
1. 楽曲の概要
「Girls Like You」は、Maroon 5が2017年に発表した6作目のスタジオ・アルバム『Red Pill Blues』に収録された楽曲である。アルバム収録時はMaroon 5単独名義の曲だったが、2018年5月31日にCardi Bを迎えたヴァージョンがシングルとしてリリースされ、大きなヒットとなった。
作詞作曲にはAdam Levine、Henry Walter、Belcalis Almanzar、Brittany Talia Hazzard、Jason Evigan、Gian Stoneらが関わっている。プロデュースはCirkutとJason Eviganが担当した。Cardi B参加版では、原曲の穏やかなポップ・サウンドにラップ・ヴァースが加わり、楽曲の性格がより現代的なメインストリーム・ポップへ広がった。
「Girls Like You」は、Billboard Hot 100で7週連続1位を記録し、Maroon 5にとっては「Makes Me Wonder」「One More Night」などに続く代表的なチャート成功曲となった。Cardi Bにとっても、ポップ・フィールドでの存在感をさらに強めた楽曲である。英国のOfficial Singles Chartでは7位を記録し、アメリカ以外でも広く聴かれた。
楽曲は、Maroon 5のキャリア後期を象徴する曲でもある。初期の『Songs About Jane』にあったファンク・ロック色は薄く、ここではAdam Levineの声、ミニマルなギター・ループ、打ち込みのリズム、シンプルなメロディを中心に作られている。バンド・サウンドというより、現代ポップの枠組みの中でMaroon 5らしさを再構成した曲といえる。
2. 歌詞の概要
「Girls Like You」の歌詞は、恋人との関係を修復しようとする語り手の視点で進む。語り手は相手と時間を過ごし、すれ違いや問題を抱えながらも、最終的には「君のような女性が必要だ」と歌う。内容は複雑な物語ではなく、恋愛関係の中にある依存、反省、親密さを非常に分かりやすくまとめている。
歌詞の中心にあるのは、特定の相手への必要性である。語り手は、ただ誰かを求めているのではない。「girls like you」という表現は一見すると一般化された言い方だが、曲の中では「君のような人」という個別性を含んでいる。つまり、相手を理想化しながらも、その人でなければならないという感情を示している。
ただし、歌詞には関係の軽さもある。深刻な後悔や内省を長く語るのではなく、夜を過ごすこと、楽しむこと、関係を続けることが簡潔な言葉で示される。Maroon 5の後期の楽曲らしく、感情の複雑さよりも、すぐに口ずさめるフックが優先されている。
Cardi Bのヴァースは、女性側の視点と自己主張を曲に加える。彼女は、恋愛関係の中で自分が簡単に扱われる存在ではないことを示し、相手に対して強気に振る舞う。この部分によって、曲はAdam Levineの語りだけで完結せず、男女の力関係を少しだけ動かす構造になる。原曲よりも会話性が増し、2018年のポップとしての鮮度が高まっている。
3. 制作背景・時代背景
「Girls Like You」は、もともと2017年のアルバム『Red Pill Blues』に収録された楽曲だった。『Red Pill Blues』は、Maroon 5がロック・バンドとしての出発点からさらに離れ、エレクトロポップ、R&B、ヒップホップ、トロピカル・ポップの要素を積極的に取り入れた作品である。Kendrick Lamar、SZA、Future、A$AP Rockyなど、複数のゲストを迎えたアルバムでもあった。
その中で「Girls Like You」は、アルバム版では比較的控えめなポップ・ソングだった。ギターのループとミニマルなビートを基盤にし、Adam Levineの声が中心に置かれている。2018年にCardi Bを迎えてシングル化されたことで、楽曲はより強い商業的な焦点を得た。
2018年のCardi Bは、すでに「Bodak Yellow」や「I Like It」などで大きな成功を収めており、女性ラッパーとしてメインストリームの中心にいた。彼女の参加は、Maroon 5のポップ・ソングにヒップホップの話題性と現代性を与えた。Maroon 5は2000年代以降、ヒップホップやR&Bアーティストとのコラボレーションを通じて何度もチャート上の成功を収めてきたが、「Girls Like You」はその流れの最も成功した例のひとつである。
