アルバムレビュー:eternal sunshine deluxe: brighter days ahead by Ariana Grande

※本記事は生成AIを活用して作成されています。


発売日:2025年3月28日

ジャンル:ポップ、R&B、シンセ・ポップ、ダンス・ポップ、コンテンポラリーR&B、バラード

概要

Ariana Grandeの『eternal sunshine deluxe: brighter days ahead』は、2024年発表のアルバム『eternal sunshine』を拡張したデラックス版であり、オリジナル作品が描いた記憶、別れ、自己認識、心の修復というテーマを、より明確に「その後」へ進めた作品である。タイトルに加えられた「brighter days ahead」は、「この先により明るい日々がある」という意味を持つ。これは単なる楽観的な副題ではなく、アルバム全体が扱ってきた喪失や記憶の処理を経た後に、どのように未来へ向き直るかを示す言葉である。

『eternal sunshine』は、映画『Eternal Sunshine of the Spotless Mind』を想起させるタイトルを持ち、忘れたい記憶、消せない愛、関係の終わり、そして自己を取り戻す過程を、Ariana Grandeらしい洗練されたポップ/R&Bの中に落とし込んだアルバムだった。『thank u, next』が喪失と回復を比較的ストレートに表現した作品だとすれば、『eternal sunshine』はより成熟し、過去を消したい気持ちと、それでも記憶が自分を形作っているという事実の間で揺れる作品であった。

デラックス版『brighter days ahead』は、その物語に追加の章を与える。単に未発表曲を加えた拡張版ではなく、オリジナル版で提示された感情を別角度から照らし直し、別れの後に残る痛み、自己防衛、再び誰かを信じることへの恐れ、そして新しい光へ向かう姿勢を補強している。Ariana Grandeはここで、過去を完全に消すのではなく、過去を抱えたまま未来へ進むという、より複雑な回復の感覚を提示している。

音楽的には、オリジナル版と同じく、シンセ・ポップ、R&B、ダンス・ポップ、ソフトなバラード、軽やかなハウスの感覚が中心となる。Arianaのヴォーカルは、過去の作品に見られた圧倒的な歌唱力の誇示よりも、空間の中で感情を滲ませるような表現に重きが置かれている。声はしばしば近く、柔らかく、多層的に重ねられ、まるで記憶の断片が重なっていくように響く。

本作の大きな魅力は、Ariana Grandeがポップ・スターとしての華やかさと、内面を語るシンガーソングライター的な繊細さを両立させている点にある。彼女は強いメロディ、洗練されたプロダクション、耳に残るフレーズを用いながら、単純な失恋ソングではなく、記憶の扱い方、自分を守るための境界線、愛されることへの不安、そして再生の途中にある曖昧な感情を描いている。

日本のリスナーにとって『eternal sunshine deluxe: brighter days ahead』は、Ariana Grandeのポップ/R&B作品としての聴きやすさを持ちながら、歌詞のテーマを読み解くことでさらに深く味わえるアルバムである。特に『Positions』以降の親密なR&B表現、「pov」に見られた自己受容、「yes, and?」における外部の視線への抵抗、「we can’t be friends」における別れの余韻をつなげて聴くと、本作の意味はより明確になる。

全曲レビュー

1. intro (end of the world)

「intro (end of the world)」は、アルバムの導入として、関係の終わりと世界の終わりを重ねるような感覚を提示する楽曲である。恋愛が終わることは、客観的には世界の終末ではない。しかし、当事者にとっては、自分が生きてきた世界の構造そのものが崩れるように感じられることがある。この曲は、その主観的な終末感を、短いながらも印象的に表現している。

サウンドは柔らかく、Arianaの声は近い距離で響く。大きなビートで始まるのではなく、内面の独白のように始まる点が重要である。『eternal sunshine』という作品が、外向きのポップ・アルバムであると同時に、記憶の内側へ入り込む作品であることを最初に示している。

