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グラム・メタルを知るなら、まず定番アーティストから
グラム・メタルは、ハードロック/ヘヴィメタルの重量感と、ポップなメロディ、大きなコーラス、華やかなビジュアルを結びつけ、1980年代に巨大な人気を獲得したジャンルである。特にロサンゼルスのサンセット・ストリップ周辺から多くのバンドが登場し、MTV時代を象徴するロックのひとつとなった。
一口にグラム・メタルといっても、Mötley Crüeのような攻撃的なバンド、Poisonのようにポップなバンド、Bon Joviのようにスタジアム規模のアンセムを得意とするバンドなど、その音楽性にはかなり幅がある。
まず代表的な10組を聴き比べれば、グラム・メタルが単なる派手なファッションのムーブメントではなく、1970年代のハードロックを1980年代型のポップミュージックへ接続した重要な流れだったことが見えてくる。
グラム・メタルとはどんなジャンルか
グラム・メタルは1970年代のハードロックやヘヴィメタル、グラムロックなどを背景として形成され、1980年代のアメリカで大きく発展した。ヘヴィなギターリフや速弾きのギターソロを使いながら、覚えやすいメロディとコーラスを重視するのが基本的な特徴である。
外見では長い髪、派手な衣装やメイクが目立ち、「ヘア・メタル」と呼ばれることもある。ただし音楽的には、Van Halen以降の技巧的なギタープレイ、AerosmithやKissなどのショーマンシップ、1970年代ハードロックのリフ、ポップスのメロディなど複数の要素が混ざっている。
1980年代後半にはパワーバラードも重要な様式となり、ハードな曲と大規模なバラードを同じアルバムに収録するスタイルが一般化した。グラム・メタルを理解するには、その基盤となったハードロックとのつながりを意識するとわかりやすい。
グラム・メタルの定番アーティスト10選
1. Mötley Crüe
1981年にロサンゼルスで結成されたMötley Crüeは、グラム・メタルの形成期からシーンを牽引した代表的バンドである。派手なビジュアルだけでなく、パンク的な荒々しさとヘヴィメタルのリフを組み合わせた攻撃的なサウンドを持っていた。
代表作には『Shout at the Devil』『Dr. Feelgood』などがある。特に『Shout at the Devil』では初期のダークで荒々しい魅力を、『Dr. Feelgood』ではより洗練された大規模なハードロックサウンドを楽しめる。
初心者なら「Dr. Feelgood」から聴くとよい。重いギターリフ、Tommy Leeのドラム、Vince Neilの特徴的なヴォーカルというバンドの持ち味が凝縮されている。
2. Ratt
ロサンゼルスのシーンから登場したRattは、1980年代グラム・メタルのギターサウンドを理解するうえで重要なバンドである。1984年のアルバム『Out of the Cellar』によって大きな成功を収めた。
Rattの魅力は、Warren DeMartiniらによる鋭いギターワークと、Stephen Pearcyの乾いたヴォーカルにある。ポップなフックを持ちながら、演奏にはハードロックらしい緊張感があり、後続のバンドにも影響を与えた。
最初に聴くなら代表曲「Round and Round」がわかりやすい。キャッチーなコーラスと印象的なギターリフが両立した、1980年代グラム・メタルの典型的な一曲である。
3. Bon Jovi
1983年にニュージャージーで結成されたBon Joviは、グラム・メタルとポップなスタジアムロックを結びつけ、世界的な成功を収めたバンドである。
1986年の『Slippery When Wet』は代表作で、「You Give Love a Bad Name」「Livin’ on a Prayer」「Wanted Dead or Alive」などを収録している。巨大なコーラス、覚えやすいメロディ、Richie Samboraのギターを軸としたサウンドは、ハードロックを普段聴かない層にも届くものだった。
グラム・メタル初心者には特に入りやすい存在である。「Livin’ on a Prayer」から聴けば、この時代のアリーナ向けハードロックが持っていたポップ性をすぐに理解できる。
4. Poison
1980年代半ばにロサンゼルスのシーンで頭角を現したPoisonは、グラム・メタルの華やかなイメージを象徴するバンドのひとつである。
1986年のデビュー作『Look What the Cat Dragged In』で人気を獲得し、その後『Open Up and Say… Ahh!』から「Nothin’ but a Good Time」や「Every Rose Has Its Thorn」といったヒットを生み出した。
音楽的にはMötley CrüeやRattよりも明るくポップで、シンプルなギターリフと大合唱できるコーラスが特徴である。まず「Nothin’ but a Good Time」を聴けば、グラム・メタルの享楽的でキャッチーな側面をつかめる。
5. Cinderella
1980年代にフィラデルフィア周辺から登場したCinderellaは、グラム・メタルの枠内で成功しながら、ブルースや1970年代型ハードロックへの志向を強く持っていたバンドである。
1986年の『Night Songs』は当時のグラム・メタルらしいサウンドを持つが、1988年の『Long Cold Winter』ではブルースロックやルーツ志向がより明確になった。Tom Keiferのしゃがれたヴォーカルも大きな個性である。
初心者には「Gypsy Road」がおすすめだ。グラム・メタルらしい大きなギターサウンドを保ちながら、ブルースロックからの影響もわかりやすく表れている。
6. Dokken
1970年代末から1980年代初頭にかけて形成され、1980年代に活躍したDokkenは、グラム・メタルのなかでもギタープレイを重視するリスナーにおすすめしたいバンドである。
