アルバムレビュー:Good Stuff by The B-52’s

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:1992年6月23日

ジャンル:ニュー・ウェイヴ、ダンス・ロック、ポップ・ロック、ファンク・ロック、オルタナティヴ・ダンス

概要

The B-52’sの『Good Stuff』は、1992年に発表された通算6作目のスタジオ・アルバムであり、1989年の大ヒット作『Cosmic Thing』に続く作品として位置づけられる。『Cosmic Thing』は「Love Shack」「Roam」の成功によって、バンドを1980年代ニュー・ウェイヴの個性派から、世界的なポップ・アクトへと押し上げた。その後に制作された『Good Stuff』は、商業的な期待を背負いながらも、The B-52’sらしいキッチュなユーモア、ダンス・グルーヴ、レトロなポップ感覚を保ちつつ、より1990年代的なクラブ・ミュージックやファンク・ロックの質感を取り込んだアルバムである。

本作の大きな特徴は、Cindy Wilsonが不参加であることにある。The B-52’sの初期から重要な役割を担ってきたCindy Wilsonは、兄でギタリストのRicky Wilsonを1985年に失った後もバンドに残っていたが、『Good Stuff』の時期には休養に入り、本作には参加していない。そのため、ヴォーカル面ではFred SchneiderとKate Piersonの存在感がより前面に出ている。Cindy Wilson特有の少し陰影を帯びた声や、Kateとのツイン・ヴォーカルが作り出す初期の鋭いコントラストは薄まり、その代わりにKate Piersonの華やかな歌唱と、Fred Schneiderの語りに近いキャラクター性がアルバムの中心を形成している。

音楽的には、『Good Stuff』はThe B-52’sの持つパーティー・バンドとしての側面を、1990年代初頭のダンス・ロック文脈へ接続した作品である。デビュー作『The B-52’s』や『Wild Planet』にあったガレージ的な粗さ、サーフ・ロック由来の鋭いギター、B級映画的な奇想は後景に退き、より厚みのあるリズム、シンセサイザー、ホーン風の装飾、ファンク的なベースライン、クラブ対応のビートが強調されている。これは単なるポップ化ではなく、彼らがもともと持っていた「踊るためのニュー・ウェイヴ」という性格を、時代に合わせて更新したものといえる。

1992年という時代背景も重要である。アメリカのメインストリームでは、グランジやオルタナティヴ・ロックが急速に台頭し、1980年代的な派手なポップ・ロックやニュー・ウェイヴの感覚は時代遅れと見なされつつあった。一方で、クラブ・ミュージックやハウス、ヒップホップ、ファンクを取り込んだポップも広がり、ダンス性は別の形で再評価されていた。『Good Stuff』は、そうした転換期において、The B-52’sが自らの明るさと奇抜さを守りながら、よりグルーヴ重視のサウンドへ接近した作品である。

『Cosmic Thing』の大成功と比べると、『Good Stuff』は一般的な知名度ではやや控えめな扱いを受けることが多い。しかし、アルバムとして聴くと、The B-52’sのキャリア後半における重要な転換点であり、彼らが単なる懐古的なニュー・ウェイヴ・バンドではなく、ダンス・ミュージックの変化に反応し続けるグループであったことが分かる。特に表題曲「Good Stuff」は、ファンク、ロック、クラブ・ビートを組み合わせた強力なシングルであり、バンドのポップな生命力を示す代表曲のひとつである。

本作は、デビュー期のThe B-52’sが持っていた異様なまでの新奇性とは異なり、成熟したパーティー・ミュージックとしての側面が強い。初期作品では、彼らはロックの常識そのものを変形させる存在だったが、『Good Stuff』では、自分たちの確立したキャラクターを利用しながら、より大きなダンス・フロアへ向けた音楽を展開している。これは、バンドの奇抜さが丸くなったというより、奇抜さをポップなフォーマットの中で再配置した作品と捉えるべきである。

全曲レビュー

1. Tell It Like It T-I-Is

オープニング曲「Tell It Like It T-I-Is」は、アルバム全体の明るくファンキーな方向性を示す楽曲である。タイトルの綴りを強調する言葉遊びからして、The B-52’sらしい軽妙なユーモアが表れている。彼らの音楽では、言葉は意味を伝えるだけでなく、リズムやキャラクターを生み出す素材でもある。この曲でも、フレーズの反復や強調が、歌詞内容以上にダンス・グルーヴの一部として機能している。