歌詞のテーマは、相手との関係が本当に終わるのか、自分は何を見落としていたのかという問いである。愛の終わりは明確な結論ではなく、問いとして残る。この導入曲は、アルバム全体の不安定な感情の入口になっている。

2. bye

「bye」は、タイトル通り別れをテーマにした楽曲である。しかし、ここでの別れは悲劇的なバラードとしてではなく、軽やかなポップ・ソングとして提示される。この選択が非常にAriana Grandeらしい。別れの痛みを抱えながらも、それを重く沈ませるのではなく、前へ進むためのリズムへ変換している。

サウンドは明るく、ダンス・ポップ的な推進力を持つ。別れの曲でありながら身体が動くような作りになっており、悲しみを処理するためのポップ・ミュージックとして機能している。Arianaのヴォーカルも、涙に沈むのではなく、どこか距離を取りながら軽やかに歌っている。

歌詞のテーマは、自分にとって良くない関係から離れることの必要性である。別れは失敗ではなく、時には自己保存のための選択である。「bye」は、相手を憎む曲というより、自分を取り戻すために手を振る曲である。アルバムの序盤でこの曲が置かれることで、作品は痛みの中にありながらも、すでに回復へ向かう動きを始めている。

3. don’t wanna break up again

「don’t wanna break up again」は、繰り返される関係の破綻に疲れた感情を描く楽曲である。タイトルが示すように、語り手はもう一度同じ別れを経験したくない。ここには、愛が残っているからこそ苦しい関係、戻ってもまた壊れることが分かっている関係の疲弊がある。

サウンドは滑らかなR&B/ポップを基盤にしており、メロディには切なさがある。Arianaの歌唱は、怒りよりも疲れや諦めに近い。感情を爆発させるのではなく、静かに限界を認めるような表現が印象的である。

歌詞のテーマは、関係の反復から抜け出すことにある。別れて、戻って、また壊れる。その循環の中では、愛情は次第に消耗へ変わっていく。この曲は、愛しているかどうか以上に、同じ痛みを繰り返すことへの恐れを描いている。

『eternal sunshine』全体において、この曲は非常に重要である。記憶を消したいという願いの裏には、同じ傷を何度も思い出したくないという感情がある。「don’t wanna break up again」は、その反復する痛みを具体的に表している。

4. Saturn Returns Interlude

「Saturn Returns Interlude」は、占星術におけるサターン・リターン、つまり土星回帰の概念を取り入れたインタールードである。一般的にサターン・リターンは、人生の転機、成熟、自己認識、責任への向き合いを象徴するものとされる。この短いパートは、アルバム全体の精神的な転換点として機能している。

音楽的には、曲というよりも語りや空間的な挿入に近い。だが、その役割は大きい。ここで作品は、単なる恋愛の失敗から、人生の節目における自己変容へとテーマを広げる。別れはただの出来事ではなく、自分が何者であるかを見直すきっかけになる。

Ariana Grandeの近年の作品では、恋愛は常に自己認識と結びついている。このインタールードは、その構造を明確にする。相手との関係が終わったから苦しいのではなく、その終わりによって、自分が変わらざるを得ないから苦しいのである。

5. eternal sunshine

タイトル曲「eternal sunshine」は、アルバムの中心にある楽曲であり、記憶、裏切り、痛み、そして忘れたいという願いを扱っている。タイトルは明るい永遠の陽光を意味するようでありながら、実際には記憶を消すことへの憧れと、その不可能性を含んでいる。

サウンドは、シンセ・ポップとR&Bの中間に位置し、柔らかいがどこか冷たい質感を持つ。Arianaの声は透明で、感情を強く押し出すのではなく、距離を置いて歌っている。その距離感が、記憶を見つめる曲として非常に効果的である。

