発売日: 2010年5月24日
ジャンル: エレクトロニカ、シンセポップ、ウィッチハウス
『Crystal Castles (II)』(通称「Crystal Castles II」)は、カナダのエレクトロデュオCrystal Castlesによるセカンドアルバムであり、デビュー作の攻撃的なエレクトロクラッシュから一歩進んだ、よりダークでアンビエントな作品だ。全体的にムーディーでメランコリックなトーンが支配する本作は、ウィッチハウスやインダストリアル、ゴシック的な影響を感じさせる。ノイズと美しさ、混沌と秩序の間を行き来するサウンドは、デビュー作以上に深く洗練されている。
アリス・グラスのボーカルは、叫び声やエフェクトを多用したアプローチから、時に繊細で幽玄な歌声へと変化し、感情の振れ幅を増している。一方、イーサン・カスによるプロダクションは、ノイジーで破壊的なサウンドを維持しつつも、よりメロディアスでダンサブルな要素を取り入れている。このアルバムは、Crystal Castlesの音楽的進化を示すだけでなく、彼らが持つ多面的な才能を証明する作品だ。
トラック解説
- Fainting Spells
ノイズの渦がアルバムを力強く開幕する一曲。耳障りなビートとサンプリングが絡み合い、聴き手を混沌の世界に引き込む。 - Celestica
本作を象徴するドリーミーなトラック。アリス・グラスの透き通るようなボーカルが、シンセサウンドの中で浮遊感を生み出し、儚く美しい雰囲気を醸し出している。 - Doe Deer
1分半という短いランタイムながら、激しいノイズと咆哮が炸裂する一曲。パンクの衝動をエレクトロに昇華した作品だ。 - Baptism
重厚なシンセリフとダンサブルなビートが絡む代表曲。クラブシーンでも人気の高い楽曲で、ダークな美学を感じさせる。 - Year of Silence
シガー・ロスの楽曲「Inní Mér Syngur Vitleysingur」をサンプリングした異色のトラック。アイスランド的な幻想美とノイズの対比が印象的。 - Empathy
エコーの効いたビートとミステリアスなメロディーが特徴的な楽曲。タイトルが示すように、感情的な深みを探る一曲となっている。 - Suffocation
繊細なシンセとアリスの囁くようなボーカルが印象的な楽曲。静と動のバランスが絶妙で、アルバムの中でも特に美しい瞬間を提供する。 - Violent Dreams
幻想的でありながらダークなムードが漂う楽曲。タイトルが示すように、悪夢の中で美しさを見つけたような一曲だ。 - Vietnam
ノイジーで攻撃的なサウンドが支配するトラック。タイトルの通り、混乱や破壊を思わせるエネルギーが溢れている。 - Birds
メランコリックなメロディーラインと緊張感のあるリズムが融合した一曲。アルバム全体のダークなテーマを象徴している。 - Pap Smear
シンセサウンドが前面に押し出されたダンサブルな楽曲。ビートの重厚さとリズムの多彩さが魅力だ。 - Not in Love (featuring Robert Smith)
ザ・キュアーのロバート・スミスをゲストボーカルに迎えた名曲。1983年のプラチナ・ブロンドの同名曲をカバーし、オリジナルを上回る感情的な深みとエレクトロの洗練を加えた一曲。 - Intimate
静かなビートと幽玄なシンセが絡み合う楽曲。終末的な雰囲気を漂わせながらもどこか親密さを感じさせる。 - I Am Made of Chalk
アルバムを締めくくるアンビエントなインストゥルメンタルトラック。ノイズの中に儚い美しさが浮かび上がり、余韻を残す。
アルバム総評
『Crystal Castles (II)』は、デビュー作以上に深い音楽性と感情的な振れ幅を見せた作品だ。ノイズポップやウィッチハウスの要素を取り入れ、破壊的なサウンドとメロディアスな楽曲を共存させた本作は、エレクトロニカの可能性を拡張した名盤といえる。特に「Celestica」や「Not in Love」といった楽曲は、美しさとカオスが絶妙に交差する傑作であり、バンドの幅広い魅力を堪能できる。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Silent Shout by The Knife
ダークで実験的なエレクトロポップが特徴で、Crystal Castlesの世界観と共鳴する。
LP1 by HEALTH
攻撃的なノイズとエレクトロニカの融合が特徴で、『Crystal Castles (II)』のファンに響く一枚。
† by Justice
重厚なシンセとエネルギッシュなビートが印象的で、ダンサブルなトラックを求める人におすすめ。
Blue Lines by Massive Attack
トリップホップの先駆的なアルバムで、ダークで感情的なサウンドが共通点を持つ。
xx by The xx
静寂と緊張感を活かしたインディーエレクトロの名盤で、Crystal Castlesのメランコリックな側面が好きな人にぴったり。
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