発売日: 2021年6月18日
ジャンル: R&B、ソウル、ヒップホップ、ポップ
H.E.R.の待望のデビューアルバムBack of My Mindは、現代R&Bをリードするアーティストとしての彼女の存在感を再確認させる一作である。これまでに数々のEPやコンピレーションアルバムをリリースしてきた彼女だが、本作はその集大成と言える。全21曲、約80分にも及ぶ壮大なアルバムには、彼女の内省的な歌詞、シルキーなボーカル、そして卓越したギタープレイが凝縮されている。
アルバムのテーマは、「心の奥底にある思い」に焦点を当てており、愛、葛藤、喪失、自尊心、社会問題など、多岐にわたるトピックが詩的に描かれている。音楽的にはR&Bを基調としつつ、ポップ、ヒップホップ、ソウルといった要素が融合しており、多彩なサウンドスケープが楽しめる。ゲストアーティストには、タイ・ダラー・サインやYG、DJ・カレド、サンダーキャットなど、多ジャンルで活躍する豪華な面々が参加し、アルバム全体にダイナミズムを与えている。
トラックごとの解説
1. We Made It
アルバムの幕開けを飾る、ゆったりとしたグルーヴが心地よいトラック。成功を掴むまでの道のりを回想しつつ、自分自身への肯定感を歌う。
2. Back of My Mind (feat. Ty Dolla $ign)
タイトル曲にふさわしい、深い内省を描く楽曲。タイ・ダラー・サインとのコラボが際立ち、リラックスしたムードが曲全体を包む。
3. Trauma (feat. Cordae)
重厚なビートに乗せ、H.E.R.とコーデーが個人的な苦悩や社会的な問題を歌い上げる。メッセージ性が強く、聴き応えのある一曲。
4. Damage
アルバムの中でも特に注目を集めたシングル曲。アリシア・キーズを思わせる洗練されたR&Bサウンドと、愛の脆さを描いた歌詞が印象的だ。
5. Find a Way (feat. Lil Baby)
ラップとR&Bの融合が楽しめる楽曲。リル・ベイビーとのケミストリーが光り、軽快なリズムがクセになる。
6. Bloody Waters (feat. Thundercat)
サンダーキャットとの共作で、ジャズ的なアプローチが印象的な一曲。内なる葛藤と再生のテーマを描いている。
7. Closer to Me
スローバラードで、H.E.R.の繊細なボーカルが際立つ。愛と近づきたいという純粋な感情が、美しいメロディに込められている。
8. Cheat Code
リズム感のあるビートとユニークなメロディラインが特徴。愛における複雑な感情を描いている。
9. Mean It
ギター主体のアコースティックトラックで、H.E.R.のシンプルで純粋な表現力が光る。
10. Paradise (feat. Yung Bleu)
甘くドリーミーなサウンドが特徴の楽曲。ヤング・ブルーのラップがスムーズに溶け込み、リスナーを心地よい空間へと誘う。
11. Process
アルバムの中でも最も内省的な楽曲の一つ。愛や喪失をテーマにした静かなバラードで、歌詞が心に響く。
12. Hold On
アコースティックなギターと滑らかなボーカルが絶妙に絡み合うトラック。愛を手放したくないという切実な感情が歌われている。
アルバム総評
Back of My Mindは、H.E.R.がアーティストとしてのアイデンティティを改めて確立し、多様な音楽性を披露した意欲作だ。R&Bのルーツをしっかりと感じさせつつも、現代的な要素を大胆に取り入れており、彼女の音楽が常に進化していることを示している。特に「Damage」や「Trauma」といった楽曲は、彼女の卓越したソングライティングと感情表現の豊かさを感じさせる。
全体を通じて、一貫したテーマを持ちながらもサウンドに変化があり、聴くたびに新しい発見がある。本作は、リスナーにH.E.R.の内面世界を垣間見せると同時に、彼女がR&Bシーンを牽引する存在であることを証明している。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
“Over It” by Summer Walker
感情的な歌詞と洗練されたプロダクションが特徴。愛と葛藤をテーマにしたアルバムで、H.E.R.ファンにも共感を呼ぶ。
“CTRL” by SZA
恋愛や自己探求を描いた内省的な作品。繊細な歌詞と現代的なR&Bサウンドが共通する。
“Good Days” by SZA
柔らかいボーカルと深い歌詞が心に響くシングル集。H.E.R.のリリカルな側面に惹かれる人におすすめ。
“A Seat at the Table” by Solange
社会問題と個人的な体験を融合した深い作品。H.E.R.のメッセージ性に共鳴する。
“Anticipation” by Trey Songz
R&Bの伝統とモダンなスタイルを融合したアルバム。スムーズなボーカルとラブソングが魅力的。
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