歌詞のテーマは、忘却への願望である。愛した記憶が痛みに変わったとき、人はその記憶ごと消したいと思うことがある。しかし、記憶は自分の一部でもある。消したいほど苦しいものが、自分を形作ってもいる。この矛盾が曲の核にある。

「eternal sunshine」は、アルバム全体のコンセプトをもっとも直接的に示す曲である。ここでArianaは、過去を美化するのでも、完全に否定するのでもなく、記憶と痛みの関係を静かに見つめている。

6. supernatural

「supernatural」は、恋愛における説明できない引力をテーマにした楽曲である。タイトルの「超自然的」という言葉が示すように、ここでの愛は理性や計算を超えた力として描かれている。

音楽的には、滑らかなポップ/R&Bの質感があり、Arianaの声が浮遊するように配置されている。ビートは強すぎず、曲全体に軽い陶酔感がある。恋愛が現実的な問題としてではなく、身体や感覚を支配する力として表現されている。

歌詞のテーマは、相手に引き寄せられる感覚である。『eternal sunshine』には別れや痛みを扱う曲が多いが、「supernatural」では恋愛の魔法のような側面が描かれる。ただし、それは単純な幸福ではない。説明できないほど強く惹かれることは、同時に自分を失う危うさも含んでいる。

この曲は、アルバムの中で官能性と浮遊感を担う重要な楽曲である。痛みと記憶の物語の中に、愛の不可解な魅力を差し込んでいる。

7. true story

「true story」は、タイトルからして真実と物語の関係を扱う楽曲である。Ariana Grandeはここで、自分について語られる物語、世間が作るイメージ、そして自分自身が演じるキャラクターの境界を遊びながら扱っている。

サウンドはR&B的で、ややダークな雰囲気を持つ。ヴォーカルには余裕と皮肉があり、曲全体が自己演出のように響く。彼女はここで、ただ本音を告白するのではなく、「本当の話」と言いながら、その本当らしさ自体を揺さぶっている。

歌詞のテーマは、世間に作られるイメージへの応答である。ポップ・スターは、本人の意図とは関係なく物語化される。「true story」は、その状況を逆手に取り、自分で自分の物語を演じ直す曲である。

この曲は、「the boy is mine」とも強く接続する。どちらも90年代R&B的な雰囲気を持ちながら、Ariana自身のイメージ、恋愛、世間の視線を演劇的に扱っている。

8. the boy is mine

「the boy is mine」は、90年代R&Bへの明確なオマージュを含む楽曲であり、Brandy & Monicaの名曲「The Boy Is Mine」を想起させるタイトルを持つ。ただし、これはカバーではなく、Ariana Grande自身の文脈で再構成されたオリジナル曲である。

サウンドは低く滑らかなR&Bを基盤にしており、抑えたビート、密やかなシンセ、重ねられたハーモニーが特徴である。Arianaの歌唱は、可愛らしさと危うさを同時に持ち、恋愛における所有欲を軽やかに、しかし確信を持って表現している。

歌詞のテーマは、相手への強い引力と独占欲である。ただし、単なる勝利宣言ではない。理性では整理できない感情、自分でも止められない欲望、そして恋愛の演技性が含まれている。Arianaはこの曲で、90年代R&Bの文化的記憶を借りながら、自身のポップ・スター像を巧みに演じている。

アルバム全体の中では、内省的な流れに官能的な陰影を加える重要曲である。痛みや記憶だけでなく、恋愛の危うい魅力もまた、この作品の一部であることを示している。

9. yes, and?

