
楽曲の概要
「Girls Like You (feat. Cardi B)」は、Maroon 5が2018年に発表したシングルである。原曲は2017年の6作目のアルバム『Red Pill Blues』に収録されていたが、翌年にCardi Bのラップ・ヴァースを追加したバージョンがシングルとしてリリースされた。作詞・作曲にはAdam Levine、Cirkut、Starrah、Jason Evigan、Gian Stoneらが参加し、Cardi B版では彼女もクレジットされている。プロデュースはCirkutとJason Eviganが中心となって担当した。
サウンドはMaroon 5の初期作品にあったファンク・ロックからかなり離れており、アコースティックギターの反復とプログラミングされたビートを中心にした簡潔なポップである。Cardi B版では、Adam Levineによる親密なラブソングの途中へ女性側の視点が入り、曲の意味にも少し変化が生まれた。Billboard Hot 100では7週にわたって1位を記録し、2010年代後半のMaroon 5を代表する大ヒットとなった。
歌詞の概要
歌詞の語り手は、恋人との関係が必ずしも順調ではなかったことを認めている。二人の間には衝突があり、前夜にも問題が起きたことが示される。それでも語り手は、相手と一緒に過ごす時間を必要としている。完璧な恋愛を理想化するのではなく、喧嘩や間違いを抱えた関係の中で、それでも自分にはこの相手が必要なのだと確認していく。
タイトルの「Girls Like You」は一見すると「君みたいな女の子」という一般化された表現だが、歌詞ではかなり特定の相手へ向けられている。語り手は自分自身にも問題があることを理解しており、そんな自分と付き合ってくれる相手の存在を必要としている。したがって、相手を理想的な女性像として一方的に褒めるというより、自分の欠点を含めて関係を受け入れてくれる人物への感謝に近い。
Cardi Bのヴァースが加わると、この構図に別の視点が入る。彼女は男性から評価されるだけの受動的な「girl」として振る舞わず、自分自身の価値や成功を意識しながら、相手にも相応の態度を求める。原曲では男性側の「君が必要だ」という言葉が中心だったが、リミックスでは「その女性から選ばれるには男性側にも条件がある」という応答が生まれる。この視点の往復が、Cardi B版を単なるゲスト追加以上のものにしている。
制作背景・時代背景
『Red Pill Blues』期のMaroon 5は、ロックバンドというより、現代のポップやR&B、ヒップホップと柔軟に接続するグループへ変化していた。アルバムにはSZA、A$AP Rocky、Future、LunchMoney Lewisなど多数のゲストが参加しており、バンド編成だけで完結することにこだわらない制作方法が明確になっている。「Girls Like You」のオリジナル版にはラップはなく、アルバム終盤に置かれた比較的シンプルなポップソングだった。
2018年のシングル版ではCardi Bが参加した。当時のCardi Bは「Bodak Yellow」で全米1位を獲得し、デビューアルバム『Invasion of Privacy』も大きな成功を収めていた時期である。Maroon 5にとって彼女の参加は、曲にヒップホップ的な要素を加えるだけでなく、男性側だけで完結していたラブソングへ別の人格を持ち込む効果があった。
同時に公開されたDavid Dobkin監督のミュージックビデオも、このバージョンの受け取られ方に大きく影響した。Camila Cabello、Gal Gadot、Jennifer Lopez、Mary J. Blige、Ellen DeGeneres、Millie Bobby Brownなど、さまざまな分野で活動する女性が次々に登場する構成で、最後にはAdam Levineの妻Behati Prinslooと娘も姿を見せる。これによって曲は一対一の恋愛だけでなく、女性への敬意や感謝を広く示す作品としても提示された。
歌詞の抜粋と和訳
「Girls like you」
和訳:君みたいな女性
この短い言葉が曲全体の中心であり、サビでは何度も反復される。ただし「girls」と複数形になっているため、特定の恋人について歌いながら、より一般的な女性像にも開かれている。この広がりは、さまざまな女性を登場させたミュージックビデオによってさらに強調された。
Cardi Bの参加によって、その「girls」が男性から一方的に語られる対象ではなくなることも重要である。彼女自身のヴァースが入ることで、女性側にも欲望、条件、判断があることが示される。原曲とCardi B版の最大の違いは、この視点の追加にある。
サウンドと歌詞の考察
「Girls Like You」のサウンドで最も重要なのは、ほぼ曲全体を支えるアコースティックギターの反復である。短いコードパターンを細かく刻み続け、派手なギターリフや大きなコードチェンジによって展開を作ることはしない。この反復が曲に一定の温度を与え、Adam Levineの声を前面に置く。Maroon 5というバンド名義の作品でありながら、演奏の見せ場よりボーカルとフックを優先した作りである。
ビートも非常に抑制されている。ドラムを生々しく大きく鳴らすのではなく、プログラミングされたキックやスネア、細かなパーカッションによって輪郭を作る。低音も巨大なベースラインで曲を引っ張るのではなく、ギターの循環を下から支える程度に整理されている。そのため音数は決して多くないが、リズムには空白があり、Levineの高い声がその空間を自由に動ける。
