHMの影響がどれほど極端なメタルへ広がったかを知るには欠かせない。Iron MaidenやDef Leppardとは正反対の方向にある重要曲である。
10. Vice Versa by Samson
「Vice Versa」は、1980年発表のアルバム『Head On』に収録されたSamsonの代表的な楽曲である。SamsonはNWOBHM初期の重要バンドであり、後にIron Maidenへ加入するBruce Dickinsonが在籍していたことでも知られる。彼がまだBruce Bruce名義で活動していた時期の荒削りな魅力が聴ける。
この曲では、ブルース・ロック由来の重さと、NWOBHMらしい勢いが組み合わされている。Iron Maiden加入後のBruce Dickinsonのような完成されたメタル・ボーカルとは違い、Samsonではよりラフで、ハードロック寄りの歌唱が前面に出ている。曲全体にも、クラブシーンから生まれたバンドらしい現場感がある。
初心者には、Iron Maidenを聴いたあとに触れると理解しやすい。NWOBHMが完成された大作志向のメタルだけでなく、もっと荒削りで現場に近い音楽だったことがわかる一曲である。
初心者におすすめの3曲
初心者が最初に聴くなら、「Run to the Hills」「Wheels of Steel」「Photograph」の3曲がおすすめである。
「Run to the Hills」は、NWOBHMが世界的なヘヴィメタルへ広がったことを最もわかりやすく示す曲である。疾走感、ツインギター、ボーカルの強さ、サビの大きさがそろっており、正統派メタルの入口としても聴きやすい。
「Wheels of Steel」は、NWOBHMのストレートなリフとライブ感を体感できる曲である。難しい構成ではなく、ギターとリズムの骨太な魅力で押し切るため、ジャンルの基本がつかみやすい。
「Photograph」は、NWOBHMからメインストリームのロックへ広がる流れを知る曲である。ギターの迫力を保ちながら、メロディとコーラスは非常にキャッチーで、メタルに慣れていない人にも入りやすい。
関連ジャンルへの広がり
NWOBHMを聴いたあとに広げるなら、まずは1970年代ハードロックとクラシック・メタルの流れを押さえると理解しやすい。Black Sabbath、Judas Priest、UFO、Thin Lizzyなどを聴くと、NWOBHMのバンドたちがどのようなリフ、ツインギター、ボーカル表現を受け継いだのかが見えてくる。
一方で、NWOBHMは後のスラッシュメタルやパワーメタルだけでなく、オルタナティブ・ロックの重いギター感覚にも間接的な影響を残している。Diamond HeadのリフがMetallicaをはじめとする後続に影響を与えたように、NWOBHMの鋭いギターは1980年代以降の重いロックを考えるうえで重要な土台になった。
関連ジャンルとして挙げられるインディー・ポップやエレクトロニカとは、音楽的な距離は大きい。ただし、ローカルなシーンからバンドが自主的に音源を出し、雑誌やライブハウスを通じて広がっていった点では、後のインディー文化と比較して考えることもできる。NWOBHMはメタルの歴史であると同時に、地方の若いバンド文化が可視化されたムーブメントでもある。
まとめ
NWOBHMの代表曲を聴くと、このムーブメントが一つの音だけで成り立っていたわけではないことがわかる。Iron Maidenは疾走感とドラマ性によって正統派メタルの大きな型を作り、Saxonはストレートなリフとライブ感でシーンを支えた。Diamond Headはリフの鋭さで後のスラッシュメタルへ影響を与え、Def Leppardはメロディとプロダクションによってメインストリームへ進んだ。
Angel Witchは地下的で不穏な初期メタルの魅力を示し、Girlschoolはロックンロール寄りの力強さを鳴らした。Ravenはスピードと荒々しさを強め、Venomはエクストリームメタルへつながる過激さを提示した。Samsonは、NWOBHM初期の現場感と荒削りなハードロック感を伝える重要な存在である。
最初は「Run to the Hills」でスケールの大きな正統派メタルを知り、「Wheels of Steel」で王道のリフを体感し、「Photograph」でメインストリームへ開かれたサウンドを聴くとよい。そこから「Am I Evil?」「Angel Witch」「Countess Bathory」へ進めば、NWOBHMが後のメタルに与えた影響をより立体的に理解できる。

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