「yes, and?」は、アルバムの中でもっとも外向きな自己宣言型の楽曲である。ハウス・ミュージックを基盤にしたダンス・ポップであり、世間の視線、批判、ゴシップに対して、自分の領域を守る姿勢が示される。

タイトルの「yes, and?」は、「そう、それで?」という軽い反問のニュアンスを持つ。相手の言葉を完全に否定するのではなく、受け流しながら自分の立場を崩さない。この態度が曲全体を支えている。

サウンドは軽快で、四つ打ちのビートとクラブ的な反復が特徴である。Arianaのヴォーカルは過度に歌い上げず、ビートの上をしなやかに動く。これは怒りをぶつける曲ではなく、踊りながら境界線を引く曲である。

アルバム全体の中で、「yes, and?」は外部からのノイズを遮断する役割を持つ。記憶や別れを語る前に、まず自分の物語を他人に奪わせないという宣言が必要になる。この曲は、そのためのポップな防御線である。

10. we can’t be friends (wait for your love)

「we can’t be friends (wait for your love)」は、『eternal sunshine』の中でも特に感情的な中心を担う楽曲である。タイトルは「私たちは友達にはなれない」と言いながら、副題では「あなたの愛を待つ」と続く。この矛盾が曲の核心である。

音楽的には、シンセ・ポップ的な透明感と、切ないメロディが印象的である。ビートは抑制され、Arianaの声は非常に近く、しかしどこか遠い。関係が終わった後の距離感が、音そのものに反映されている。

歌詞のテーマは、別れた相手との関係をどう位置づけるかである。友達にはなれない。だが、完全に無関係にもなれない。愛は終わったはずなのに、心のどこかでまだ相手を待っている。この曖昧な感情が非常に繊細に描かれている。

この曲は、Ariana Grandeの近年のバラード表現の成熟を示している。感情を過度に叫ばず、抑制された声とメロディによって深い喪失感を伝えている。

11. i wish i hated you

「i wish i hated you」は、相手を憎めたら楽なのに、憎めないという苦しさを描いたバラードである。タイトルの「あなたを嫌いになれたらよかった」という言葉には、別れの後の最も複雑な感情が込められている。

サウンドは非常に静かで、Arianaの声の繊細さが中心に置かれている。余白が多く、感情の細かな揺れがよく聴こえる。ここでは、派手なヴォーカル技巧よりも、言葉の弱さをそのまま届けることが重視されている。

歌詞のテーマは、憎しみによって整理できない別れである。相手が完全な悪人であれば、忘れることはもっと簡単かもしれない。しかし、愛した記憶や優しさが残っていると、憎むことさえできない。この曲は、その未整理の痛みを描く。

『eternal sunshine』の中でも、この曲は特に人間的な弱さが表れている。回復の途中にある人間は、必ずしも強く前向きでいられるわけではない。その揺れを正直に表現している点が重要である。

12. imperfect for you

「imperfect for you」は、不完全な自分を相手に差し出すことをテーマにした楽曲である。タイトルは「あなたのために不完全でいる」とも読める。ここでは、完璧な恋人であろうとするよりも、不完全なまま関係に向き合うことが歌われている。

サウンドは柔らかく、メロディには温かさがある。Arianaの声は穏やかで、曲全体に親密な空気が流れる。『Positions』期の柔らかなR&B表現にも通じるが、ここではより傷を知った後の優しさがある。

歌詞のテーマは、完璧さからの解放である。ポップ・スターとして常に完璧なイメージを求められてきたArianaにとって、不完全であることを受け入れる曲は大きな意味を持つ。恋愛においても、自己認識においても、完璧でなければ愛されないという考えから離れることが重要になる。

この曲は、アルバム終盤に温かな余韻を与える。痛みや別れを経た後で、それでも誰かに自分を開く可能性が残っていることを示している。

13. ordinary things

「ordinary things」は、日常の小さな幸福をテーマにした楽曲であり、オリジナル版の締めくくりとして重要な役割を持つ。タイトルが示す通り、ここで描かれるのは特別なドラマではなく、普通のことの大切さである。

Ariana Grandeのキャリアは巨大なポップ・スターとしての華やかさに包まれているが、この曲では、その反対にある日常性が価値として歌われる。愛や幸福は、豪華な演出や劇的な出来事ではなく、普通の時間の中にある。