サウンドは、1980年代初期の鋭いニュー・ウェイヴよりも、1990年代初頭のポップ・ファンクに近い。ベースとドラムは太く、ギターやシンセはリズムを補強する形で配置されている。Fred Schneiderの語り調ヴォーカルは、曲にコミカルな推進力を与え、Kate Piersonのコーラスは華やかな高揚感を加える。Cindy Wilson不在によるヴォーカルの厚みの変化はあるが、その分、FredとKateの役割分担が明確になっている。

歌詞のテーマは、率直に語ること、隠さずに表現することに関わっている。The B-52’sの楽曲はしばしばナンセンスに見えるが、この曲ではコミュニケーションの勢いそのものが重要である。深刻な告白ではなく、パーティーの中で声を上げ、自分の存在を打ち出すような感覚がある。これは、アルバム全体の外向的な性格をよく表している。

オープニングとしての役割も明確である。『Good Stuff』は内省的な作品ではなく、身体を動かしながら聴くことを前提としたアルバムである。「Tell It Like It T-I-Is」は、その入口として、重くなりすぎないファンクネスとThe B-52’s特有の言葉遊びを提示している。

2. Hot Pants Explosion

「Hot Pants Explosion」は、タイトルからしてThe B-52’sのキッチュな感覚が強く出た楽曲である。「ホットパンツ」というファッション・アイテムは、1970年代的なディスコ、ファンク、キャンプな視覚文化を想起させる。The B-52’sは、こうした少し古びたポップカルチャーの記号を、恥ずかしがらずに過剰なまでに祝祭化することに長けている。

音楽的には、ファンク・ロック色が濃く、リズムの跳ね方が曲の中心になっている。ギターは初期のようなサーフ・ロック的リフというより、グルーヴを刻む役割が強い。ドラムとベースの組み合わせはダンス・フロア向けで、全体としてはロック・バンドの演奏というより、クラブ・トラックに近い反復性を持つ。

歌詞は、身体、ファッション、街の熱気、パーティー的な興奮をイメージさせる。The B-52’sの特徴は、性的なモチーフや身体的な興奮を扱っても、重く生々しい方向には向かわない点である。ここでの欲望は、漫画的で、原色的で、ポップな誇張として表現される。ロックにおける性的表現がしばしば男性的な誇示に傾きがちな中で、The B-52’sはそれをより演劇的でユーモラスな祝祭へ変換する。

「Hot Pants Explosion」は、アルバムのテンションを一気に高める曲であり、『Good Stuff』が持つ1990年代的なダンス・ポップの明るさを象徴している。初期作品の奇妙な鋭さとは異なるが、ファッションや身体の記号を使ってポップな世界を作るという点では、The B-52’sの本質に忠実な楽曲である。

3. Good Stuff

表題曲「Good Stuff」は、本作を代表する楽曲であり、The B-52’sのキャリア後半における重要なシングルである。力強いリズム、ファンク色の濃いベース、明快なフック、Kate Piersonの伸びやかなヴォーカル、Fred Schneiderのキャラクター性が一体となり、アルバムの中心的なエネルギーを形成している。

この曲の最大の特徴は、The B-52’s特有のパーティー感覚が、より洗練されたダンス・ロックとして提示されている点である。初期の「Rock Lobster」や「Planet Claire」では、奇妙なリフとナンセンスなイメージが楽曲の核だったが、「Good Stuff」では、より直接的に踊れるグルーヴとポップなコーラスが前面に出る。サウンドは厚く、プロダクションも明るく、1980年代末から1990年代初頭のメインストリーム・ポップに適応している。

歌詞は、快楽、魅力、欲望、エネルギーを「good stuff」という曖昧で包括的な言葉に集約している。この曖昧さが重要である。具体的に何が「良いもの」なのかを説明しすぎず、音楽そのもの、恋愛、身体的な高揚、パーティーの空気、人生を楽しむ感覚をまとめて指している。The B-52’sの音楽における「楽しさ」は、単なる軽さではなく、規範や抑圧から一時的に逃れるための解放の場でもある。