ミュージック・ビデオも楽曲の成功に大きく貢献した。David Dobkinが監督し、Adam Levineを中心に、さまざまな分野で活躍する女性たちが次々に登場する構成になっている。Camila Cabello、Aly Raisman、Gal Gadot、Millie Bobby Brown、Jennifer Lopez、Ellen DeGeneres、Mary J. Blige、Dua Lipa、Rita Oraなど、音楽、映画、スポーツ、活動家の領域を横断する人物が出演した。最後にはLevineの妻Behati Prinslooと娘Dusty Roseも登場し、曲の女性賛歌的なイメージと家族的な親密さが結びつけられた。
2010年代後半のポップ・ミュージックでは、ビデオの話題性、SNSでの共有、ストリーミング再生がヒットに大きく影響していた。「Girls Like You」は、楽曲そのもののシンプルさに加え、スターが多数登場する映像によって拡散されやすい形を持っていた。その意味で、この曲はストリーミング時代のポップ・ヒットの条件をよく備えていた。
4. 歌詞の抜粋と和訳
Girls like you
和訳:
君のような女性
この短いフレーズは、曲の核である。語り手は特定の相手に向かっているが、「girls like you」という少し一般化された言い方を使うことで、個人的な恋愛感情を多くの聴き手が共有しやすい表現に変えている。
この言葉は、相手を特別視しているようでありながら、同時にポップ・ソングとして広く開かれている。具体的な名前や細かな物語を避けることで、聴き手は自分自身の恋人、パートナー、憧れの相手を重ねることができる。
Cardi B参加版では、このフレーズの意味が少し変わる。Adam Levineが「君のような女性が必要だ」と歌う一方で、Cardi Bはその「女性」の側から、ただ求められる存在ではなく、自分の価値を分かっている人物として登場する。この視点の追加によって、曲のバランスが変わっている。
5. サウンドと歌詞の考察
「Girls Like You」のサウンドは、非常に抑制された作りである。中心にあるのは、軽く刻まれるギターのループと、シンプルなビートである。Maroon 5の初期作品にあったファンク・ロック的なバンド演奏は薄く、音数を絞ったポップ・プロダクションが前面に出ている。
このミニマルさは、曲の大きな特徴である。派手なシンセ、強いドロップ、複雑な展開はほとんどない。むしろ、同じリズムとコード感が繰り返され、その上にAdam Levineのヴォーカルが柔らかく乗る。これにより、曲は聴き手に圧力をかけず、ラジオやプレイリストの中で自然に流れる。
Adam Levineのヴォーカルは、軽さと甘さを保っている。彼の声は高く、滑らかで、Maroon 5の後期ポップ路線において最も重要な要素である。「Girls Like You」では、感情を大きく爆発させるのではなく、やや肩の力を抜いた歌い方をしている。そのため、歌詞の内容も重くなりすぎない。
サビのフックは非常に単純である。短い言葉を繰り返し、メロディも大きく複雑には動かない。この単純さが、楽曲のヒットにつながった。聴き手は一度聴くだけで中心フレーズを覚えやすく、曲の雰囲気もすぐにつかめる。ポップ・ソングとしての効率が非常に高い。
Cardi Bのラップは、曲の単調さを避ける役割を持つ。彼女の声はAdam Levineの滑らかなヴォーカルとは対照的に、硬さ、リズムの切れ、キャラクター性が強い。短いヴァースではあるが、曲に別の質感を与え、聴き手の注意を引き戻す。Maroon 5のポップな土台に、Cardi Bの個性が差し込まれることで、楽曲は2018年のメインストリーム感を強めている。
歌詞とサウンドの関係で見ると、この曲は恋愛の複雑さを深く掘るものではない。むしろ、関係の揺れを軽く処理し、心地よいポップ・ソングとして提示している。歌詞には反省や必要性が含まれるが、サウンドは暗くならない。軽いギターと穏やかなビートが、問題を抱えた関係を深刻化させず、親しみやすい歌へ変換している。
Maroon 5のキャリア上では、「Girls Like You」は「Moves Like Jagger」「Payphone」「Sugar」「Animals」以後の路線にある。つまり、バンドの演奏力やロック的な鋭さよりも、Adam Levineの声、ゲストとの組み合わせ、フックの分かりやすさを重視する方向である。この変化はファンの間で評価が分かれるが、チャート上では非常に効果的だった。
初期の「This Love」や「Harder to Breathe」と比べると、サウンドの違いは明確である。初期曲では、ギター、ベース、ドラムのグルーヴが強く、バンドとしての肉体性が前に出ていた。「Girls Like You」では、その肉体性はかなり抑えられ、現代ポップとしての滑らかさが優先されている。これはMaroon 5が時代に合わせて変化してきた結果である。