サウンドは穏やかで、声の柔らかさが前面に出ている。アルバム全体の記憶と痛みの流れを経た後で、この曲は静かな着地点を提供する。特別なものを求めすぎることで見失っていたものを、もう一度見つめ直す曲である。

歌詞のテーマは、日常の中の愛である。関係が壊れると、人は大きな出来事ばかりを思い出しがちだが、実際に愛を形作っていたのは、小さく普通の瞬間だったりする。「ordinary things」は、その事実を穏やかに示している。

デラックス追加曲レビュー

14. intro (end of the world) extended

「intro (end of the world) extended」は、オリジナル版の導入曲を拡張したものであり、アルバムの物語をより深く開始させる役割を持つ。短い断片だった問いが、より明確な感情の流れとして提示されることで、作品全体のテーマである終わりと再生がさらに強調される。

拡張版では、終末感がより余韻を持って響く。関係が終わるとき、人は一瞬で答えを出せるわけではない。終わりは、言葉にならない違和感や、少しずつ積み重なった不安として現れる。この拡張版は、その曖昧な時間をより丁寧に描いている。

アルバムのデラックス版において、この曲は「もう一度物語を始める」役割を持つ。オリジナル版を知っているリスナーに対して、同じ物語を別の光で見直す準備をさせる導入である。

15. twilight zone

「twilight zone」は、現実と非現実の境界、記憶と現在の間にある不安定な感覚を描く楽曲である。タイトルは、普通の世界から少し外れた奇妙な領域を連想させる。これは『eternal sunshine』のテーマと非常に相性がよい。別れの後、人は現実の中にいながら、どこか夢の中にいるような感覚を抱くことがある。

サウンドは幻想的で、シンセの質感や声の処理が、浮遊感を作り出している。Arianaのヴォーカルは、明確に地面へ着地するというより、記憶の中を漂うように響く。曲全体に、確信のなさと美しさが同居している。

歌詞のテーマは、過去の関係がまだ現在に影を落としている状態である。終わったはずなのに、完全には抜け出せない。相手がいないのに、記憶の中ではまだ存在している。「twilight zone」は、その境界領域を音楽化した曲である。

デラックス版の追加曲として、この曲は非常に重要である。オリジナル版の記憶と忘却のテーマを、より幻想的で心理的な方向へ広げている。

16. warm

「warm」は、タイトル通り温かさをテーマにした楽曲である。『eternal sunshine』には冷たい記憶や関係の終わりを描く曲が多いが、「warm」はその中に残る体温、優しさ、安心感を扱う。

サウンドは柔らかく、R&B的な親密さがある。Arianaの声は近く、耳元で語りかけるように響く。大きな展開よりも、温度感そのものが大切にされている。曲の魅力は、劇的な変化ではなく、柔らかな空気の持続にある。

歌詞のテーマは、誰かといることで感じる安心である。ただし、それは無邪気な幸福ではない。痛みを知った後だからこそ、温かさの意味が深くなる。冷たい記憶の中で、わずかに残る温かい感触が、回復の手がかりになる。

「warm」は、デラックス版の副題である「brighter days ahead」とも響き合う。明るい日々は突然訪れるのではなく、まず小さな温かさとして現れる。この曲は、その小さな回復を描いている。

17. dandelion

「dandelion」は、タンポポを意味するタイトルを持つ楽曲である。タンポポは、弱く見えて強い植物であり、風に乗って種を飛ばすイメージから、再生、移動、願い、儚さを象徴することができる。

音楽的には軽やかで、柔らかいポップ/R&Bの質感がある。Arianaの声は、タイトルにふさわしく浮遊感を帯びている。重い感情を扱うアルバムの中で、この曲は少し空気を入れ替えるような役割を果たしている。