この簡潔さは歌詞の構造とも合っている。歌詞は複雑な物語を長く語るのではなく、二人の関係に問題があったことを短く示した後、「それでも君のような人が必要だ」という一点へ何度も戻る。伴奏も同様に、次々と新しいアイデアを提示するより、一つのコード感とグルーヴを繰り返す。音楽と歌詞の両方が同じ場所へ戻ってくることで、「結局、自分が求めているのはこの相手だ」という語り手の結論が強くなる。
Adam Levineの歌唱では、彼の得意とする高い音域が使われているが、声量で圧倒する方向には進まない。ヴァースでは比較的力を抜き、言葉をリズムへ軽く乗せる。サビに入ってもロック的に叫ぶのではなく、ファルセットに近い軽さを保つため、曲全体には親密な感触が残る。恋愛相手へ壮大な誓いを立てるというより、近い距離から同じ言葉を何度も伝えているように聞こえる。
サビの最大の仕掛けは、言葉の単純さである。中心となるフレーズを反復し、その後も短い言葉をリズムよく連ねることで、意味を理解する前に音として記憶できるように作られている。2010年代後半のストリーミング時代のポップでは、長大なイントロや複雑な展開より、早い段階で曲の中心を示すことが重視されるようになった。「Girls Like You」はその傾向に非常によく適応しており、伴奏を簡潔にすることでフックそのものを最大化している。
そこへCardi Bが入ると、曲のリズム感が一時的に変化する。それまでLevineは滑らかなメロディに沿って歌っていたが、Cardi Bは同じテンポの上で言葉をより細かく区切り、アクセントの位置を変える。伴奏を大きく変更しなくても、声の使い方だけで曲の表情が変わるのである。この対比によって、中盤に新しい楽器を大量投入することなく展開を作っている。
さらに重要なのは、Cardi Bの声が歌詞上の力関係を変えることである。Levineのパートだけなら、女性は基本的に「必要とされる存在」として描かれる。しかしCardi Bは自分の成功や価値を強く意識した人物として登場し、男性側にも相応の行動を要求する。柔らかなラブソングの中へ、少し挑発的で自信のある声が入ることで、恋愛は男性が女性を選ぶ一方向の構図ではなくなる。
原曲からCardi B版への変更は、Maroon 5がこの時期に採用していた制作方法もよく示している。完成したバンド曲を固定された作品として扱うのではなく、別のアーティストを加えることで曲の市場、ジャンル、視点を拡張する。これは「Moves Like Jagger」以降のMaroon 5が得意としてきた方法でもある。「Girls Like You」では特に、もともとの簡素なトラックに余白が多いため、ラップを追加しても曲が過密にならない。
一方で、この極端な簡潔さはMaroon 5の初期作品との大きな違いでもある。『Songs About Jane』期には、James Valentineのギターやバンドのファンク的なリズムが楽曲の個性を強く作っていた。「Girls Like You」では演奏者の個性より、プロダクション、ボーカル、反復されるフックが中心になる。これはバンドが演奏主体のポップロックから、外部ソングライターやプロデューサーと協働する現代的なポップユニットへ変化したことを象徴するサウンドでもある。
この曲が好きな人におすすめの曲 5曲
「What Lovers Do」 by Maroon 5 feat. SZA
同じ『Red Pill Blues』期のコラボレーション。軽快な電子ビートと反復的なフックを中心にしながら、男女のボーカルによって恋愛の駆け引きを描く。「Girls Like You」よりダンス寄りの一曲である。
「Memories」 by Maroon 5
簡潔なコード進行とAdam Levineのボーカルを中心にした2019年のヒット曲。「Girls Like You」で目立つ、バンド演奏を抑えてメロディと歌詞を直接届ける方向性がさらに進んでいる。
「The Middle」 by Zedd, Maren Morris & Grey
同じ2018年を代表するポップヒット。ジャンルの異なるアーティストを組み合わせながら、シンプルな伴奏と巨大なボーカルフックへ集中する制作方法が「Girls Like You」と共通している。
「Havana」 by Camila Cabello feat. Young Thug
ポップシンガーとラッパーの組み合わせによって、同じトラックの中に異なる声のキャラクターを配置したヒット曲。「Girls Like You」よりラテン色が強いが、ゲストの登場で曲のリズムを変える方法が近い。
「I Like It」 by Cardi B, Bad Bunny & J Balvin
Cardi Bが同じ2018年に全米1位を獲得した楽曲。サルサの引用とヒップホップを大胆に組み合わせ、「Girls Like You」では抑えられている彼女のリズム感と自己主張をより前面で聞くことができる。
まとめ
「Girls Like You (feat. Cardi B)」は、短いアコースティックギターの反復、抑えた電子ビート、Adam Levineの軽い高音という少数の要素から、大きなポップフックを作った曲である。歌詞では、不完全な自分と関係を続けてくれる相手への必要性が繰り返されるが、Cardi Bの参加によって女性側にも相手を評価し選択する視点が加わった。初期Maroon 5のファンク・ロックとは大きく異なり、演奏の複雑さより声、反復、ゲストとの対比を優先している。その簡潔な設計こそが、2010年代後半のMaroon 5のポップ制作を最も分かりやすく示している。
参照元
- Maroon 5公式サイト
- Interscope Records
- Billboard
- Recording Academy / GRAMMY.com
- MusicBrainz

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