「Good Stuff」は、Cindy Wilson不在のアルバムにおいて、Kate Piersonの存在感を強く示す曲でもある。彼女の声は、派手で力強く、楽曲のポップな輪郭を決定づけている。Fred Schneiderの語りや合いの手は、曲にThe B-52’sらしいコミカルな角度を加える。両者の組み合わせによって、曲は単なるファンク・ポップではなく、バンド固有のキャラクターを持つ作品になっている。

4. Revolution Earth

「Revolution Earth」は、アルバムの中で比較的スケールの大きなテーマを持つ楽曲である。タイトルには「地球の革命」という意味が込められており、The B-52’sがしばしば扱ってきた宇宙的・地球的なイメージが、1990年代的なエコロジー意識や精神的な変化の感覚と結びついている。

サウンドは、表題曲のような直接的なファンク・ダンス路線よりも、やや浮遊感のあるポップ・ロック寄りである。Kate Piersonのヴォーカルが大きく広がり、メロディには開放感がある。The B-52’sの楽曲において、宇宙や地球といった大きなモチーフは、しばしばB級SF的なユーモアと結びつくが、この曲ではより真剣なニュアンスも感じられる。

歌詞は、地球規模の変化、意識の転換、自然との関係を示唆している。1990年代初頭は、環境問題やニューエイジ的な精神文化がポップカルチャーにも浸透していた時期であり、この曲はそうした空気を反映している。ただし、The B-52’sは説教的なエコ・ソングにはしない。彼ららしく、ポジティヴでダンサブルな感覚の中に、変化への期待を置いている。

「Revolution Earth」は、『Good Stuff』の中で、単なるパーティー・アルバム以上の広がりを与える楽曲である。The B-52’sの明るさはしばしば軽く見られがちだが、この曲では、その明るさが未来への想像力として機能している。地球、身体、ダンス、意識が結びつく点で、彼らのポップ観の広さを示している。

5. Dreamland

「Dreamland」は、タイトル通り夢のような空間を描く楽曲であり、アルバムの中ではややメロウで幻想的な位置づけを持つ。The B-52’sの音楽には、現実から少しずれた場所へ聴き手を連れていく力があるが、この曲ではそれがパーティーの熱狂ではなく、夢想的なムードとして表れている。

音楽的には、柔らかいシンセや広がりのあるアレンジが印象的である。リズムはしっかりしているが、曲全体の質感は穏やかで、浮遊感がある。Kate Piersonのヴォーカルは明るさだけでなく、少しロマンティックな響きを持ち、Fred Schneiderの存在感も控えめに楽曲の色を整えている。

歌詞では、夢の国、逃避、理想化された場所への憧れが描かれる。The B-52’sにとって、こうした架空の場所は重要なモチーフである。デビュー作の「Planet Claire」が架空の惑星を舞台にしていたように、彼らは現実の地名や社会ではなく、ポップな想像力によって作られた場所を好んで描いてきた。「Dreamland」は、その系譜に属する曲だが、初期の奇妙なSF感覚よりも、よりロマンティックで柔らかい。

アルバムの流れの中では、前半のファンキーな高揚を一度落ち着かせる役割を持つ。『Good Stuff』は全体として明るくダンサブルな作品だが、「Dreamland」のような曲があることで、単調なパーティー・アルバムにはならず、夢見心地の空間的な広がりが生まれている。

6. Is That You Mo-Dean?

「Is That You Mo-Dean?」は、The B-52’sのSF趣味とダンス・ロック感覚が結びついた、本作の中でも特にバンドらしい楽曲である。タイトルに登場する「Mo-Dean」は、宇宙人や異世界の存在を連想させる奇妙な名前であり、初期The B-52’sの「Planet Claire」や「There’s a Moon in the Sky (Called the Moon)」に通じるレトロ・フューチャー的なユーモアを感じさせる。

サウンドは、ファンク色の強いリズムとニュー・ウェイヴ的なシンセの組み合わせが中心である。Fred Schneiderの語り調ヴォーカルは、この種のコミカルでSF的な楽曲に非常によく合う。彼の声は、歌唱というよりもキャラクターそのものであり、曲の世界観を一瞬で作り出す。Kate Piersonのコーラスは、曲に華やかな高揚感を加え、奇妙さとポップさのバランスを取っている。

