発売日: 1981年10月16日
ジャンル: ゴシックロック、ポストパンク、アートロック
BauhausのセカンドアルバムMaskは、彼らがゴシックロックのパイオニアとして確立したスタイルをさらに深化させ、音楽的に幅広いアプローチを試みた野心的な作品である。前作In the Flat Fieldが純粋なダークネスとアグレッシブなエネルギーで突き進んだのに対し、Maskはその中により多様な音楽的テクスチャを織り込み、芸術的な実験性を押し広げたアルバムとなっている。
このアルバムでは、ポストパンクの鋭さを保ちながらも、ダブ、ファンク、アートロックといった異なるジャンルの要素が取り入れられている。その結果、リスナーを暗闇に引き込むだけでなく、鮮やかな音楽的風景を感じさせる作品となった。Bauhausはここで、自身の音楽的アイデンティティを確立しつつ、限界を押し広げた。
各曲ごとの解説
1. Hair of the Dog
攻撃的なギターリフとダークなベースラインが印象的な楽曲。Peter Murphyの挑発的なボーカルが曲全体にエネルギーを与え、オープニングにふさわしいインパクトを放つ。
2. The Passion of Lovers
このアルバムの代表曲の一つで、メランコリックなメロディとキャッチーなフレーズが融合したポップ寄りの楽曲。愛と喪失をテーマにした歌詞が、暗くも美しい印象を残す。
3. Of Lillies and Remains
実験的なサウンドが特徴の楽曲で、不安を掻き立てるようなリズムとシュールな歌詞が際立つ。ダークなユーモアも感じられ、アルバム全体のムードを多層的にしている。
4. Dancing
ファンクのリズムが取り入れられたユニークな楽曲。軽快なビートと不穏なボーカルの対比が、Bauhausらしい独創性を引き立てている。
5. Hollow Hills
重々しい雰囲気の中で進行するダークアンセム。暗闇と神秘的な雰囲気を感じさせるアレンジが、リスナーを不思議な空間へと誘う。歌詞は自然の荒涼とした風景を描き、ゴシックの美学を体現している。
6. Kick in the Eye
アップテンポでグルーヴィーなナンバー。ダブとファンクの要素が強く、独特のリズム感が際立つ楽曲だ。Bauhausの多様な音楽性を象徴する一曲で、ライブでも人気の高い楽曲である。
7. In Fear of Fear
スピード感のあるリズムと反復的なベースラインが特徴。歌詞は不安と恐怖をテーマにしており、スリリングなサウンドがその感情を増幅させる。
8. Muscle in Plastic
尖ったギターリフと歪んだサウンドが印象的な楽曲。タイトル通りの機械的な要素を感じさせるアレンジが、独特の雰囲気を作り出している。
9. The Man with X-Ray Eyes
退廃的なムードが漂う楽曲。ボーカルとギターが対話するように進行し、緊張感と不気味さが絡み合う一曲だ。
10. Mask
アルバムのタイトル曲であり、全体を象徴する楽曲。徐々に高まる緊張感と、爆発的なエネルギーが印象的。リリックには自己探求や偽りの仮面というテーマが込められており、Bauhausの芸術的な感性が際立つ。
フリーテーマ: ゴシックロックの枠を超えた進化
Maskは、Bauhausが単にゴシックロックのパイオニアであるだけでなく、音楽的な進化を続けるアーティストであることを証明したアルバムだ。この作品では、ダブやファンクといった意外なジャンルの要素を取り入れることで、彼らの音楽性をさらに広げている。その結果、ゴシックロックの枠を超えたアートロック的な感覚が生まれ、Bauhausが単なるジャンルバンドではなく、独自の音楽世界を構築していることが示されている。
アルバム総評
Maskは、Bauhausが持つ音楽的ビジョンの広さと深さを余すところなく表現した作品である。暗闇と恐怖、そして美しさが絡み合う楽曲群は、彼らの革新的な精神を体現している。ゴシックロックの文脈に収まりきらない独創性を持つこのアルバムは、ジャンルの壁を打ち破る一枚として、リスナーに新たな発見と感動をもたらすだろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Pornography by The Cure
不安と孤独感をテーマにした作品で、Bauhausのダークな世界観と共通点がある。
Ju Ju by Siouxsie and the Banshees
ゴシックロックの傑作で、前衛的なアプローチと暗いムードがBauhausの作品と響き合う。
Closer by Joy Division
絶望感を深く掘り下げたポストパンクの名作。重厚で感情的なサウンドが共通している。
Scary Monsters (And Super Creeps) by David Bowie
アートロックの要素が強く、Bauhausの実験的な精神とリンクする作品。
Unknown Pleasures by Joy Division
シンプルかつ深い音楽的な表現が、Bauhausの初期作品に通じる一枚。
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