歌詞のテーマは、手放すことと広がっていくことにある。タンポポの綿毛は、ひとつの場所に留まらず、風によって遠くへ運ばれる。これは、過去の関係から離れ、新しい場所へ向かう感覚と重なる。手放すことは喪失であると同時に、新しい可能性を開くことでもある。

「dandelion」は、デラックス版の中でも特に未来への柔らかな視線を感じさせる曲である。『eternal sunshine』の痛みを経た後に、少しずつ外の世界へ開かれていくような楽曲である。

18. past life

「past life」は、過去の自分、あるいは過去の関係を「前世」のように捉える楽曲である。タイトルは、かつての自分が今の自分とは別人のように感じられる状態を示している。大きな別れや人生の転機を経験すると、人は過去の自分を遠い存在として振り返ることがある。

サウンドは内省的で、Arianaの声は静かに過去を見つめるように響く。派手なビートよりも、メロディと空間の余白が重要である。記憶を振り返る曲でありながら、そこには少し距離がある。

歌詞のテーマは、過去からの分離である。過去の恋愛、過去の痛み、過去の自分は、確かに存在した。しかし、今の自分はもうそこにはいない。「past life」は、過去を否定するのではなく、それが過去になったことを認める曲である。

この曲は、アルバム全体の回復の物語において大きな意味を持つ。記憶を消すのではなく、記憶を過去として位置づけ直す。そこに、成熟した再生の感覚がある。

19. Hampstead

「Hampstead」は、デラックス版の中でも特に静かで、私的な余韻を持つ楽曲である。タイトルはロンドンの地名を想起させ、場所と記憶が結びついた曲として聴くことができる。特定の場所は、過去の感情や出来事を保存する器になる。Hampsteadという地名は、そのような記憶の場所として機能している。

サウンドは穏やかで、Arianaの声は非常に近い。大きなポップ・ソングとしての派手さよりも、日記の一節のような親密さがある。アルバムの終盤に置かれることで、作品全体がより個人的な場所へ着地する。

歌詞のテーマは、場所に残る記憶である。人は関係が終わっても、その人と過ごした場所を忘れることができない。街、部屋、道、季節の空気が、記憶を呼び戻す。「Hampstead」は、そうした場所の記憶を静かに描く。

デラックス版の締めくくりとして、この曲は非常に効果的である。明るい未来へ向かうという副題を持ちながらも、過去を完全に切り捨てるのではなく、静かに見つめ直す。そこに、本作の成熟した余韻がある。

総評

『eternal sunshine deluxe: brighter days ahead』は、Ariana Grandeの『eternal sunshine』を単に曲数の面で拡張した作品ではなく、オリジナル版が描いた感情の流れをさらに深めるデラックス版である。オリジナル版が、記憶を消したいほどの痛み、関係の終わり、自己防衛、別れの後の曖昧な感情を描いていたのに対し、デラックス版はその先にある回復の微かな光を加えている。

本作の中心にあるのは、記憶との付き合い方である。過去を消せたら楽かもしれない。しかし、過去を消すことは、自分の一部を消すことでもある。Ariana Grandeはこの作品で、記憶を完全に消すのではなく、記憶を別の位置に置き直すことを選んでいる。「past life」はその象徴であり、かつての自分や関係を遠いものとして見つめることで、現在の自分を取り戻そうとしている。

音楽的には、シンセ・ポップ、R&B、ダンス・ポップ、ハウス、バラードが洗練されたバランスで配置されている。派手な高音の見せ場だけに頼らず、Arianaの声は繊細なレイヤー、息づかい、柔らかな発音、空間の中での響きによって感情を伝えている。これは、彼女が単なるディーヴァ的歌唱力の持ち主ではなく、現代的なポップ/R&Bの文脈で声をプロダクションの中心に置けるアーティストであることを示している。