歌詞では、宇宙的な出会いや奇妙な通信のようなイメージが展開される。The B-52’sは、SFを難解な思想や未来技術の表現としてではなく、B級映画、UFO、銀色の衣装、チープなセットのようなポップな記号として使う。そのため、この曲の宇宙感覚は壮大ではなく、親しみやすく、どこか間の抜けた魅力を持っている。

「Is That You Mo-Dean?」は、『Good Stuff』の中でも初期The B-52’sとの連続性を強く感じさせる曲である。プロダクションは1990年代的に厚くなっているが、奇妙なキャラクター名、宇宙的なナンセンス、ダンス・グルーヴという組み合わせは、まさにバンドの核にあるものだ。この曲によって、アルバムは単なる時代対応型のダンス・ロック作品ではなく、The B-52’s独自のポップ宇宙を維持している。

7. The World’s Green Laughter

「The World’s Green Laughter」は、タイトルからして自然、地球、笑い、生命力を思わせる楽曲である。本作には「Revolution Earth」や「Breezin’」など、自然や環境に関わるイメージを持つ曲が複数含まれており、この曲もその流れの中に位置づけられる。The B-52’sのカラフルなポップ感覚が、1990年代初頭のエコロジカルな意識と結びついた例といえる。

音楽的には、軽やかで明るいグルーヴが中心となっている。深刻な社会派ロックのように環境問題を重々しく扱うのではなく、地球の生命力や自然の笑い声を、ダンス可能なポップとして表現している点が特徴である。Kate Piersonの声は、楽曲に開放的なイメージを与え、Fred Schneiderのユーモラスな語りは、曲が抽象的になりすぎるのを防いでいる。

歌詞における「green」は、自然や植物の色であると同時に、再生、若さ、生命力を象徴する。The B-52’sは、自然を荘厳なものとして扱うよりも、ポップで遊び心のある存在として描く。世界が笑っているというイメージは、彼ららしい擬人化であり、深刻な危機感よりも、生命そのものの陽気さを強調している。

この曲は、『Good Stuff』が持つポジティヴな世界観を支える一曲である。1990年代初頭のロックがしばしば内省、倦怠、怒りへ向かっていた一方で、The B-52’sはなおも笑い、踊り、色彩を信じていた。「The World’s Green Laughter」は、その姿勢を象徴する楽曲といえる。

8. Vision of a Kiss

「Vision of a Kiss」は、アルバムの中でロマンティックな側面が比較的強く表れた曲である。タイトルは、現実の恋愛そのものというより、キスの幻影、あるいは欲望のイメージを示している。The B-52’sは恋愛を扱う場合でも、一般的なラブ・ソングのように感傷へ深く沈むのではなく、視覚的で少し演劇的な表現に変換する。

サウンドは、ダンス・グルーヴを保ちながらも、ややメロディアスで滑らかな質感を持つ。Kate Piersonの歌唱は、明るく力強いだけでなく、ここでは少し艶やかでロマンティックな表情を見せる。Fred Schneiderのパフォーマンスが加わることで、曲は甘くなりすぎず、The B-52’sらしいユーモアと距離感を保っている。

歌詞では、キスという身体的な行為が、直接的な描写ではなく、イメージやヴィジョンとして扱われる。この距離感が興味深い。The B-52’sの音楽における欲望は、常に少し漫画的で、少し未来的で、少し人工的である。生々しい恋愛の苦悩よりも、ポップカルチャーの中で誇張された欲望のイメージに近い。

「Vision of a Kiss」は、アルバム全体の中では派手な代表曲というより、The B-52’sのポップな官能性を示す中盤曲である。身体性とイメージ、ロマンスとユーモアが交差する点で、バンドの成熟した表現を感じさせる。

9. Breezin’

「Breezin’」は、タイトル通り風通しの良い、軽快で開放的な楽曲である。アルバム終盤に配置されることで、作品全体にリラックスした空気を与えている。The B-52’sの音楽には、常にパーティーの熱気と同時に、海辺やドライブ、屋外の開放感を思わせる要素があるが、この曲ではその側面が強く出ている。

音楽的には、軽やかなリズムと明るいメロディが中心で、重いファンクというよりはポップ・ロック寄りの感触がある。サウンドは厚いが、曲の印象は軽い。この「軽さ」は、The B-52’sにとって重要な美学である。軽さは内容のなさではなく、聴き手を閉塞感から解放するための方法として機能している。

