発売日: 1980年11月21日
ジャンル: ジャズロック、ソフトロック、ポップロック
Steely Danの7作目となるGauchoは、彼らのスタジオアルバムとして最後の作品となった(20年後のTwo Against Natureまで)。ジャズとポップ、ロックを融合させたスタイリッシュなサウンドが特徴で、洗練されたアレンジとプロダクションが際立つ。録音には複数のスタジオミュージシャンが起用され、膨大な時間と労力をかけて制作されたことで知られる。
このアルバムでは、都会的で退廃的な世界観が強調されており、テーマは孤独、喪失、そして消費文化への皮肉を中心に展開されている。Steely Danの他の作品と同様に、皮肉に満ちた歌詞と緻密な音楽構築がアルバム全体を支配している。
各曲ごとの解説
1. Babylon Sisters
アルバムの冒頭を飾るこの曲は、優雅でスムーズなグルーヴとコーラスが特徴的だ。歌詞では都会の退廃的なライフスタイルを描写しつつ、その裏に潜む孤独感を暗示している。ホーンセクションとFagenの柔らかなボーカルが絶妙なバランスで融合している。
2. Hey Nineteen
このアルバムを代表するヒット曲の一つで、若い恋人との関係を描いた物語が展開される。軽快なビートとシンプルながらも印象的なメロディが特徴で、ジェネレーションギャップにまつわる皮肉と哀愁が交錯している。サビの「The Cuervo Gold, the fine Colombian」というフレーズが印象的だ。
3. Glamour Profession
9分を超える長尺の楽曲で、華やかな都会生活の裏に潜む虚しさを描写している。洗練されたジャズフュージョンサウンドとリズムセクションが際立ち、物語性のある歌詞がリスナーを引き込む。サックスとキーボードのプレイが特に光る一曲だ。
4. Gaucho
アルバムのタイトル曲で、複雑な人間関係とその悲哀を描いた楽曲。ピアノを中心としたアレンジと、ほの暗い雰囲気が印象的だ。歌詞のテーマや隠喩には様々な解釈が可能で、Steely Danらしい謎めいた魅力を持つ。
5. Time Out of Mind
明るいテンポとポップなメロディが特徴的だが、歌詞にはドラッグ使用の暗示が隠されている。Michael McDonaldがバックコーラスを担当しており、楽曲にさらに深みを与えている。軽快な表面と暗いテーマの対比が絶妙だ。
6. My Rival
緊張感のあるメロディと謎めいた歌詞が特徴のトラック。敵対関係や嫉妬をテーマにしているとされ、シンプルなアレンジの中にも不穏な空気が漂う。
7. Third World Man
アルバムの締めくくりにふさわしい感傷的な楽曲。静かでゆったりとしたテンポが、メランコリックな歌詞と相まって深い余韻を残す。ギターソロが特に印象的で、Steely Danの中でも屈指のエモーショナルな一曲だ。
フリーテーマ:完璧主義の集大成
Gauchoの制作は、Steely Danの完璧主義がピークに達した時期でもある。このアルバムは、何百時間にも及ぶセッションの末に完成し、音楽的には非常に精密かつ洗練された仕上がりとなった。一方で、制作過程では数々の困難があり、バンド内部の緊張も高まったという。しかし、その努力の結晶である本作は、ポップとジャズの融合を極限まで追求した結果、時代を超えた魅力を持つ作品となっている。
アルバム総評
Gauchoは、Steely Danのキャリアを象徴するアルバムであり、その音楽的な洗練さは今なお高く評価されている。都会的で退廃的な雰囲気の中に、美しいアレンジと深い物語性が込められており、聴くたびに新たな発見がある。彼らの完璧主義と音楽的野心が結実したこの作品は、ポップとジャズの交差点に位置する傑作である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Aja by Steely Dan
Steely Danのジャズフュージョンサウンドがさらに進化したアルバムで、最も完成度が高いとされる作品。
The Nightfly by Donald Fagen
Steely DanのボーカリストDonald Fagenによるソロアルバムで、都会的で洗練されたサウンドが特徴。
Silk Degrees by Boz Scaggs
ポップ、ソウル、ジャズの要素が融合したアルバムで、Steely Danのファンにも響く。
Lowdown by Boz Scaggs
ファンクやジャズの要素を取り入れた名作で、Steely Danのリスナーにもおすすめ。
Court and Spark by Joni Mitchell
洗練されたジャズロックのアプローチと都会的なムードが共通するアルバム。
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