発売日: 1970年1月
ジャンル: ガレージロック、プロトパンク、ロックンロール
MC5が1970年にリリースしたセカンドアルバムBack in the USAは、前作Kick Out the Jamsでの荒々しくエネルギッシュなライブ録音から一転、コンパクトで洗練されたスタジオ作品だ。このアルバムでは、シンプルでキャッチーなロックンロールの美学が追求され、音楽的にはよりストリート感覚を重視したアプローチが際立っている。
プロデューサーにはJon Landauが起用され、彼の指導のもと、バンドのサウンドはタイトで引き締まったものへと進化している。その一方で、彼らの反体制的でアグレッシブな精神は変わらずに存在し、アメリカの文化や政治への批判が楽曲に反映されている。この作品は、MC5が新たな方向性を模索しながらも、彼らのアイデンティティを保ち続けた重要なアルバムだ。
トラックごとの解説
1. Tutti Frutti
リトル・リチャードのカバーで幕を開けるアルバム。ロックンロールのルーツへの敬意が込められた演奏で、MC5流にアレンジされた軽快なトラックだ。
2. Tonight
ロマンチックなテーマと、シンプルでキャッチーなギターフックが特徴。アルバムの中でも特に親しみやすい楽曲だ。
3. Teenage Lust
ガレージロックのエネルギーが爆発する一曲。荒々しいギターリフとロブ・タイナーの情熱的なボーカルが印象的で、バンドの若々しい情熱を体現している。
4. Let Me Try
アルバムの中でも異色のスローバラード。ソウルフルで感情的なボーカルが、MC5の幅広い音楽性を感じさせる。
5. Looking at You
アルバムのハイライトの一つ。ダイナミックなギターリフとタイトなリズムセクションが特徴で、ライブでの人気曲としても知られている。MC5の持つ攻撃性とキャッチーさが融合した名曲。
6. High School
ノスタルジックでユーモラスな楽曲。若さと無邪気さをテーマにした歌詞と、軽快なロックンロールサウンドが魅力的だ。
7. Call Me Animal
最もパンキッシュなトラックの一つで、激しいギターリフとロブ・タイナーの荒々しいボーカルが特徴。MC5のエネルギーが存分に詰まっている。
8. The American Ruse
アメリカ文化への皮肉と批判を込めた政治的な楽曲。軽快なロックンロールのビートに乗せて、反体制的なメッセージが歌われている。
9. Shakin’ Street
リズミカルでキャッチーなトラック。街角の若者たちの生活を描いた歌詞が、アルバム全体のテーマを補完している。
10. The Human Being Lawnmower
攻撃的でパワフルなトラック。タイトルからして象徴的で、バンドの反骨精神が炸裂する一曲だ。
11. Back in the USA
チャック・ベリーのカバーでアルバムを締めくくる。オリジナルに忠実でありながら、MC5ならではのエネルギッシュなアレンジが加えられている。愛国的なタイトルとは裏腹に、アメリカ社会への批判が込められたメッセージ性の強い楽曲だ。
洗練と反骨の両立
Back in the USAは、デビュー作Kick Out the Jamsに見られた荒削りなライブ感とは対照的に、スタジオ作品としての緻密さが際立つアルバムだ。その一方で、MC5の持つ反体制的なスピリットは失われることなく、アメリカの社会や文化に対する批判を楽曲に織り込んでいる。
ロックンロールの伝統に敬意を払いつつも、パンクロックの原型を感じさせるシンプルで鋭い楽曲が並ぶこのアルバムは、バンドの音楽的な進化と同時に、彼らのルーツへの愛を表現している。
アルバム総評
Back in the USAは、MC5のエネルギーと精神性を保持しながらも、スタジオ録音の持つ洗練さとコンパクトさを追求した作品だ。Jon Landauのプロデュースのもと、ガレージロックからプロトパンクへの進化を遂げたこのアルバムは、後のパンクやハードロックへの影響を強く感じさせる内容となっている。シンプルな楽曲構成の中に、バンドの情熱やメッセージが凝縮された一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Raw Power by The Stooges
MC5と同時代のデトロイトロックシーンを象徴する作品。荒々しさと攻撃性が共通している。
The Velvet Underground & Nico by The Velvet Underground
ロックンロールに実験性を加えた名盤。MC5の精神性に共鳴する部分が多い。
Sticky Fingers by The Rolling Stones
ロックンロールのルーツを重視した作品で、Back in the USAのルーツ志向と共通する魅力を持つ。
Funhouse by The Stooges
攻撃的なロックサウンドと即興的な演奏が魅力のアルバム。MC5のエネルギーと共鳴する。
Rocket to Russia by Ramones
シンプルでキャッチーな楽曲構成が、MC5の影響を感じさせるプロトパンクの精神を受け継いだ作品。
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