歌詞では、風、移動、自由、気分の転換といったイメージが感じられる。アルバム全体が、ダンス、地球、宇宙、夢、欲望といった外向きのモチーフを多く含んでいる中で、「Breezin’」はそれらをより日常的な解放感へと落とし込む。大きな革命や宇宙的な出会いではなく、風に乗って進むような感覚である。

この曲は、『Good Stuff』の終盤において、過剰なパーティー感を少し落ち着かせ、爽やかな後味を作る役割を果たしている。The B-52’sの音楽が持つ明るさの中でも、比較的穏やかで親しみやすい側面を示す楽曲である。

10. Bad Influence

「Bad Influence」は、アルバムの締めくくりに置かれた楽曲であり、タイトルが示す通り「悪い影響」をテーマにしている。ただし、The B-52’sにおける「悪さ」は、破滅的なものというより、社会的な規範から外れる楽しさ、少し危険で魅力的な逸脱として描かれる。彼らの音楽は、常に行儀の良いポップと、奇妙で過剰なパーティー感覚の間にある。

音楽的には、ファンク色のあるリズムと、Fred Schneiderのキャラクター性が前面に出る。彼の語りは、誘惑者、司会者、奇妙な案内人のように機能し、曲にコミカルな危うさを与える。Kate Piersonのヴォーカルは、曲をポップに引き上げ、過度にダークな方向へ行かないようバランスを取っている。

歌詞は、誰かに悪い影響を与える存在、あるいは悪い影響に惹かれる心理を描いている。The B-52’sは、道徳的な善悪を単純に語るよりも、逸脱の魅力を楽しむ。これは、彼らのクィアな感性やキャンプな美学とも関係している。社会が「変」「派手」「軽薄」「危険」とみなすものを、彼らはポップなエネルギーとして肯定する。

アルバムの最後に「Bad Influence」が置かれていることは象徴的である。『Good Stuff』は一貫して、良いもの、楽しいもの、踊れるもの、解放的なものを肯定するアルバムだが、その楽しさは完全に健全で管理されたものではない。少し逸脱し、少し過剰で、少し悪いからこそ魅力的である。その意味で、この曲はThe B-52’sの本質を再確認する終曲となっている。

総評

『Good Stuff』は、The B-52’sのキャリアにおいて、しばしば『Cosmic Thing』の後続作として比較されるアルバムである。『Cosmic Thing』がバンド最大の商業的成功をもたらした作品であったため、本作はその影に隠れがちだが、内容としては1990年代初頭のThe B-52’sの方向性を明確に示す重要作である。初期の鋭く奇妙なニュー・ウェイヴ感覚をそのまま再現するのではなく、より厚いプロダクション、ファンク色の強いリズム、クラブ・ミュージックに近い反復性を取り込み、成熟したダンス・ポップへと展開している。

本作の中心にあるのは、The B-52’sらしい「楽しさ」の美学である。ただし、その楽しさは単純な娯楽性だけではない。The B-52’sは、デビュー当初からロックの深刻さや男性中心的な価値観をずらし、派手なファッション、ナンセンスな言葉、レトロなポップカルチャー、B級SF、ダンス、ユーモアを武器にしてきた。『Good Stuff』でもその姿勢は変わらない。むしろ、1990年代の音楽シーンがグランジやオルタナティヴ・ロックの内省的な空気に向かう中で、彼らの明るさは一種の対抗的な態度として機能している。

Cindy Wilsonの不在は、本作の印象を大きく左右している。初期The B-52’sにおけるKate PiersonとCindy Wilsonのツイン・ヴォーカルは、バンドのサウンドに鋭さと厚みを与えていた。その片方が欠けたことで、『Good Stuff』は過去作と比べると、ヴォーカルの陰影や掛け合いの複雑さがやや減っている。一方で、Kate Piersonの華やかな声とFred Schneiderのユーモラスな語りが前面に出たことで、アルバム全体はよりストレートなパーティー・ポップとしてまとまっている。これは欠点というより、当時のバンド編成に応じた音楽的再編といえる。

サウンド面では、初期のベースレスに近いスカスカした緊張感や、Ricky Wilsonの独特なギター・リフによる奇妙な空間性は後退している。その代わりに、リズム・セクションの厚み、ファンク的なノリ、ポップ・ロックとしての完成度が前面に出る。The B-52’sの音楽がもともと持っていたダンス性を、1990年代のプロダクションで再構築した作品と考えると、本作の狙いは明確である。特に「Good Stuff」「Tell It Like It T-I-Is」「Hot Pants Explosion」などは、バンドの祝祭性を時代に合わせてアップデートしている。