ミュージック・ビデオとの関係も重要である。楽曲だけを聴くと、比較的シンプルな恋愛ポップである。しかし映像では、多様な女性たちが次々に登場することで、曲は女性への賛歌として再解釈される。Adam Levineの周囲を女性たちが回るという構図は、曲の「girls like you」というフレーズに視覚的な広がりを与えている。
一方で、このビデオの構成には、スターの並列によるメッセージ性と、ポップ・マーケティングとしての強さが同時にある。女性の多様性やエンパワーメントを掲げつつ、著名人の出演によって拡散力を高めている。2018年のポップ・カルチャーにおいて、音楽、映像、SNSが一体化してヒットを作る仕組みがよく表れている。
6. この曲が好きな人におすすめの曲 5曲
- Sugar by Maroon 5
Maroon 5後期のポップ路線を代表する楽曲である。「Girls Like You」と同じく、明るく軽いサウンドとAdam Levineの滑らかなヴォーカルが中心にある。恋愛を大きく重く描かず、親しみやすいフックで聴かせる点が共通している。
- Memories by Maroon 5
「Girls Like You」後に発表されたヒット曲で、より抑制されたポップ・ソングである。シンプルなコード進行とAdam Levineの声を中心に、記憶と喪失を扱う。後期Maroon 5のミニマルな方向性を理解しやすい曲である。
- I Like It by Cardi B, Bad Bunny & J Balvin
Cardi Bの代表曲のひとつで、ラテン・ポップとヒップホップを結びつけた大ヒット曲である。「Girls Like You」での短い客演よりも、Cardi Bの強いキャラクターとリズム感をよりはっきり聴ける。
- Perfect by Ed Sheeran
シンプルな恋愛感情を、分かりやすいメロディと穏やかなサウンドで広く届けたポップ・バラードである。「Girls Like You」よりもバラード色が強いが、個人的な感情を普遍的なフックへ変換する点で近い。
- Señorita by Shawn Mendes & Camila Cabello
男女の声を組み合わせた2010年代後半の大衆的ポップ・ヒットである。「Girls Like You」と同じく、軽いリズム、親しみやすいメロディ、関係の駆け引きを分かりやすく表現する曲である。
7. まとめ
「Girls Like You (feat. Cardi B)」は、Maroon 5が2018年に発表した、後期キャリアを代表する大ヒット曲である。もともとは『Red Pill Blues』収録曲だったが、Cardi B参加版としてシングル化されたことで、楽曲は一気に大きな商業的成功を収めた。
歌詞は、恋人との関係における必要性や親密さを、非常にシンプルな言葉で表現している。深い物語や複雑な心理描写よりも、「君のような女性が必要だ」というフックの即効性が重視されている。Cardi Bのヴァースは、女性側の自己主張とリズムの変化を加え、曲の現代性を強めている。
サウンド面では、軽いギター・ループ、控えめなビート、Adam Levineの滑らかなヴォーカルを中心にしたミニマルなポップ・プロダクションが特徴である。初期Maroon 5のファンク・ロック色は薄いが、そのぶんストリーミング時代のポップとして非常に機能的である。スターが多数登場するミュージック・ビデオも含め、「Girls Like You」は2010年代後半のポップ・ヒットの作られ方をよく示す一曲である。
参照元
- Billboard – Maroon 5 & Cardi B’s Girls Like You Hits No. 1
- Billboard – Girls Like You Leads Hot 100 for Seventh Week
- Maroon 5 Official – Girls Like You ft. Cardi B Is No. 1
- Official Charts – Girls Like You by Maroon 5 ft Cardi B
- Official Charts – Maroon 5 featuring Cardi B
- Discogs – Maroon 5 Feat. Cardi B – Girls Like You
- YouTube – Maroon 5 – Girls Like You ft. Cardi B Official Music Video
- Teen Vogue – Women Featured in Maroon 5’s Girls Like You Video

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