中心的な魅力はGeorge Lynchのギターである。テクニカルでありながらリフの存在感も強く、Don Dokkenのメロディアスなヴォーカルとの対比によって独特のサウンドを作った。
代表作として『Under Lock and Key』『Back for the Attack』が挙げられる。ポップなコーラスと高度なギターワークを同時に楽しみたいなら、「In My Dreams」などから入るとよい。
7. Warrant
1980年代にロサンゼルスで結成されたWarrantは、グラム・メタルが商業的なピークを迎えた時期を代表するバンドである。1989年のデビュー作『Dirty Rotten Filthy Stinking Rich』からヒットを生み出し、続く『Cherry Pie』でも成功した。
キャッチーなハードロックのイメージが強い一方、Jani Laneはメロディと物語性を持つ楽曲を書けるソングライターでもあった。「Heaven」のようなパワーバラードを聴くと、その側面がよくわかる。
アップテンポな「Cherry Pie」だけでなく、「Heaven」も合わせて聴くことで、グラム・メタルにおいてバラードがいかに重要だったのかを理解できる。
8. Skid Row
1980年代後半にニュージャージーから登場したSkid Rowは、グラム・メタル全盛期にデビューしながら、よりヘヴィで攻撃的な方向へ進んだバンドである。
1989年のデビュー作『Skid Row』には「18 and Life」「Youth Gone Wild」などが収録されている。Sebastian Bachの強力なヴォーカルと、Dave “Snake” Sabo、Scotti Hillによるギターを軸としたサウンドが特徴だ。
さらに1991年の『Slave to the Grind』では重量感を増し、グラム・メタルとより本格的なヘヴィメタルの境界へ踏み込んだ。甘いポップメタルより、激しい音から入りたい初心者に向いている。
9. Faster Pussycat
1980年代半ばのロサンゼルスで結成されたFaster Pussycatは、サンセット・ストリップの猥雑で荒々しい側面を体現したバンドである。
1987年のセルフタイトル作『Faster Pussycat』では、ブルースやロックンロールを下地にしたラフな演奏を聴かせる。洗練されたポップメタルとは異なり、Taime Downeのヴォーカルを含め、全体にストリート感のあるサウンドが特徴だ。
Mötley Crüeの初期作品やAerosmithのような荒々しいロックンロールが好きなら入りやすい。グラム・メタルの地下クラブ的な雰囲気を知るうえでも重要な存在である。
10. L.A. Guns
L.A. Gunsは1980年代のロサンゼルスで形成され、サンセット・ストリップのハードロックを代表する存在となった。Tracii Gunsのギターを軸に、グラム・メタルとブルース系ハードロックを結びつけたサウンドを展開している。
1988年の『L.A. Guns』、1989年の『Cocked & Loaded』が初期の代表作である。「Rip and Tear」のようなハードな曲から「The Ballad of Jayne」のようなバラードまで、当時のシーンが持っていた音楽的な幅を確認できる。
派手なコーラスだけではなく、ギター中心のロックンロールとしてグラム・メタルを聴きたい人におすすめしたいバンドである。
まず聴くならこの3組
最初に聴きたい3組は、Mötley Crüe、Bon Jovi、Rattである。この3組を押さえると、グラム・メタルの主要な魅力を異なる方向から理解できる。
Mötley Crüeは、ヘヴィなリフ、派手なイメージ、危険なロックンロールというジャンルの攻撃的な側面を代表する。まず『Dr. Feelgood』を聴き、気に入ったら初期の『Shout at the Devil』へ進むと変化もわかりやすい。
Bon Joviはメロディとコーラスを重視したポップな側面の入口として最適だ。対してRattは、キャッチーさを維持しながらギターリフとソロの魅力を前面に出している。3組を聴き比べれば、同じグラム・メタルでもサウンドにかなりの違いがあることを実感できる。
関連ジャンルへの広がり
グラム・メタルからさらに掘り下げるなら、まずハードロックの歴史を追いたい。Aerosmith、Kiss、Van Halenなど1970年代から1980年代初頭に活躍したバンドを聴けば、グラム・メタルのギター、ヴォーカル、ステージ演出がどのような音楽から発展したのかが見えやすい。
もう一方の方向にはヘヴィメタルがある。DokkenやSkid Rowのように演奏の重量感が強いバンドから入れば、より硬質なメタルへ自然に進める。グラム・メタルはポップスとメタルを結ぶ入口としても機能するジャンルなのである。
まとめ
グラム・メタルは、1980年代の派手なファッションだけで語られがちだが、音楽的には1970年代ハードロック、ヘヴィメタル、ブルースロック、ポップスなどを吸収した幅広いジャンルである。
Mötley Crüeのヘヴィなリフ、Rattのギターワーク、Bon Joviの巨大なコーラス、Poisonのポップ性、Cinderellaのブルース志向、Dokkenの技巧性、Skid Rowの攻撃性など、代表バンドを並べるだけでもその違いは明確だ。
初心者ならMötley Crüe、Bon Jovi、Rattから始め、よりポップな音を求めるならPoisonやWarrant、ヘヴィな音ならSkid RowやDokken、ブルースやロックンロール色を求めるならCinderella、Faster Pussycat、L.A. Gunsへ進むとよい。10組を聴き比べることで、グラム・メタルというジャンルの全体像をつかめるのである。

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