歌詞面では、欲望、ファッション、地球、夢、宇宙、風、悪い影響といったモチーフが並ぶ。The B-52’sらしく、深刻な物語や内面告白よりも、イメージの連鎖とキャラクター性が重視されている。だが、その中には1990年代初頭らしい環境意識や、身体の解放、規範からの逸脱といったテーマも読み取れる。「Revolution Earth」や「The World’s Green Laughter」は、彼らのポップな言語で地球や自然を扱った楽曲であり、単なるパーティー・バンド以上の視野を示している。

日本のリスナーにとって『Good Stuff』は、The B-52’sの入門作としてはデビュー作や『Cosmic Thing』ほど頻繁に挙げられないかもしれない。しかし、1990年代初頭のダンス・ロック、ポップ・ファンク、ニュー・ウェイヴ以後のバンドの生存戦略を知るうえでは非常に興味深い作品である。特に、80年代ニュー・ウェイヴの奇抜さが90年代ポップの中でどのように変化したのかを聴くには適している。YMO以降の日本のニュー・ウェイヴや、1990年代の渋谷系、クラブ・ポップに見られるレトロ引用とダンス感覚に親しむリスナーにも、その接点は見つけやすい。

『Good Stuff』は、The B-52’sの最高傑作として語られることは少ないが、バンドのポップな持続力を示すアルバムである。彼らは時代の流れに完全に合わせて自分たちを消すのではなく、The B-52’sらしい色彩、ユーモア、奇妙さを残しながら、よりファンキーで厚みのあるサウンドへ移行した。結果として本作は、初期の鋭さと『Cosmic Thing』の大衆性の間にある、後期The B-52’sの個性を記録した作品となっている。

このアルバムにおける「good stuff」とは、単なる快楽や楽しい音楽だけを意味しない。そこには、踊ること、笑うこと、派手であること、少し変であること、地球や宇宙を想像すること、規範から外れることを肯定するThe B-52’sの哲学が含まれている。1990年代の空気の中で、彼らはなおも明るく、奇妙で、ダンサブルであり続けた。その意味で『Good Stuff』は、The B-52’sというバンドの生命力を証明する作品である。

おすすめアルバム

1. The B-52’s – Cosmic Thing

『Good Stuff』の前作にあたり、The B-52’s最大の商業的成功を収めたアルバム。「Love Shack」「Roam」を含み、ニュー・ウェイヴ由来の奇抜さをよりポップで開放的なサウンドへ変換している。『Good Stuff』の明るくダンサブルな方向性は、この作品の成功を土台にしている。

2. The B-52’s – Wild Planet

初期The B-52’sの鋭さと奇妙さを知るうえで重要なセカンド・アルバム。『Good Stuff』よりもサウンドは簡素でガレージ的だが、ナンセンスな歌詞、ダンス・ビート、レトロなポップ感覚はすでに確立されている。後期作品との違いを理解するためにも有効な一枚である。

3. Deee-Lite – World Clique

1990年代初頭のクラブ・ポップ、ハウス、ファンク、レトロ感覚を融合した作品。The B-52’sと同じく、派手なヴィジュアル、ダンス性、キャンプなユーモアを武器にしている。『Good Stuff』の持つポジティヴでカラフルなダンス感覚と親和性が高い。

4. Talking Heads – Speaking in Tongues

ニュー・ウェイヴとファンク、アフロビート、ダンス・ロックを結びつけたTalking Headsの代表作。The B-52’sとは異なり、より知的で都市的なアプローチだが、ロック・バンドがダンス・グルーヴを取り込む方法として重要な比較対象になる。『Good Stuff』のファンク色を理解する手がかりにもなる。

5. R.E.M. – Out of Time

The B-52’sと同じジョージア州アセンズ出身のR.E.M.による1991年のヒット作。音楽性は異なるが、アセンズのオルタナティヴ・シーンから全国的な成功へ向かったバンドとして関連性が深い。Kate Piersonが参加した「Shiny Happy People」も収録されており、The B-52’s周辺の明るいポップ感覚を別の文脈で味わえる作品である。

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