歌詞面では、別れ、自己防衛、欲望、記憶、日常、温かさ、過去からの分離が描かれる。「yes, and?」では外部の視線に対して境界線を引き、「we can’t be friends」では愛と距離の矛盾を歌い、「i wish i hated you」では憎めないことの苦しさを描く。デラックス追加曲では、「twilight zone」が記憶の不安定さを、「warm」が回復の温度を、「dandelion」が手放しと移動を、「past life」が過去との分離を、「Hampstead」が場所に残る記憶を表現している。

『brighter days ahead』という副題は、アルバムを単純に明るくするものではない。むしろ、暗さや痛みを十分に見つめた後で、それでも未来に目を向けるための言葉である。明るい日々は、過去をなかったことにした先にあるのではない。過去が過去になったことを受け入れ、その痛みと共に新しい時間へ進むことで見えてくる。本作は、その繊細な回復の過程を描いている。

Ariana Grandeのキャリア全体で見ると、本作は『thank u, next』以降の自己認識の流れをさらに成熟させた作品である。『thank u, next』では喪失と感謝を通して前へ進む姿勢があり、『Positions』では親密さと自己受容が描かれた。『eternal sunshine deluxe』では、それらを経たうえで、記憶そのものをどう扱うかが主題になる。これは、ポップ・スターとしてだけでなく、一人の表現者としてのAriana Grandeの成熟を示す重要な作品である。

日本のリスナーにとっては、シングル曲だけでなく、アルバム全体の流れを通して聴くことで価値が増す作品である。華やかなヒット曲、R&Bの官能性、ダンス・ポップの軽やかさ、静かなバラード、デラックス追加曲の内省が一つの物語としてつながっている。特に、歌詞の細かなニュアンスを追うことで、Ariana Grandeがどれほど丁寧に「別れの後の心」を描いているかが見えてくる。

『eternal sunshine deluxe: brighter days ahead』は、忘れたい過去と、それでも残る記憶の間で揺れながら、未来へ向かうためのアルバムである。痛みは消えない。記憶も完全には消えない。それでも、過去はいつか「past life」になり、温かさは戻り、タンポポの種のように新しい場所へ飛んでいく。Ariana Grandeは本作で、その静かで複雑な再生を、洗練されたポップ/R&Bとして表現している。

おすすめアルバム

1. Ariana Grande – eternal sunshine

デラックス版の基盤となるオリジナル・アルバムであり、記憶、別れ、自己認識、再出発をテーマにした作品である。まずオリジナル版を通して聴くことで、デラックス追加曲がどのように物語を補強しているかが分かる。シンセ・ポップ、R&B、ダンス・ポップが洗練された形で融合している。

2. Ariana Grande – Positions

『eternal sunshine』の前作にあたり、親密なR&B/ポップを中心にしたアルバムである。恋愛、身体性、安心、自己受容が柔らかい音像で描かれており、『eternal sunshine deluxe』の「warm」や「imperfect for you」に通じる親密な感覚を理解するうえで重要である。

3. Ariana Grande – thank u, next

Ariana Grandeのキャリアにおける大きな転換点となった作品であり、喪失、回復、自己認識を現代的なポップ/R&Bとして表現している。『eternal sunshine deluxe』にある別れと記憶のテーマは、この作品で提示された自己更新の流れをさらに成熟させたものとして聴くことができる。

4. SZA – SOS

現代R&Bにおける恋愛の不安、自己認識、欲望、未練を多面的に描いた重要作である。Ariana Grandeとは声の質感やポップ性は異なるが、恋愛の複雑さや感情の揺れを率直に扱う点で、『eternal sunshine deluxe』と響き合う。現代R&Bにおける内面表現を理解するうえで有効である。

5. Robyn – Honey

ダンス・ポップと感情の回復を結びつけた作品であり、別れや痛みを抱えながらも、身体を動かすことで少しずつ前へ進む感覚がある。『eternal sunshine deluxe』の「yes, and?」や「bye」に見られる、悲しみをダンス・ポップへ変換する感覚と相性がよい。

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